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4 この娼婦のような娘はなに?(王妃様視点)
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アイリスは賢く美しく、性格も控え目で、実に王太子妃にふさわしい公爵令嬢だった。夫(王様)の妹(クリスタル王女)の娘だから王太子とは従姉妹にあたる、血筋も確かな娘だ。
アイリスなら、いろいろ協力しあって、この国を盛り立てていけると確信していた。ところが、今日はアイリスの横に娼婦のような娘がいた。
「アイリス! その娘は?」
「はい、私の腹違いの義妹です。お父様が再婚した相手の娘でして・・・」
あぁ、宰相は昔の婚約者と再婚したんだったわ。宰相は仕事はできるが、昔から女を見る目がなかったのよね。
確か、あのイングリット・ラーナ伯爵令嬢だったわ。あの女は身持ちの悪い最悪な女だったわ。私の夫(今の王様)が王太子の時にも舞踏会のたびに色目を使うような女だった。
こうして見れば、イングリットにそっくりじゃないの! だいたい、あの胸のあきすぎたドレスはなんなの? しかも深紅! ここは、色気を売る娼館ではないわよ。
舞踏会ならいざ知らず、普段の王宮にあのドレスは、ないわ。常識もないのね・・・
「王妃様ですかぁ? 私は、ヴァレリアと申しますぅ。よろしくお願いしまぁす」
なんと、このヴァレリアは私が声をかける前に、話しかけてきたのだ。貴族のマナーが、まるで身についていない。
身分の低い者から高い者に話しかけることは絶対にしてはならない。
「今日は、王太子と薔薇の庭園でお茶をしてから講義を受けるといいわ」
私は、ヴァレリアの言葉を無視してアイリスだけに話しかけた。
「はぁい。嬉しいですぅ。王太子様にお会いできるなんて楽しみ!」
ヴァレリアが、会話に横から入ってきたから、なおさらびっくりした。けれど、あのイングリットの娘ならありえるわ。
「王妃様。義妹が、どうしても素晴らしく素敵な王太子様を一目見たいと言うので連れてきてしまいました。申し訳ありません」
アイリスが困ったように微笑んだ。素晴らしく素敵な王太子・・・もちろん、それはそうよ! 私の息子ですもの・・・息子を褒められれば母親としては嬉しくないはずがない。
「ふふふ。そんなことなら、大丈夫よ? ゆっくりお茶を一緒に頂けばいいわ」
私はアイリスの言葉に、途端に機嫌がよくなる自分に心のなかで苦笑した。アイリスは、本当になにを言えば人が喜ぶかを熟知している娘だわ。だからこそ、王太子妃に相応しい。
「うわぁーー。嬉しいぃ! お義姉様の授業が終わるまで待っていても、いいですかぁ?」
ヴァレリアの間延びした言葉に、私は不愉快そうに顔を歪めたくなるのを必死でこらえていたのだった。
アイリスは賢く美しく、性格も控え目で、実に王太子妃にふさわしい公爵令嬢だった。夫(王様)の妹(クリスタル王女)の娘だから王太子とは従姉妹にあたる、血筋も確かな娘だ。
アイリスなら、いろいろ協力しあって、この国を盛り立てていけると確信していた。ところが、今日はアイリスの横に娼婦のような娘がいた。
「アイリス! その娘は?」
「はい、私の腹違いの義妹です。お父様が再婚した相手の娘でして・・・」
あぁ、宰相は昔の婚約者と再婚したんだったわ。宰相は仕事はできるが、昔から女を見る目がなかったのよね。
確か、あのイングリット・ラーナ伯爵令嬢だったわ。あの女は身持ちの悪い最悪な女だったわ。私の夫(今の王様)が王太子の時にも舞踏会のたびに色目を使うような女だった。
こうして見れば、イングリットにそっくりじゃないの! だいたい、あの胸のあきすぎたドレスはなんなの? しかも深紅! ここは、色気を売る娼館ではないわよ。
舞踏会ならいざ知らず、普段の王宮にあのドレスは、ないわ。常識もないのね・・・
「王妃様ですかぁ? 私は、ヴァレリアと申しますぅ。よろしくお願いしまぁす」
なんと、このヴァレリアは私が声をかける前に、話しかけてきたのだ。貴族のマナーが、まるで身についていない。
身分の低い者から高い者に話しかけることは絶対にしてはならない。
「今日は、王太子と薔薇の庭園でお茶をしてから講義を受けるといいわ」
私は、ヴァレリアの言葉を無視してアイリスだけに話しかけた。
「はぁい。嬉しいですぅ。王太子様にお会いできるなんて楽しみ!」
ヴァレリアが、会話に横から入ってきたから、なおさらびっくりした。けれど、あのイングリットの娘ならありえるわ。
「王妃様。義妹が、どうしても素晴らしく素敵な王太子様を一目見たいと言うので連れてきてしまいました。申し訳ありません」
アイリスが困ったように微笑んだ。素晴らしく素敵な王太子・・・もちろん、それはそうよ! 私の息子ですもの・・・息子を褒められれば母親としては嬉しくないはずがない。
「ふふふ。そんなことなら、大丈夫よ? ゆっくりお茶を一緒に頂けばいいわ」
私はアイリスの言葉に、途端に機嫌がよくなる自分に心のなかで苦笑した。アイリスは、本当になにを言えば人が喜ぶかを熟知している娘だわ。だからこそ、王太子妃に相応しい。
「うわぁーー。嬉しいぃ! お義姉様の授業が終わるまで待っていても、いいですかぁ?」
ヴァレリアの間延びした言葉に、私は不愉快そうに顔を歪めたくなるのを必死でこらえていたのだった。
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