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4 ロセ伯爵とエメリーン、恋の予感
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「おや? 君はガマガエルが怖くないの? そのチビはすっかり懐いているようにみえる」
「全然、怖くないです。むしろ、可愛いと思いますわ。それに、このおチビちゃんは私が屋敷へ連れ帰った子にそっくりなのです。大通りの真ん中で踏みつけそうになったところを、助けてあげたチビガマちゃんに・・・・・・」
「もしかしてベエノシェル通りのことかな? 数日前にそこで買い物をしたんだが、ガマガエル達は護衛の為に馬車に一緒に乗り込むからね。このチビも紛れ込んで、勝手に飛び出して迷いカエルになったのだろう。助けてくれたのか? ありがとう」
「いいえ、とんでもありません。ところで、ガマガエル達が護衛? そのようなお話しは初めて聞きますが、護衛騎士はいないのですか?」
「もちろんロセ伯爵家でも護衛騎士は雇っているよ。ほら、今だってこの庭園に等間隔で男達が立っているだろう? あれは護衛だ」
「え? 庭師さんの格好をしていますよね? それに木の手入れをしているような・・・・・・」
「あぁ、そうだよ。ここはガマガエル達が守っているので、あまり出番がないからね。暇そうだから木の手入れをさせている。もちろん剣術なんかの訓練もするけどね」
「はぁ・・・・・・なにかとても変わっていますのね・・・・・・ガマガエルが護衛・・・・・・あんなに身体が小さいのに戦えるのかしら?」
「もちろんだよ。私の母上は何度も助けられたし、妹のクラウディアは王宮で密偵がわりにガマガエルを使っている。クラウディアはガマガエルと話せるからね」
「・・・・・・話せる?・・・・・・動物とお話しができるのですか? うわぁーー、なんて素敵なのかしら。では、鳥や犬、猫などともお話しできるのですか?」
「いや、そこまでは話せない。ロセ伯爵家のガマガエル達と話せるだけさ。でも君の言うように、いろいろな動物の言葉がわかったら楽しそうだ」
「えぇ、きっとすごく楽しいですわ! 私も訓練すれば、このチビガマちゃんと話せるようになるのかしら? 」
「さぁ、どうかな? クラウディアは、生まれつきガマガエル語が話せたようなんだが。今度、ムーンフェア国に招待しよう。クラウディアに会って聞いてみればいいよ。きっと、とても話が合いそうだ」
「え! ムーンフェア国の王太子妃殿下ですよね? そのような尊い方にはとてもお会いできませんわ。私はこの国の王太子殿下と婚約破棄したばかりなのです」
「・・・・・・それは辛い思いをしたね。実は私も婚約者に裏切られてね。嫌なことを忘れたくてバディド王国に来てみたんだ。来てみて良かったよ」
ロセ伯爵がにっこりと微笑む顔が眩しい。コンスタンティン王太子殿下と同じような年頃だと思うけれど、ずっと大人びていてほのかに漂う色気がすごい。
「・・・・・・あのぅ、私も今日ここにお招きいただいて、とても良かったです。チビガマちゃんとも会えたし・・・・・・」
「ガマガエル達も君をとても気に入ったようだ。ほら、もうガマガエル達が四阿の前からいなくなっただろう? うちのガマ達は気に入らない客を追い払う時は集団になって取り囲むからね」
確かにあれほど四阿にいたガマガエル達は今は一匹もいない。それぞれ池に散らばったようで、ロータス(ハス)の葉の上でひなたぼっこをしていたり、水草の影で昼寝をしている。
私とロセ伯爵はのんびりと寛ぐガマガエルを見ながら笑いあい、私が帰る頃には次に会う約束をしたぐらい打ち解け合った。
「また会うのが楽しみだよ。ロセ伯爵家の馬車で送らせよう。気をつけて帰りなさい」
「はい、今日はとても楽しかったですわ。それでは、また!」
ロセ伯爵家の馬車はとても広々していて、クッションもふかふかだ。
ベエノシェル通りにさしかかったところで、私は予約をしていた本を受け取るのを思い出す。
「本屋さんに寄っても構いませんか?」
私のお願いにロセ伯爵家の御者は快く止まってくれた。急いで書店に駆けていき、お目当ての本を抱えて馬車に戻ろうとした瞬間。
「なんだよ? お前! 邪魔な兄貴がいなくなったのに、なんですぐに他の男を見つけるんだよぉおおおお!! 王太子の次は外国貴族かよぉおぉおぉおおーー!! ふざけるなぁーー」
王立騎士団の制服? アルフォンズお兄様の部下? この顔には見覚えがある・・・・・・そういえば、一度リトラー侯爵家に来たことがあった。
男の長い剣がギラリと光り、私の身体に斬りかかってくる。
恐怖で逃げることもできず・・・・・・足が震えて動けない・・・・・・目をつぶり剣が振りかざされるのを待った。
ここで死ぬんだ、そう思ったのにガマガエルのたくさんの鳴き声が聞こえて・・・・・・
「全然、怖くないです。むしろ、可愛いと思いますわ。それに、このおチビちゃんは私が屋敷へ連れ帰った子にそっくりなのです。大通りの真ん中で踏みつけそうになったところを、助けてあげたチビガマちゃんに・・・・・・」
「もしかしてベエノシェル通りのことかな? 数日前にそこで買い物をしたんだが、ガマガエル達は護衛の為に馬車に一緒に乗り込むからね。このチビも紛れ込んで、勝手に飛び出して迷いカエルになったのだろう。助けてくれたのか? ありがとう」
「いいえ、とんでもありません。ところで、ガマガエル達が護衛? そのようなお話しは初めて聞きますが、護衛騎士はいないのですか?」
「もちろんロセ伯爵家でも護衛騎士は雇っているよ。ほら、今だってこの庭園に等間隔で男達が立っているだろう? あれは護衛だ」
「え? 庭師さんの格好をしていますよね? それに木の手入れをしているような・・・・・・」
「あぁ、そうだよ。ここはガマガエル達が守っているので、あまり出番がないからね。暇そうだから木の手入れをさせている。もちろん剣術なんかの訓練もするけどね」
「はぁ・・・・・・なにかとても変わっていますのね・・・・・・ガマガエルが護衛・・・・・・あんなに身体が小さいのに戦えるのかしら?」
「もちろんだよ。私の母上は何度も助けられたし、妹のクラウディアは王宮で密偵がわりにガマガエルを使っている。クラウディアはガマガエルと話せるからね」
「・・・・・・話せる?・・・・・・動物とお話しができるのですか? うわぁーー、なんて素敵なのかしら。では、鳥や犬、猫などともお話しできるのですか?」
「いや、そこまでは話せない。ロセ伯爵家のガマガエル達と話せるだけさ。でも君の言うように、いろいろな動物の言葉がわかったら楽しそうだ」
「えぇ、きっとすごく楽しいですわ! 私も訓練すれば、このチビガマちゃんと話せるようになるのかしら? 」
「さぁ、どうかな? クラウディアは、生まれつきガマガエル語が話せたようなんだが。今度、ムーンフェア国に招待しよう。クラウディアに会って聞いてみればいいよ。きっと、とても話が合いそうだ」
「え! ムーンフェア国の王太子妃殿下ですよね? そのような尊い方にはとてもお会いできませんわ。私はこの国の王太子殿下と婚約破棄したばかりなのです」
「・・・・・・それは辛い思いをしたね。実は私も婚約者に裏切られてね。嫌なことを忘れたくてバディド王国に来てみたんだ。来てみて良かったよ」
ロセ伯爵がにっこりと微笑む顔が眩しい。コンスタンティン王太子殿下と同じような年頃だと思うけれど、ずっと大人びていてほのかに漂う色気がすごい。
「・・・・・・あのぅ、私も今日ここにお招きいただいて、とても良かったです。チビガマちゃんとも会えたし・・・・・・」
「ガマガエル達も君をとても気に入ったようだ。ほら、もうガマガエル達が四阿の前からいなくなっただろう? うちのガマ達は気に入らない客を追い払う時は集団になって取り囲むからね」
確かにあれほど四阿にいたガマガエル達は今は一匹もいない。それぞれ池に散らばったようで、ロータス(ハス)の葉の上でひなたぼっこをしていたり、水草の影で昼寝をしている。
私とロセ伯爵はのんびりと寛ぐガマガエルを見ながら笑いあい、私が帰る頃には次に会う約束をしたぐらい打ち解け合った。
「また会うのが楽しみだよ。ロセ伯爵家の馬車で送らせよう。気をつけて帰りなさい」
「はい、今日はとても楽しかったですわ。それでは、また!」
ロセ伯爵家の馬車はとても広々していて、クッションもふかふかだ。
ベエノシェル通りにさしかかったところで、私は予約をしていた本を受け取るのを思い出す。
「本屋さんに寄っても構いませんか?」
私のお願いにロセ伯爵家の御者は快く止まってくれた。急いで書店に駆けていき、お目当ての本を抱えて馬車に戻ろうとした瞬間。
「なんだよ? お前! 邪魔な兄貴がいなくなったのに、なんですぐに他の男を見つけるんだよぉおおおお!! 王太子の次は外国貴族かよぉおぉおぉおおーー!! ふざけるなぁーー」
王立騎士団の制服? アルフォンズお兄様の部下? この顔には見覚えがある・・・・・・そういえば、一度リトラー侯爵家に来たことがあった。
男の長い剣がギラリと光り、私の身体に斬りかかってくる。
恐怖で逃げることもできず・・・・・・足が震えて動けない・・・・・・目をつぶり剣が振りかざされるのを待った。
ここで死ぬんだ、そう思ったのにガマガエルのたくさんの鳴き声が聞こえて・・・・・・
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