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2 アーバスノット家から閉め出された私
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すっかり落ち込んで涙ぐんでいる私に、ヘンリー様が慌ててハンカチを差し出してくれた。
「困ったな。泣かすつもりはなかったんだよ。ちょっと不思議だなって思ったから聞いただけなんだ。だって貴族であればよっぽど貧乏でない限り、末端貴族であっても子供を貴族学園に行かせるのは義務だからね。なぜ、行かないでここに奉公に来ているのか不思議だったよ」
「それは・・・・・・私が勉強が嫌いだからです」
私は姉のことをまだ信じていた。きっと私に言い忘れたのに違いないし、いないことにされているなんてあり得ないもの。
それでも涙は止まらないし、心は沈んでいく一方だった。
「ねぇ、今日はもう仕事はいいから家に帰ってごらん? 今、馬車を出してあげよう。アーバスノット家まで乗せて行ってあげる」
「そ、そんなご迷惑かけられません! 侍女長さんに怒られます」
私の言葉はまるで無視して馬車までヒョイと抱っこして乗せてくれた。
「えっと? なんでこんなに良くしてくださるんですか?」
「ん? 君って普通の人間だよね? 獣人って知ってる? 私はね豹の獣人なんだ。それが答え。さて、行こうか?」
「?」
答えの意味がわからないまま、アーバスノット家に着くと私は屋敷に一人で入っていった。
「ここで待っていてあげるよ。両親やお姉様に訊いてみるといい」
やさしく微笑むヘンリー様に感謝した私だ。
サロンに急に現れた私にびっくりした両親が目を丸くする。
「どうしたのよ? 休暇じゃないでしょう? まさか辞めてきたんじゃないわよね? 今更戻って来られても困るわよ」
お母様は冷たく私を見つめて言った。
――こんなに素っ気ないお母様だったっけ? お父様は私の目を見ないように視線をそらしていた。
「あら、やだ! クララ! なんでここにいるのよ! これから来客があるのよ。困るわ、いきなり来るなんて!」
優しかったお姉様は明らかに迷惑そうだ。
「あのさ・・・・・・お姉様、結婚するの? ハワード伯爵と結婚なんて、聞いてなかったから・・・・・・教えてくれるのを忘れただけだよね?」
「やだ! なんでクララがそんなことを知っているのよ? 忘れた? ふっ、あっははは。忘れたんじゃないわよ、わざと言わなかったのよ。だって、クララは貴族学園も卒業していない侍女見習いでしょ? そんなの下女と変わらないじゃない? そんな妹がいるなんて知られたらハワード伯爵家の方達に笑われてしまうわ! 恥ずかしいことなのよ!」
「そんな・・・・・・だって私はお姉様の為に学園に行かなかったのに」
「はぁ? 今更、恩着せがましいことを言うつもりなの? 私は自分の力であの上級学園に行き玉の輿に乗ったのよ? クララは結婚式には来ないでちょうだい! 妹なんていないことになっているんだから」
お姉様は私を汚いものを見るような目つきで見た。
「さぁ、帰りなさい。ここはもうクララの家ではありませんよ! あなたはあの学園を行かないと言った時にすでにアーバスノット家の人間ではなくなったのよ」
お母様はそう言って私を玄関の方に押しやると、目の前でぴしゃりとドアを閉めたのだった。
「困ったな。泣かすつもりはなかったんだよ。ちょっと不思議だなって思ったから聞いただけなんだ。だって貴族であればよっぽど貧乏でない限り、末端貴族であっても子供を貴族学園に行かせるのは義務だからね。なぜ、行かないでここに奉公に来ているのか不思議だったよ」
「それは・・・・・・私が勉強が嫌いだからです」
私は姉のことをまだ信じていた。きっと私に言い忘れたのに違いないし、いないことにされているなんてあり得ないもの。
それでも涙は止まらないし、心は沈んでいく一方だった。
「ねぇ、今日はもう仕事はいいから家に帰ってごらん? 今、馬車を出してあげよう。アーバスノット家まで乗せて行ってあげる」
「そ、そんなご迷惑かけられません! 侍女長さんに怒られます」
私の言葉はまるで無視して馬車までヒョイと抱っこして乗せてくれた。
「えっと? なんでこんなに良くしてくださるんですか?」
「ん? 君って普通の人間だよね? 獣人って知ってる? 私はね豹の獣人なんだ。それが答え。さて、行こうか?」
「?」
答えの意味がわからないまま、アーバスノット家に着くと私は屋敷に一人で入っていった。
「ここで待っていてあげるよ。両親やお姉様に訊いてみるといい」
やさしく微笑むヘンリー様に感謝した私だ。
サロンに急に現れた私にびっくりした両親が目を丸くする。
「どうしたのよ? 休暇じゃないでしょう? まさか辞めてきたんじゃないわよね? 今更戻って来られても困るわよ」
お母様は冷たく私を見つめて言った。
――こんなに素っ気ないお母様だったっけ? お父様は私の目を見ないように視線をそらしていた。
「あら、やだ! クララ! なんでここにいるのよ! これから来客があるのよ。困るわ、いきなり来るなんて!」
優しかったお姉様は明らかに迷惑そうだ。
「あのさ・・・・・・お姉様、結婚するの? ハワード伯爵と結婚なんて、聞いてなかったから・・・・・・教えてくれるのを忘れただけだよね?」
「やだ! なんでクララがそんなことを知っているのよ? 忘れた? ふっ、あっははは。忘れたんじゃないわよ、わざと言わなかったのよ。だって、クララは貴族学園も卒業していない侍女見習いでしょ? そんなの下女と変わらないじゃない? そんな妹がいるなんて知られたらハワード伯爵家の方達に笑われてしまうわ! 恥ずかしいことなのよ!」
「そんな・・・・・・だって私はお姉様の為に学園に行かなかったのに」
「はぁ? 今更、恩着せがましいことを言うつもりなの? 私は自分の力であの上級学園に行き玉の輿に乗ったのよ? クララは結婚式には来ないでちょうだい! 妹なんていないことになっているんだから」
お姉様は私を汚いものを見るような目つきで見た。
「さぁ、帰りなさい。ここはもうクララの家ではありませんよ! あなたはあの学園を行かないと言った時にすでにアーバスノット家の人間ではなくなったのよ」
お母様はそう言って私を玄関の方に押しやると、目の前でぴしゃりとドアを閉めたのだった。
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