上 下
2 / 5

2 エストレラ視点

しおりを挟む
お姉様は、本当になんでも言うことをきく。まさに「負け犬体質」よ。なにを要求しても、黙って受け入れるからどこまで「はい」というか試してみたわ。

初めはドレスや宝石だった。次は婚約者だ。けれどなにを奪っても、少しも泣かない。涙の一粒も浮かべないなんて。

なんて、つまらない姉だろう・・・


ある日、もっとお姉様に意地悪したくなって、お姉様の部屋の鏡台の引き出しに、私がオズボルト様からいただいた大事な婚約指輪を隠した。

「あら? 私の大事な指輪がないわ! オズボルト様に頂いた大事な婚約指輪なのに・・・」

私は、派手に騒ぎ立てて、大泣きした。お母様とお父様は、私の言葉しか信じない。美しさって正義なのよ!

お姉様は泥棒をした罪を私にきせられて、反省を促すようにと狭くて寒いメイドの部屋に移らされた。

面白いから、そのままメイドのように、こき使ってやった。

あの日も、平民達が貴族達への不満を叫んでいて外は騒がしかったけれど、私は、そのイライラをお姉様にぶつけた。

「飲み物を持ってきてよ! それから、私の部屋も掃除をしておいて? あぁ、前みたいに宝石を盗んだりしたら、また、お母様達に言いつけるからね!」

私は、お姉様にぞんざいに命令したわ。

「エストレラ。私は、メイドではありませんよ? 貴女の姉です」

お姉様は、初めて口答えしたわ! すっごく面白かったけれど、偉そうな口調に腹がたった。

「なによ! 冴えないブスのくせに! あんたなんか、でしょう?」

私が、心底、嫌そうな口調で言うと、お父様も顔をしかめて同意した。

「このアーリィは、本当に私達の子なのかな? 全く似てないが・・・」

お父様は、少し過激なことまでお母様に言い出したわ。

「まぁ、もちろん、貴方の子ですよ!」

お母様は、泣き出した。ほんとに、この姉は、いるだけで私達を不愉快にさせる。

「おまえなんか、いなければ良かったのに!」

お父様は、忌々しげにお姉様を睨み付けた。

お姉様の瞳から一筋の涙がこぼれた。私は意地悪な満足感に浸っていた。

外は、今日も雨だった。私は、雨が好きだ。優しい雨音を聞きながら読書をするのも、眠るのも。自然の子守歌みたいだわ・・・



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・

青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。 彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。 大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・ ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。 不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。 当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。 多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。 しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。 その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。 私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。 それは、先祖が密かに残していた遺産である。 驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。 そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。 それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。 彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。 しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。 「今更、掌を返しても遅い」 それが、私の素直な気持ちだった。 ※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

処理中です...