37 / 70
35 テオドラの断罪-2
しおりを挟む
こんな、こんな屈辱があるものですか。
私は、ミランディス伯爵家の令嬢。物心ついたときから使用人に囲まれ、丁寧に扱われるのが当たり前だった。誰かに頭を下げたことなんて、一度たりともなかったのに――。
それなのに、今の私は王都広場の真ん中で、石畳に膝をつき、額までもその冷たい石の上に押しつけている。首には、罪状を書かれた札。
「幼児誘拐」――そんなおぞましい文字が、私の首からぶらさがっているのだ。
その背後には、王宮の衛兵たちが無言で控えていた。私の前には、憎きあの女――エルナ。ただの平民のくせに。元騎士だったとしても、たかが平民でしょう?
なのに、どうして私が頭を下げなくてはならないの!?
王命だからって、何をしても許されるの? ここにいる民衆たちは、皆楽しげに私を見ている。娯楽のつもりなのかしら。
エルナは言った。
「ルカは体調が優れないので連れてきませんでした。情操教育にもよくありませんから」
……ふん、笑わせないで。教育? あんたの子供なんかに、教育なんているものですか。
でも、私は、やらなければならなかった。この辱めに耐えて、頭を下げ、謝罪しなければならない。王命だから。
「……お詫び、申し上げます」
かすれた声が、自分の口から漏れた。情けない。こんなこと、さっさと終わってほしい。
けれど、謝ったからといって、何も終わらなかった。民衆の視線はどこまでも冷たく、罵声は容赦なく飛んでくる。
「これが、幼子を誘拐した女か! 信じられない!」
「貴族様だろうがなんだろうが、罪は罪だ!」
罵声の中に、何かが飛んできた。
――べちゃっ。
ぬるりとした感触が頬に広がる。生卵だった。
「くらえ! これは腐ったトマトだ!」
続いて何やら柔らかいものが、背中にぶつかる。どうやら、言葉のとおり、今度は腐ったトマトらしい。ドレスの背が冷たく濡れた。
ああ、なんでこんな目に……。
なんで、私が、こんなにも辱めを受けなければならないの?
涙が止まらなかった。 自分でもわかるほど、肩が震えていた。笑ってごまかそうとした口元は引きつり、震えが止まらない。
泣くなんて――貴族として、こんなみっともない姿、誰にも見せたくなかったのに。
でも、もう耐えられなかった。
頬を伝う涙はあとからあとから溢れてきて、止めようとしても止められない。
この日のことは、決して忘れられない。
屈辱と恥辱と、憎しみと痛みと、何もかもが混ざり合って、心の奥に焼き付いてしまったのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※本日18時頃、続きの更新を予定しています。(多少前後することがあります)
伯爵令嬢ざまぁ、まだまだ終わりません!
この展開、「スカッとした!」と思った方は💓をぽちっとお願いします。
私は、ミランディス伯爵家の令嬢。物心ついたときから使用人に囲まれ、丁寧に扱われるのが当たり前だった。誰かに頭を下げたことなんて、一度たりともなかったのに――。
それなのに、今の私は王都広場の真ん中で、石畳に膝をつき、額までもその冷たい石の上に押しつけている。首には、罪状を書かれた札。
「幼児誘拐」――そんなおぞましい文字が、私の首からぶらさがっているのだ。
その背後には、王宮の衛兵たちが無言で控えていた。私の前には、憎きあの女――エルナ。ただの平民のくせに。元騎士だったとしても、たかが平民でしょう?
なのに、どうして私が頭を下げなくてはならないの!?
王命だからって、何をしても許されるの? ここにいる民衆たちは、皆楽しげに私を見ている。娯楽のつもりなのかしら。
エルナは言った。
「ルカは体調が優れないので連れてきませんでした。情操教育にもよくありませんから」
……ふん、笑わせないで。教育? あんたの子供なんかに、教育なんているものですか。
でも、私は、やらなければならなかった。この辱めに耐えて、頭を下げ、謝罪しなければならない。王命だから。
「……お詫び、申し上げます」
かすれた声が、自分の口から漏れた。情けない。こんなこと、さっさと終わってほしい。
けれど、謝ったからといって、何も終わらなかった。民衆の視線はどこまでも冷たく、罵声は容赦なく飛んでくる。
「これが、幼子を誘拐した女か! 信じられない!」
「貴族様だろうがなんだろうが、罪は罪だ!」
罵声の中に、何かが飛んできた。
――べちゃっ。
ぬるりとした感触が頬に広がる。生卵だった。
「くらえ! これは腐ったトマトだ!」
続いて何やら柔らかいものが、背中にぶつかる。どうやら、言葉のとおり、今度は腐ったトマトらしい。ドレスの背が冷たく濡れた。
ああ、なんでこんな目に……。
なんで、私が、こんなにも辱めを受けなければならないの?
涙が止まらなかった。 自分でもわかるほど、肩が震えていた。笑ってごまかそうとした口元は引きつり、震えが止まらない。
泣くなんて――貴族として、こんなみっともない姿、誰にも見せたくなかったのに。
でも、もう耐えられなかった。
頬を伝う涙はあとからあとから溢れてきて、止めようとしても止められない。
この日のことは、決して忘れられない。
屈辱と恥辱と、憎しみと痛みと、何もかもが混ざり合って、心の奥に焼き付いてしまったのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※本日18時頃、続きの更新を予定しています。(多少前後することがあります)
伯爵令嬢ざまぁ、まだまだ終わりません!
この展開、「スカッとした!」と思った方は💓をぽちっとお願いします。
3,580
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる