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「ユーインを女たらしって、以前私が言ったことを覚えている? あれは私が全て間違っていたわ。もしかしてユーインって女性の経験がない?」
「し、失礼なっ! 一応閨教育は受けているし、そこは大丈夫だ」
「本当に? だってさっきキスした時に私の歯に自分の歯をぶつけてきたじゃない? まさかキスもしたことないってありえないわよね?」
「・・・・・・ない」
「は?」
「キスしたことは一度もない。でも理論上は知っているし大丈夫だ。慣れれば上手になるから。その先も、もちろん実際のところは経験がないが問題ないぞ。理論上はわかっているのでな」
「理論上・・・・・・普通は閨教育で適当な未亡人などと練習するんじゃないの?」
「あぁ、あれは断固拒否した。なんで俺が好きでもない女と寝なきゃならない? 気持ち悪いよ。貴族の結婚は決められたものだから跡継ぎの為には我慢するけど、たかが練習でなんでそんな苦行を強いられる? 冗談じゃない」
「へぇーー。男性ってそういうのは喜んでするかと思っていたわ」
「俺をそのへんの男と一緒にするな! イルヤ以外、抱きたくもないぞ。いろいろ愛を拗らせていたぶん、結婚したらたくさんイチャイチャしような! 多分、夜は当分寝かせてやれないと思うぞ」
「んもぉ、バカ・・・・・・なんて恥ずかしいことを言ってくるのよ」
私は顔を真っ赤にしてユーインの腕をつねった。ストレートな愛情表現、私以外は抱けない、という愛しい男性の言葉は私を幸せな気分にさせる。
「ユーイン。大好きよ。私、あなたの妻になれることがとても嬉しいわ。綺麗すぎるユーインが女性にもてすぎて、ヤキモチを焼く結婚生活になりそうでちょっぴり不安だけど」
私はユーインの彫刻のように整った顔立ちを見ながらそう言った。本音でもあるけれど、ジョークも混じっていたし、ユーインの顔を醜くしたいなんて露ほども思っていない。
「この顔はイルヤに好きになってもらう為だけにあるんだよ。嫌なら顔に傷でも付けようか? 女はきっと寄りつかなくなるよ。でも俺はイルヤさえいれば良いから」
なんの躊躇も無く腰にある騎士の剣を引き抜き、頬に当てようするユーインを慌てて止めた。
「そんなこと望んでないわ。今の気持ちが聞けたからそれで充分だし、好きな人がそのようなことをして嬉しいわけがないでしょう? 綺麗な顔のユーインもそうでなくなったユーインも、どちらも大好きなことには変わりは無いわ。でも、わざと怪我をするのは間違っている」
「うん、わかった。イルヤが望まないことはしない。でもなんでも言えよ? 俺はイルヤの望みはできるだけ叶えてあげたいから」
(俺様口調なのに言っていることはとてつもなく甘い。私の婚約者になった途端に彼の頭にはわんこ耳、お尻には尻尾が見えるのはなぜ?)
従順なわんこのように振る舞うユーインの見た目はとてもクールな美丈夫。これほど私を甘やかしてくれる未来の夫はそうは見つからないだろう。
だから私は元婚約者に、心からの感謝の言葉を言いたいわ。
「ビド、浮気をしてくれてありがとう!」
おしまい
「し、失礼なっ! 一応閨教育は受けているし、そこは大丈夫だ」
「本当に? だってさっきキスした時に私の歯に自分の歯をぶつけてきたじゃない? まさかキスもしたことないってありえないわよね?」
「・・・・・・ない」
「は?」
「キスしたことは一度もない。でも理論上は知っているし大丈夫だ。慣れれば上手になるから。その先も、もちろん実際のところは経験がないが問題ないぞ。理論上はわかっているのでな」
「理論上・・・・・・普通は閨教育で適当な未亡人などと練習するんじゃないの?」
「あぁ、あれは断固拒否した。なんで俺が好きでもない女と寝なきゃならない? 気持ち悪いよ。貴族の結婚は決められたものだから跡継ぎの為には我慢するけど、たかが練習でなんでそんな苦行を強いられる? 冗談じゃない」
「へぇーー。男性ってそういうのは喜んでするかと思っていたわ」
「俺をそのへんの男と一緒にするな! イルヤ以外、抱きたくもないぞ。いろいろ愛を拗らせていたぶん、結婚したらたくさんイチャイチャしような! 多分、夜は当分寝かせてやれないと思うぞ」
「んもぉ、バカ・・・・・・なんて恥ずかしいことを言ってくるのよ」
私は顔を真っ赤にしてユーインの腕をつねった。ストレートな愛情表現、私以外は抱けない、という愛しい男性の言葉は私を幸せな気分にさせる。
「ユーイン。大好きよ。私、あなたの妻になれることがとても嬉しいわ。綺麗すぎるユーインが女性にもてすぎて、ヤキモチを焼く結婚生活になりそうでちょっぴり不安だけど」
私はユーインの彫刻のように整った顔立ちを見ながらそう言った。本音でもあるけれど、ジョークも混じっていたし、ユーインの顔を醜くしたいなんて露ほども思っていない。
「この顔はイルヤに好きになってもらう為だけにあるんだよ。嫌なら顔に傷でも付けようか? 女はきっと寄りつかなくなるよ。でも俺はイルヤさえいれば良いから」
なんの躊躇も無く腰にある騎士の剣を引き抜き、頬に当てようするユーインを慌てて止めた。
「そんなこと望んでないわ。今の気持ちが聞けたからそれで充分だし、好きな人がそのようなことをして嬉しいわけがないでしょう? 綺麗な顔のユーインもそうでなくなったユーインも、どちらも大好きなことには変わりは無いわ。でも、わざと怪我をするのは間違っている」
「うん、わかった。イルヤが望まないことはしない。でもなんでも言えよ? 俺はイルヤの望みはできるだけ叶えてあげたいから」
(俺様口調なのに言っていることはとてつもなく甘い。私の婚約者になった途端に彼の頭にはわんこ耳、お尻には尻尾が見えるのはなぜ?)
従順なわんこのように振る舞うユーインの見た目はとてもクールな美丈夫。これほど私を甘やかしてくれる未来の夫はそうは見つからないだろう。
だから私は元婚約者に、心からの感謝の言葉を言いたいわ。
「ビド、浮気をしてくれてありがとう!」
おしまい
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>ビドは元々娼館通いを自国でもしてたのでしょうか?
していないと思いますよ(#^.^#)
>行ってたとすれば娼婦には少しでも騙されることはなかったかな?と
ですよね。行っていたとすれば、娼婦慣れしているでしょうから騙されなかったかもしれませんね。
でも、娼館通いしまくる男でも騙されまくっている方もいないわけではないので、そのあたりはどうなんでしょうね😓
>2人の刑は当然ですね
うんうん。
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>主人公2人が幸せになれてよかった。
はい(*^。^*)ありがとうございます!
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‧⁺▲,,,∧ ▲⑅∧॰ॱ
+(=゚ω゚)(ू•ᴗ•ू*)
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