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6 昔の事件を調査せよ、ガマちゃん部隊結成

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 もしかして・・・・・・? お兄様になにかしたのでは?

 翌日、私は市井巡回騎士団員屯所に出向き、先日のことを伝えた。

「アルフォンズ騎士団長殿の妹様は夢を見られていたのでしょう。ガマガエルに助けられた? まさか! そんな話は聞いたことがないです」

 騎士の一人はまるで信じてくれない。

「あの男は以前から精神を病んでおり、虚言癖や奇行が目立っていたのですよ。アルフォンズ騎士団長殿は王家からも死因は病である、と認定されておりますから。あの男は関係ありませんよ」

 別の騎士団員は、私が言われた言葉に着目してそれを否定する。

「そうですとも。どちらにしても、あの男は鉄格子のある療養所に送られて一生出てこられないはずですから。奇妙なのはあの男の顔がなにかの液体でドロドロで、飛び跳ねる化け物が襲ってきたと騒いでいたことですが・・・・・・やっぱり精神的におかしい奴なんですよ」

 人通りが少ない時間帯で、きっと私が襲われた目撃者もいなかったのだろう。巡回騎士団員が来たのは全てが終わってからだったし・・・・・・

 このことはもう忘れるしかないわね・・・・・・そう思った。






 それから何度もロセ伯爵とデートを重ね、私はロセ伯爵の婚約者になる。やがてロセ伯爵夫人となりバディド王国を離れムーンフェア国に移り住み・・・・・・私達の間に女の子が誕生した。娘の名前はジュリエンヌ。

 ロセ伯爵家のガマガエル達が一斉にジュリエンヌの前に集まり、ゲコゲコしているのを見て、まるで王女様に忠誠を誓う騎士みたいだと思う。

 子供の誕生に感動し、思わずアルフォンズお兄様を思い出す。

「アルフォンズお兄様が生きておられたら、きっととても喜んでくださったのに・・・・・・そう言えば、私を襲った騎士はどうなったのかしら? まだ鉄格子のある療養所にいるのかしら?・・・・・・今さらだけど、あの言葉が気になるのよね・・・・・・ガマちゃん、お兄様って本当に病気でなくなったのかしら? 考えてみれば、あれほど健康だったお兄様が亡くなるなんておかしいと思うの」

 今はすっかり大人になったチビガマちゃんは、もう全然チビではない。大きくて立派なガマちゃんになった彼はゲコゲコゲコと答えた。



 私はあの騎士の言葉を思い出す。

「なんだよ? お前! 邪魔な兄貴がのに、なんですぐに他の男を見つけるんだよぉおおおお!! 王太子の次は外国貴族かよぉおぉおぉおおーー!! ふざけるなぁーー」

 これってやっぱりすごく深い意味があると思う。

「ねぇ、お願い! ガマちゃん達・・・・・私、どうしても真相を知りたいわ」

 私の言葉に、全てのガマちゃんが一斉にお返事をした。


 ゲコゲコゲコ!! ゲコゲコゲコ!!


 エアルヴァン様は、

「え! なんでそんな大事件を私に言わなかったんだい? これはゆゆしき問題だぞ! ガマガエル総班長に報告し、部隊を編成せよ。報告はクラウディア王妃殿下にしておくれ。私たちはガマガエル語がわからないからね」

 と、おっしゃった。

 私は、あの男に襲われた事件をエアルヴァン様に伝えていなかった。だって・・・・・・あの男の言葉はまるで私があの男と関係があったかのように聞こえるから・・・・・・誤解されたくなかったのよ。
 


୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

※屯所:一時的に宿泊したり、仮眠したり、待機する施設のこと。この小説では王立騎士団は街の巡回もする仕事をしています。市井巡回騎士と呼ばれ、今でいう駐在所の地域警察官のような役割をします。

※クラウディア王太子妃殿下は今では王妃殿下となっています。
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