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翌日、私は話しに聞いた未亡人の家へと向かった。とにかく見てみたかった、というのが正直な気持ちだ。
その家は村のはずれにあったけれど、ひときわ綺麗な家だった。白い外壁に手入れの行き届いた花壇、木製の扉は綺麗なブルーに塗られていた――まるで誰かの“特別な場所”のようだった。
村の家々は質素で素朴なのに、ここだけは妙に洗練されている。まるで、誰かがここにだけ、心を尽くしているみたいに。
私は木陰に身を潜めながら、そっと様子を見守った。
庭では、金髪の女性が幼い男の子と一緒に花の球根を植えていた。女性は若く、かわいらしい顔立ちで、なによりその表情が――幸せそうに輝いていた。
男の子の方も、きっと5歳くらいだろうか。無邪気な笑顔でスコップを握り、母親の真似をしながら土を掘っている。
「今日もパパ、早く帰ってきてくれるかな?」
「ええ、ジョンが良い子にしてたら、きっとね」
“パパ”という言葉が耳に入った瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
――……まさか、アレグランのこと?。
昼を少し回ったばかりだというのに、一人の男が家の前に姿を現した。
私は思わず息を呑んだ。
アレグランだった。
騎士の制服に身を包んだ彼は、満面の笑みを浮かべながらふたりに駆け寄っていった。
まるで、戦場から無事に帰還した父親が、迷いなく“家族のもと”へ帰ってきた――そんな感動の再会を見せつけられているようだった。
「夕方まで待てなかったよ。昼を食べたら、また戻らなきゃだけどね」
アレグランは男の子の頭をやさしく撫でた。まるで、本当の親子のようだ。
私は遠くから、その姿をじっと見つめていた。
見知らぬ男の子の笑顔。彼に撫でられて誇らしげに微笑む姿。
そしてアレグランは、隣にいた金髪の女性の腰に自然と腕を回し、柔らかな声で言った。
「カリーナ。君のシチューが食べたいな。あれが一番、疲れが取れる」
――……カリーナ。
この女性が、噂の“未亡人”ね。
あぁ、どうしてなの? どうして他人の子どもに、あんなにも優しい目を向けられるの?
私は、あなたの妻なのに。
それなのに――あの優しさを私に注いでくれた日は、いったい、いつが最後だったのだろう。
やっぱり、私に子どもができないからだろうか?
“女”として、足りていないと感じさせてしまったから?
けれど気づけば、夫と顔を合わせるのは、ひと月のうちほんの数日だけになっている。
夜、同じ寝台に身を横たえても、互いに背を向けたまま、言葉ひとつ交わさない――そんな日々が当たり前になっていた。
そんな状態で、子どもを授かるなんて、どう考えても無理がある。
それでも私は、アレグランを待ち、信じようとしていたのに。
あの家の扉の奥で、アレグランが“家族”と過ごしていると思った瞬間、全身の力が抜けて、吐き気すら覚えた。
でも――その吐き気は、夫の裏切りに気づいたからじゃなくて……
その家は村のはずれにあったけれど、ひときわ綺麗な家だった。白い外壁に手入れの行き届いた花壇、木製の扉は綺麗なブルーに塗られていた――まるで誰かの“特別な場所”のようだった。
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「カリーナ。君のシチューが食べたいな。あれが一番、疲れが取れる」
――……カリーナ。
この女性が、噂の“未亡人”ね。
あぁ、どうしてなの? どうして他人の子どもに、あんなにも優しい目を向けられるの?
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それなのに――あの優しさを私に注いでくれた日は、いったい、いつが最後だったのだろう。
やっぱり、私に子どもができないからだろうか?
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けれど気づけば、夫と顔を合わせるのは、ひと月のうちほんの数日だけになっている。
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そんな状態で、子どもを授かるなんて、どう考えても無理がある。
それでも私は、アレグランを待ち、信じようとしていたのに。
あの家の扉の奥で、アレグランが“家族”と過ごしていると思った瞬間、全身の力が抜けて、吐き気すら覚えた。
でも――その吐き気は、夫の裏切りに気づいたからじゃなくて……
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