16 / 18
因果応報が始まる
16 アイリス視点 幸せな未来(最終話)
しおりを挟む
★アイリス視点★
私は、お母様の子供の頃からの日記をずっと持っている。お母様は、とても自分の家族を観察していた。そうして、日記には事細かくつけていた。端的に表現していたのは以下の文章だった。
父上・・・能なしで、庭師が恋人。一日中、日なたぼっことお昼寝。たまに、散歩。
兄上・・・能なしで専属執事が恋人。一日中、部屋に籠もっているのが好き。
母上・・・すべての王家の仕事を担う裏の王のはず・・・
王女の私にいくら、隠そうとしてもわかるわよ。
私は、いずれ、この国の女王になるだろう。辺境伯のジェイスの妻になりたいけれど、それは無理だ。私はこの腐った王家を立て直すつもりなのだから・・・まずは、あの素行の悪い宰相のウェイドを首にしてやるわ!
しかし、この文を最後に日記は更新されなくなった。お母様があの父親に無理に結婚を迫ったとされる日からは白紙のままだ。それは、ずっと母の部屋の隅で埃にかぶり、私が発見したのはずいぶん前で・・・こっそり自分の部屋に隠した。
大きくなるにつれて、その日記の意味はだんだんわかってきて・・・私は誰にも言えなかった・・・ただ、サミールには不安を口にした。
「私は誰にも愛されない子だ・・・・」と。
サミールは、守ってくれると言った。私だけを愛してくれると。だから、王太子妃になりなさいと王妃様に言われてすぐにサミールに手紙を書いた。
絶対に助けてくれるのが、私にはわかっていた。だって、お母様の日記には、ジェイス辺境伯のお母様は隣国の王女様で偉大なる天才魔法使いだって書いてあったから。そして、魔法は隔世遺伝するとも書いてあった。だからサミールは、絶対に誰をも従わせることができる大魔法使いに違いない。
初めて好きになった人が彼で本当に良かったと思った。でも、サミールが周りを騙すために、ヴァレリアに夢中になっているふりをしていたときは、少し嫌だったわ・・・でも、みんな、私を守る為だったからしかたない。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、サミールともうすぐ結婚する。私は、すでに辺境伯の領地の屋敷に住んでいるし、もう王都に行くつもりはない。
サミールのお父様のアレッサンドロ様は、私を抱きしめてとても喜んでくれた。私は、お母様の形見の日記をお渡しした。そこには、アレッサンドロ様への愛がたくさん綴られていたから。アレッサンドロ様は、仇はとったからと呟いていた。
仇ってなんだろう? サミールは知らなくていいと、私に言ったわ。だから、私も絶対に聞かない。・・・私は二度と、お父様と義理のお母様の姿を見ることはなかった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
ーー時は春。満開に咲き乱れる花の木の下でーー
それから、一年が過ぎて・・・私の腕には女の子の可愛い赤ちゃんがいる。
ジュイス辺境伯家の庭園で敷物を広げて、私とサミール様とアレッサンドロ様。侍女長と執事長が一緒にお花見を楽しんでいた。
王家の早馬が来て、使いの者が用向きを告げた。
「グラハム王家からの伝言をお伝えします。『女の赤ちゃんが生まれて大変めでたい。ついては、その子供を伴って王家に見せにくるように』との王妃様のお言葉でございます」
「これからは、用があれば王家のほうから、こちらに出向いてくればいい。私は、いつまでも王家の臣下でいるつもりはない」
そのサミール様の言葉に使いの者は、震え上がっていた。私は、頼もしい夫の身体に寄りかかり、舞い落ちる桜の花びらを見ていた。愛娘は、キャッキャッと笑って、花びらに手を伸ばした。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚その三年後
私は、息子を抱いて、辺境伯の屋敷ではなく隣国の王宮にいた。娘は庭園で侍女に見守られながら子犬と走り回っている。私は、サミール様に息子を渡すと、ティアラの位置を鏡で確認した。
「サミール皇帝、アイリス皇妃。グラハム王国(かつてのアイリスの祖国)の王妃様が謁見したいといらっしゃっております」
側近が私達に言うと、サミールは言った。
「そんなものは、待たせておけばよい!」
サミールはお婆様の国の跡継ぎとして王になり近隣諸国も配下にし皇帝になっていたのだった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚ある日のサミールとアイリス
一面の花畑でサミールはアイリスに約束していた。
「この世界の全てを、貴女にあげよう。愛も権力も富も全てだ」
私は、そんなに欲張りじゃぁないわよ。だから、こう言ったわ。
「そんなの欲張りだわ・・・私は、そうねぇ・・・愛だけでいいわ・・・あぁ、でもお金も少しね!」
梢の葉の間から、光のかけらがキラリと星のように光ったのだった。
本編完
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
このあと、おまけで、宰相と義理母のざまぁです
私は、お母様の子供の頃からの日記をずっと持っている。お母様は、とても自分の家族を観察していた。そうして、日記には事細かくつけていた。端的に表現していたのは以下の文章だった。
父上・・・能なしで、庭師が恋人。一日中、日なたぼっことお昼寝。たまに、散歩。
兄上・・・能なしで専属執事が恋人。一日中、部屋に籠もっているのが好き。
母上・・・すべての王家の仕事を担う裏の王のはず・・・
王女の私にいくら、隠そうとしてもわかるわよ。
私は、いずれ、この国の女王になるだろう。辺境伯のジェイスの妻になりたいけれど、それは無理だ。私はこの腐った王家を立て直すつもりなのだから・・・まずは、あの素行の悪い宰相のウェイドを首にしてやるわ!
しかし、この文を最後に日記は更新されなくなった。お母様があの父親に無理に結婚を迫ったとされる日からは白紙のままだ。それは、ずっと母の部屋の隅で埃にかぶり、私が発見したのはずいぶん前で・・・こっそり自分の部屋に隠した。
大きくなるにつれて、その日記の意味はだんだんわかってきて・・・私は誰にも言えなかった・・・ただ、サミールには不安を口にした。
「私は誰にも愛されない子だ・・・・」と。
サミールは、守ってくれると言った。私だけを愛してくれると。だから、王太子妃になりなさいと王妃様に言われてすぐにサミールに手紙を書いた。
絶対に助けてくれるのが、私にはわかっていた。だって、お母様の日記には、ジェイス辺境伯のお母様は隣国の王女様で偉大なる天才魔法使いだって書いてあったから。そして、魔法は隔世遺伝するとも書いてあった。だからサミールは、絶対に誰をも従わせることができる大魔法使いに違いない。
初めて好きになった人が彼で本当に良かったと思った。でも、サミールが周りを騙すために、ヴァレリアに夢中になっているふりをしていたときは、少し嫌だったわ・・・でも、みんな、私を守る為だったからしかたない。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
私は、サミールともうすぐ結婚する。私は、すでに辺境伯の領地の屋敷に住んでいるし、もう王都に行くつもりはない。
サミールのお父様のアレッサンドロ様は、私を抱きしめてとても喜んでくれた。私は、お母様の形見の日記をお渡しした。そこには、アレッサンドロ様への愛がたくさん綴られていたから。アレッサンドロ様は、仇はとったからと呟いていた。
仇ってなんだろう? サミールは知らなくていいと、私に言ったわ。だから、私も絶対に聞かない。・・・私は二度と、お父様と義理のお母様の姿を見ることはなかった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
ーー時は春。満開に咲き乱れる花の木の下でーー
それから、一年が過ぎて・・・私の腕には女の子の可愛い赤ちゃんがいる。
ジュイス辺境伯家の庭園で敷物を広げて、私とサミール様とアレッサンドロ様。侍女長と執事長が一緒にお花見を楽しんでいた。
王家の早馬が来て、使いの者が用向きを告げた。
「グラハム王家からの伝言をお伝えします。『女の赤ちゃんが生まれて大変めでたい。ついては、その子供を伴って王家に見せにくるように』との王妃様のお言葉でございます」
「これからは、用があれば王家のほうから、こちらに出向いてくればいい。私は、いつまでも王家の臣下でいるつもりはない」
そのサミール様の言葉に使いの者は、震え上がっていた。私は、頼もしい夫の身体に寄りかかり、舞い落ちる桜の花びらを見ていた。愛娘は、キャッキャッと笑って、花びらに手を伸ばした。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚その三年後
私は、息子を抱いて、辺境伯の屋敷ではなく隣国の王宮にいた。娘は庭園で侍女に見守られながら子犬と走り回っている。私は、サミール様に息子を渡すと、ティアラの位置を鏡で確認した。
「サミール皇帝、アイリス皇妃。グラハム王国(かつてのアイリスの祖国)の王妃様が謁見したいといらっしゃっております」
側近が私達に言うと、サミールは言った。
「そんなものは、待たせておけばよい!」
サミールはお婆様の国の跡継ぎとして王になり近隣諸国も配下にし皇帝になっていたのだった。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚ある日のサミールとアイリス
一面の花畑でサミールはアイリスに約束していた。
「この世界の全てを、貴女にあげよう。愛も権力も富も全てだ」
私は、そんなに欲張りじゃぁないわよ。だから、こう言ったわ。
「そんなの欲張りだわ・・・私は、そうねぇ・・・愛だけでいいわ・・・あぁ、でもお金も少しね!」
梢の葉の間から、光のかけらがキラリと星のように光ったのだった。
本編完
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
このあと、おまけで、宰相と義理母のざまぁです
23
お気に入りに追加
3,063
あなたにおすすめの小説
さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます
夜桜
恋愛
令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。
アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。
【完結】復讐姫にはなりたくないので全て悪役に押し付けます
桃月とと
恋愛
預言により未来の聖女としてチヤホヤされてきた伯爵令嬢アリソンは、新たな預言により男爵令嬢デボラにその地位を追われ、婚約者である王太子も奪われ、最後は家族もろとも国外追放となってしまう。ズタボロにされた彼女は全ての裏切り者に復讐を誓った……。
そんな『復讐姫アリソン』という小説の主人公に生まれ変わったことに、物語が始まる直前、運よく頭をぶつけた衝撃で気が付くことができた。
「あっぶねぇー!」
復讐なんてそんな面倒くさいことしたって仕方がない。彼女の望みは、これまで通り何一つ苦労なく暮らすこと。
その為に、とことん手を尽くすことに決めた。
別に聖女にも王妃になりたいわけではない。前世の記憶を取り戻した今、聖女の生活なんてなんの楽しみも見いだせなかった。
「なんで私1人が国の為にあくせく働かなきゃならないのよ! そういうのは心からやりたい人がやった方がいいに決まってる!」
前世の記憶が戻ると同時に彼女の性格も変わり始めていた。
だから彼女は一家を引き連れて、隣国へと移住することに。スムーズに国を出てスムーズに新たな国で安定した生活をするには、どの道ニセ聖女の汚名は邪魔だ。
そのためには悪役デボラ嬢をどうにかコントロールしなければ……。
「聖女も王妃も全部くれてやるわ! ……だからその他付随するものも全て持って行ってね!!!」
「アリソン様……少々やりすぎです……」
そうそう幼馴染の護衛、ギルバートの未来も守らなければ。
作戦は順調に行くというのに、どうも思ったようには進まない。
円満に国外出るため。復讐姫と呼ばれる世界を変えるため。
アリソンの奔走が始まります。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
わがまま妹、自爆する
四季
恋愛
資産を有する家に長女として生まれたニナは、五つ年下の妹レーナが生まれてからというもの、ずっと明らかな差別を受けてきた。父親はレーナにばかり手をかけ可愛がり、ニナにはほとんど見向きもしない。それでも、いつかは元に戻るかもしれないと信じて、ニナは慎ましく生き続けてきた。
そんなある日のこと、レーナに婚約の話が舞い込んできたのだが……?
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
王太子から婚約破棄されて三年、今更何の用ですか?!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「やはり君しかいない、君こそ私が真に愛する人だ、どうか戻って来て欲しい」ある日突然ユリアの営む薬屋にリンド王国の王太子イェルクがやってきてよりを戻したいという。
だが今更そんな身勝手な話はない。
婚約者だったユリアを裏切り、不義密通していたユリアの妹と謀ってユリアを国外追放したのはイェルク自身なのっだ。
それに今のユリアは一緒についてきてくれた守護騎士ケヴィンと結婚して、妊娠までしているのだ!
浮気で得た「本当の愛」は、簡単に散る仮初のものだったようです。
八代奏多
恋愛
「本当の愛を見つけたから、婚約を破棄する」
浮気をしている婚約者にそう言われて、侯爵令嬢のリーシャは内心で微笑んだ。
浮気男と離れられるのを今か今かと待っていたから。
世間体を気にした元婚約者も浮気相手も、リーシャを悪者にしようとしているが、それは上手くいかず……。
浮気したお馬鹿さん達が破滅へと向かうお話。
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる