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3 アシュリー・バラノ侯爵side
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アシュリー・バラノ侯爵視点
ーーバラノ侯爵邸にてーー
「ルーカスはどこにいる? なぜ夕食の席にいないんだ?」
私は眉間に皺を寄せて執事に尋ねた。
「それが朝の10時からお出かけになり帰って来ていらっしゃいません」
「いったいどこに出かけたのだ? 朝から出かけて今まで帰ってこなかったのならば、家庭教師が来るのを知っていてサボったということか! 全くこれで何回目だ? どうしてこうも愚兄と同じなんだ!」
私は困惑しながらも声を荒げたのだった。
私の二つ上の兄は怠け者で約束を守れない男だった。何に対しても真面目に取り組めないが女性にだけは手が早かった。兄が18の時にメイドに産ませたのがルーカスだ。両親を早くに亡くした私は兄に面倒を見てもらうというよりは私が兄の面倒を見るというかんじだった。
(兄上の尻拭いばかりだな・・・・・・ルーカスには頭が痛いよ)
私は先日甥ルーカスと交わした会話を思い浮かべる。
「バラノ侯爵家は夫人を迎えることになる。お前もバラノ侯爵夫人になる女性には失礼のないようにしなさい」
「は? なんで俺に黙ってそんなことをするんですか? 勝手に決められては困りますよ」
「なんでお前に言わなければならない? これは決定事項だ」
「横暴ですね! 話にならない。俺はそんなことは認めない」
「先ほども言ったがルーカスの気持ちなどは問題ではない。これはバラノ侯爵家の問題だ」
このようなやり取りを改めて思い浮かべて首を捻った。
(なんであいつは私の縁談にそれほど抵抗したんだろう?)
私がメイドを妊娠させた兄を罵り責任を取るように言った途端、兄は「すべてが面倒だから俺は出て行く。もともと侯爵になんかなりたいわけじゃないんだ」と言って無責任にも屋敷から出て行ってしまった。それからは行方知れずでなんの音沙汰もなく、通常は長子が継ぐことになる爵位を私が継ぐことを国王陛下がお決めになったのだった。
それからしばらくして母親のメイドが病気で亡くなり私がルーカスを育てるしかなかった。ルーカスには真っ直ぐに育ってほしくて、マイナスな情報は与えないようにしていた。
私の兄、つまりルーカスの父親がそのように無責任に自分から出て行ったことも、ルーカスがメイドとの子供だということも本人の耳には入らないようにしてきたのだ。そうして私はルーカスを真っ直ぐな良い子に育つようにと気を配っていたつもりだった。
優秀な家庭教師をつけ勉強しやすい環境を整え、剣術などは私が教えた。侍女長も執事もルーカスを赤ちゃんの頃からずいぶん親身になって世話をしてくれたものだ。
ところが最近のルーカスはどうだ? つい三日前もその言動を注意した侍女長に「使用人の分際で俺に意見するな!」とほざいていたのだ。
それを言うなら、「ルーカスお前はただの居候だけどな」と怒鳴りたい気持ちを必死に我慢した私だった。
それにしてもいったいどこに行ったのだ?・・・・・・私はまさかこの時、ルーカスが精神病院に収容されているなど思いもしないのだった。
ーーバラノ侯爵邸にてーー
「ルーカスはどこにいる? なぜ夕食の席にいないんだ?」
私は眉間に皺を寄せて執事に尋ねた。
「それが朝の10時からお出かけになり帰って来ていらっしゃいません」
「いったいどこに出かけたのだ? 朝から出かけて今まで帰ってこなかったのならば、家庭教師が来るのを知っていてサボったということか! 全くこれで何回目だ? どうしてこうも愚兄と同じなんだ!」
私は困惑しながらも声を荒げたのだった。
私の二つ上の兄は怠け者で約束を守れない男だった。何に対しても真面目に取り組めないが女性にだけは手が早かった。兄が18の時にメイドに産ませたのがルーカスだ。両親を早くに亡くした私は兄に面倒を見てもらうというよりは私が兄の面倒を見るというかんじだった。
(兄上の尻拭いばかりだな・・・・・・ルーカスには頭が痛いよ)
私は先日甥ルーカスと交わした会話を思い浮かべる。
「バラノ侯爵家は夫人を迎えることになる。お前もバラノ侯爵夫人になる女性には失礼のないようにしなさい」
「は? なんで俺に黙ってそんなことをするんですか? 勝手に決められては困りますよ」
「なんでお前に言わなければならない? これは決定事項だ」
「横暴ですね! 話にならない。俺はそんなことは認めない」
「先ほども言ったがルーカスの気持ちなどは問題ではない。これはバラノ侯爵家の問題だ」
このようなやり取りを改めて思い浮かべて首を捻った。
(なんであいつは私の縁談にそれほど抵抗したんだろう?)
私がメイドを妊娠させた兄を罵り責任を取るように言った途端、兄は「すべてが面倒だから俺は出て行く。もともと侯爵になんかなりたいわけじゃないんだ」と言って無責任にも屋敷から出て行ってしまった。それからは行方知れずでなんの音沙汰もなく、通常は長子が継ぐことになる爵位を私が継ぐことを国王陛下がお決めになったのだった。
それからしばらくして母親のメイドが病気で亡くなり私がルーカスを育てるしかなかった。ルーカスには真っ直ぐに育ってほしくて、マイナスな情報は与えないようにしていた。
私の兄、つまりルーカスの父親がそのように無責任に自分から出て行ったことも、ルーカスがメイドとの子供だということも本人の耳には入らないようにしてきたのだ。そうして私はルーカスを真っ直ぐな良い子に育つようにと気を配っていたつもりだった。
優秀な家庭教師をつけ勉強しやすい環境を整え、剣術などは私が教えた。侍女長も執事もルーカスを赤ちゃんの頃からずいぶん親身になって世話をしてくれたものだ。
ところが最近のルーカスはどうだ? つい三日前もその言動を注意した侍女長に「使用人の分際で俺に意見するな!」とほざいていたのだ。
それを言うなら、「ルーカスお前はただの居候だけどな」と怒鳴りたい気持ちを必死に我慢した私だった。
それにしてもいったいどこに行ったのだ?・・・・・・私はまさかこの時、ルーカスが精神病院に収容されているなど思いもしないのだった。
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