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2 嘘つきな義妹・王妃様に気にいられる姉(姉視点)
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「何事かね? あぁ? なにをさせているんだ! アイリス! なぜ、ヴァレリアが土下座をしているんだ!」
お父様は私を、視線で殺せそうな勢いで睨み付けた。
「お父様! お義姉様が、土下座をすれば宝石を恵んでやるわ、とおっしゃったのです」
ヴァレリアは、本当に私を窮地に陥れるのが上手だ。
「そうか。ならば、アイリスの宝石は全部ヴァレリアのものだ。宝石箱ごと持っていきなさい」
お父様は、私の宝石箱をヴァレリアに手渡すと私におっしゃった。
「ヴァレリアは私の愛する娘だ。王女様が母親だったからといって虐めることは許さないぞ! 土下座をさせて、『恵んでやる』だと? 自分が女王様にでもなったつもりか! 今日から、しばらく自室から出てはいけない。食事はここに持ってこさせる」
私は、お母様の形見の宝石を取られたことは悲しかったけれど、この人達と食事を一緒にしなくていいことが嬉しかった。
自室で、ゆっくりとお父様に叱られることもなく食べる食事は、食堂のあの大きなテーブルで食べるより、とても気楽だ。
あそこでは、常にヴァレリアの話で盛り上がっていたし、私はその場にいないも同然だった。珍しく話しかけられたと思えば、それは私に対する否定の言葉で満たされるだけなのだから。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
そんな辛い屋敷での生活のなか、王妃様には度々お茶に誘われた。
「アイリス、貴女はとても所作が美しいわ。それに、とても優秀だわ。貴女のお勉強を見ている家庭教師に成績を聞いてみたの。素晴らしいと思ったわ」
「はい、ありがとうございます。お母様が、元気でいらした時はお母様が喜んでくださるのが嬉しくて勉強をしていました。今は、勉強をしていると落ち着きます」
「ふふふ。落ち着くですって? 面白いのね? 変っているわ」
そう、今の私は、あの人達と話さないで済むから自室で勉強している。食事の時以外は、家族が集う居間や食堂にはいたくなかった。自室でテキストを広げていれば、お父様達も、放っておいてくれるから勉強は私にとって救いでもあった。
もちろん、王妃様にはそんなことは言えないけれど・・・・・・
王妃様とは何度か、ご一緒してお話をしているうちに、とても気に入られた。
「ねぇ、アイリス、是非、王太子妃になってほしいわ。貴女となら、とてもうまく、やっていけると思うわ」
王妃様は、にっこりと微笑んで、おっしゃるようになった。
「光栄ですわ。王妃様。私も王妃様が好きです。」
私は、控えめな口調で、王妃様に申し上げた。
その数日後に王室から、ウィルソン公爵家に私を王太子妃候補にし、王宮で講義をうけさせるとの書状が届いた。
ヴァレリアはその書状を、恨めしげに見て、不愉快そうに顔を歪めたのだった。
お父様は私を、視線で殺せそうな勢いで睨み付けた。
「お父様! お義姉様が、土下座をすれば宝石を恵んでやるわ、とおっしゃったのです」
ヴァレリアは、本当に私を窮地に陥れるのが上手だ。
「そうか。ならば、アイリスの宝石は全部ヴァレリアのものだ。宝石箱ごと持っていきなさい」
お父様は、私の宝石箱をヴァレリアに手渡すと私におっしゃった。
「ヴァレリアは私の愛する娘だ。王女様が母親だったからといって虐めることは許さないぞ! 土下座をさせて、『恵んでやる』だと? 自分が女王様にでもなったつもりか! 今日から、しばらく自室から出てはいけない。食事はここに持ってこさせる」
私は、お母様の形見の宝石を取られたことは悲しかったけれど、この人達と食事を一緒にしなくていいことが嬉しかった。
自室で、ゆっくりとお父様に叱られることもなく食べる食事は、食堂のあの大きなテーブルで食べるより、とても気楽だ。
あそこでは、常にヴァレリアの話で盛り上がっていたし、私はその場にいないも同然だった。珍しく話しかけられたと思えば、それは私に対する否定の言葉で満たされるだけなのだから。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
そんな辛い屋敷での生活のなか、王妃様には度々お茶に誘われた。
「アイリス、貴女はとても所作が美しいわ。それに、とても優秀だわ。貴女のお勉強を見ている家庭教師に成績を聞いてみたの。素晴らしいと思ったわ」
「はい、ありがとうございます。お母様が、元気でいらした時はお母様が喜んでくださるのが嬉しくて勉強をしていました。今は、勉強をしていると落ち着きます」
「ふふふ。落ち着くですって? 面白いのね? 変っているわ」
そう、今の私は、あの人達と話さないで済むから自室で勉強している。食事の時以外は、家族が集う居間や食堂にはいたくなかった。自室でテキストを広げていれば、お父様達も、放っておいてくれるから勉強は私にとって救いでもあった。
もちろん、王妃様にはそんなことは言えないけれど・・・・・・
王妃様とは何度か、ご一緒してお話をしているうちに、とても気に入られた。
「ねぇ、アイリス、是非、王太子妃になってほしいわ。貴女となら、とてもうまく、やっていけると思うわ」
王妃様は、にっこりと微笑んで、おっしゃるようになった。
「光栄ですわ。王妃様。私も王妃様が好きです。」
私は、控えめな口調で、王妃様に申し上げた。
その数日後に王室から、ウィルソン公爵家に私を王太子妃候補にし、王宮で講義をうけさせるとの書状が届いた。
ヴァレリアはその書状を、恨めしげに見て、不愉快そうに顔を歪めたのだった。
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