(完)従姉妹に「財産目当と爵位狙いめ! 私の居場所を取るな」と泣かれましたが、お金ならあるし爵位に興味はありません

青空一夏

文字の大きさ
上 下
5 / 21

4 復讐への決意

しおりを挟む
「やめなさい、ブロンシュ。アリゼはお前の従姉妹なんだぞ。立場は同等だ。アリゼの専属侍女にはフランシスカとトレーシーをつけよう。それから部屋は一番いい部屋を与えるので、ブロンシュの部屋を譲ってあげなさい」

「酷いわ、お父様。嫌です」

(この茶番劇はなぁに?)

「お部屋は空いているところで構いませんし、ブロンシュ様と同等な扱いなど望んでいません。できれば、元いた屋敷に戻りたいのですが……」

「あぁ、あのはすでに売ってしまった。だって兄上達がいない今、アリゼが譲り受けたものは全て引き取ったわたしのものになるからね」

「全て? 嘘でしょう?」

「アリゼが16歳になるまでは、後見人として引き取ったわたしの裁量に任される。シドニー兄上に貸したお金もあるから、あの家を売ったお金は当然わたしのものになるのは了承してほしい。だがアリゼのドレスや宝石だけは、そのまま持っていて構わない。わたしの心は広いからね」

(なにを言っているの?)

 ブロンシュの部屋を奪いたくもないのに押し付けられて、とても大事にする振りをするゴドフロア叔父様が不気味だった。




 ディナーは食べたい気分ではないから断ると、ブロンシュがわざわざ部屋までやってきて嫌味を言う。

「ねぇ、マナーを知らないから夕食を一緒に食べようとしないのでしょう? 」

(本当にしつこい人ね)

「えぇ、マナーなんて全然知らないのよ。教えてくださらない?」

 もう面倒だからそう言っておく。

「うふふ。教えてあげるわけないでしょう? あんたなんて、これからいっぱい恥をかけばいいのよ」

(そう言うと思ったわ)






 家は勝手に売られ、お父様の絵は別な場所に持っていかれたようだ。残されたのは私のドレスと宝石類だけ。そういえばお母様のドレス類や宝石はどうしたのかしら?

 その答えは翌朝、わかる。ドナシアン伯爵夫人がお母様の宝石を得意げに身に着けていたからだ。

「旦那様。こんな見事な宝石初めて身に着けましたわ。ありがとうございます」
 朝食の食堂でドナシアン伯爵夫人が嬉しそうに微笑む様を見てゾッとする。

 ゴドフロア叔父様がこのようなことを平然とするということは、もうこの宝石の持ち主が戻ってこないことを知っているからに違いない。

(証拠なんていらない。これは確信だ。あのゴドフロア叔父様はきっと……)

 私の頭に復讐の文字がぎらつく。私から家族を奪ったこの男に制裁を!




「なんで座らないの? 朝食のマナーすらできないの?」
 生意気な従姉妹ブロンシュに、まずは思い知らせてあげよう。

 だから今はわざと下品で愚かなふりをしよう。パンにはそのままかぶりつき、スープは皿に直接口をつけ音をだして飲んだ。

 ゴドフロア叔父様はぎょっとしたが注意はできない。だって、貧乏人の娘に私を仕立て上げたのは自分だから。

 ドナシアン伯爵夫人は軽蔑の眼差しで蔑み、ブロンシュは嬉しそうに笑った。

「さぁ、私の新しい妹。一緒に学園に行きましょう。すごく楽しいことが待っているわよ。ところで、そのドレスはずいぶん仕立てがいいけど後で私にちょうだい」

(あぁ、親子で似ているわね……人の物を欲しがるところが……)
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...