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1 アーリィ視点
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「おねえさまぁーー。このリボンちょうだぁい?」
「お姉さまぁーー。そのドレスをお借りしてもいいかしら?」
「お姉様ーー。あのバッグとネックレスを貸してくださる?」
妹のエストレラは成長するにしたがって、たくさんのお願いを私にしてきた。
そのたびに、私は、頷いてきた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「お姉様ーー。婚約者のオズボルト・ジョパン公爵子息を私にくださらない?」
ついに、婚約者にまで手を出したエストレラは、にっこりと私に微笑みかけた。
外では、冷たい雨が降っていた。屋敷の窓に打ち付ける雨の粒の音が聞こえる。
「アーリィよりエストレラのほうが、何倍も美人だからね」
私の婚約者に目を向けると、なにが、そんなにおかしいのか、にやにやと笑っていた。
「アーリィはエストレラに比べて、猫背で太めでノロマすぎる。公爵子息のオズボルド様がエストレラを選ぶのも仕方ないさ」
お父様のカーディス侯爵は、そう言いながら私に哀れみの眼差しを向けた。いいえ、これは哀れみではなくて、蔑みの眼差しに違いない。
私は、彼らに何の文句を言うこともなく従った。いいのよ・・・貴方達が、その気なら、私もなにも教えてあげない・・・
重苦しい暗い空から、したたり落ちてくる雨は、私の代わりに泣いてくれているようだった。
屋敷にいる使用人達は、愉快そうに口元を歪め、若い見習いの執事だけが、私に慰めるような視線を送っていたのだった。
「お姉さまぁーー。そのドレスをお借りしてもいいかしら?」
「お姉様ーー。あのバッグとネックレスを貸してくださる?」
妹のエストレラは成長するにしたがって、たくさんのお願いを私にしてきた。
そのたびに、私は、頷いてきた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
「お姉様ーー。婚約者のオズボルト・ジョパン公爵子息を私にくださらない?」
ついに、婚約者にまで手を出したエストレラは、にっこりと私に微笑みかけた。
外では、冷たい雨が降っていた。屋敷の窓に打ち付ける雨の粒の音が聞こえる。
「アーリィよりエストレラのほうが、何倍も美人だからね」
私の婚約者に目を向けると、なにが、そんなにおかしいのか、にやにやと笑っていた。
「アーリィはエストレラに比べて、猫背で太めでノロマすぎる。公爵子息のオズボルド様がエストレラを選ぶのも仕方ないさ」
お父様のカーディス侯爵は、そう言いながら私に哀れみの眼差しを向けた。いいえ、これは哀れみではなくて、蔑みの眼差しに違いない。
私は、彼らに何の文句を言うこともなく従った。いいのよ・・・貴方達が、その気なら、私もなにも教えてあげない・・・
重苦しい暗い空から、したたり落ちてくる雨は、私の代わりに泣いてくれているようだった。
屋敷にいる使用人達は、愉快そうに口元を歪め、若い見習いの執事だけが、私に慰めるような視線を送っていたのだった。
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