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2 チビガマ、褒められる

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(俯瞰視点)



 真夜中、リトラー侯爵家の皆が寝静まった頃である。ガマガエル第7班、班長が部下5匹を連れてリトラー侯爵家庭園に到着した。

 チビガマは慌てて隠れる。

(どうしよう・・・・・・とーさんがお迎えに来た! 怒られちゃうよぉーー)


「こらぁ! チビっ子め! あれだけ側を離れるな、と言っただろうが! 早く出てきなさい。ここに連れてこられたのはわかっているぞ!」

 5匹のなかで一番大きなカエルが、ゲコゲコゲコ!!と鳴いた。

「とうさぁーーん。ごめんなさいぃーー」

「全く心配させるなよ。ところであのお嬢さんは、なんでお前を誘拐したんだ?」

「ううん、誘拐じゃないよぉ。あのね、僕がとーさん達を見て、怒られると思って震えていたら、虐められているって勘違いしたの。それで、守ってくれるって言ってくれたんだ」

「あぁ、なるほどなぁ。つまりは、心優しいお嬢さんってことか。ほら、一緒にロセ伯爵家別荘に帰ろう」

「待って。とーさん。あのお嬢さんはとても可哀想なんだ。お兄さんが死んで、誰かに裏切られたとかって・・・・・・僕に話しかけながら泣いてたよ。なんとか元気になってほしいなぁ。とても可愛い子なんだよ」

「ふーーん。お嬢さんは傷心ってことか」

 ガマガエル班長は、気の毒そうな表情を浮かべた。

「班長! 可愛いお嬢さんで傷心で心優しく、おまけにカエル好きですね! これ、とても重要です」
 部下の一匹がゲコゲコと鳴く。


「うん、ちょうど良いお嬢さんを見つけたかもしれん。我が主、エアルヴァン・ロセ伯爵も、婚約者に裏切られ傷心を癒やす為に、こちらの別荘に来られた」

「そうそう! 班長。運命を感じますね? ほらほら、ここは我らガマちゃんズが恋のキューピッドになってあげて・・・・・・」

「ふむ、そうだな! ロセ伯爵家別荘で開くお茶会の招待状が、ここにも届くよう細工するか?」

「んだ、んだ。恋のキューピッドだぁ。久々の大仕事っすね。エアルヴァン様には、良い嫁っ子が来ないと困りますからね」

「うん、我らが品定めし、主の奥方に相応しい方ならば全力でお守りしよう!!」

「賛成!! ゲコゲコゲコ!!」

「賛成!! ケロケロ!!」

「大賛成!!ケロローーン!!」

「ふふっ。思わぬ収穫だったなぁ。これで我が主も元気になるやもしれん。息子よ、でかした!!」

「えへへ。ケロケロ。照れるなぁーー」

 チビガマは、ニコニコしながら大きなガマガエル達とリトラー侯爵家を去って行った。
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