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2 侍女とやって来た旦那様

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 イグナシオ公爵家にアントニア伯爵家の方々を招くことになりましたが、その前に一度、ウェズリー様の顔は見ておきたいと思いました。

 なので、ウェズリー様宛に午後のお茶に来ていただくようお誘いのお手紙を書きました。さて、その当日におめかしをして待っていますと、ウェズリー様は専属侍女を連れてやってきたのでした。


 終始にこやかにしているその侍女は、かいがいしくウェズリー様の紅茶に砂糖やミルクを入れたり、焼き菓子を小皿に取分けたりと世話をやいております。
 

「婿殿になる方は、誰でも専属侍女と一緒に来るものなの?」

 私は傍らにいる専属執事のギルバートに小声で尋ねました。


「ぷはっ。そんなわけないでしょう? 希でしょうね……というか……あり得ませんね」

 その小さなささやき声がエイプリルにも聞こえたのでしょうか?

「申し訳ありません。ウェズリー様のお供をしており、お世話をしていたものですから……場所もわきまえず、すみませんでした……坊ちゃまは、私の乳兄妹なのでつい……」

 必死で謝ってくる様子には、悪意のかけらも感じられませんでした。

「アイシャ様とウェズリー様の橋渡しになれるよう、頑張りたいと思います。図々しいようですが、お姉様のような気持ちで拝見しておりました。私のお母様はダイアナン男爵家の三女でして、ウェズリー様の乳母をしておりました」

 可愛らしい仕草で甘えるように私を見てくる様子は、子ウサギのようで思わず微笑んでしまいます。

「えぇ、よろしくね。私もエイプリルを妹のように思いましょう」

 私は、エイプリルに優しく声をかけたのでした。


☆彡★彡☆彡


 帰りしなにエイプリルは、私に良い情報を教えてくれました。

「両家の顔合わせの席で着ていくドレスのお色ですが、淡いラベンダーはお避けになったほうがよろしいです。亡くなったアントニア伯爵夫人が良く好んで着ていたお色でして、アントニア家ではその色は悲しみの色として避けられています……」

「まぁ、ご忠告をどうもありがとう」

 私はエイプリルにお礼を言いましたが、下調べでそのあたりのことは調べてあります。それでも、わざわざ耳打ちしてこっそり教えてくれたエイプリルは感心ですわ。

 あのように忠実な専属侍女がウェズリー様についていて良かったと思います。


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