(完)悪役令嬢は惚れ薬を使って婚約解消させました

青空一夏

文字の大きさ
上 下
4 / 8

4,ロミオ様に反論するハロルド(ソフィアside)

しおりを挟む
 ロミオ様に、決めつけられた私は、またなにも言えないでいた。

「反論しないのは、認めたということだな?」

 詰めよってくるロミオ様と、周りを取り囲む生徒達の白い目。私の目からは涙が溢れた。

「泣けば罪が許されると思ったら大間違いだ! ソフィアとは従姉妹だが、もう身内とは思わない! また、このようなことをしたら謹慎だけではすまさないぞ!」

 ロミオ様は、視線で私が殺せそうなほど睨み付けた。大好きだったロミオ様の絶対零度の視線に、悲しさで嗚咽が漏れた。ほんの数日前までは愛を囁かれていたはずなのに・・・・・・


「やれ、やれ。では、私の母上は王妃様とは従姉妹同士ですが、私もその『身内』というやつから外してください。確実な証拠もないくせに、人を犯人呼ばわりして傷つける。たいした王太子だ。ソフィア、帰ろう。馬車まで送っていくよ。また、なにかあってソフィアのせいにされたら困るからね」

 ハロルドが、私にハンカチを渡して私のカバンにテキストを入れだした。

「ハロルド? なにをしている?」

 ハロルドは王太子の問いかけを無視をして、私の持ち物をすべてカバンに入れると、やっと王太子に向き合った。

「なにって? 帰る支度をしていたのですよ。もう授業は終わったでしょ? 私達は帰りますよ。ここにいる理由はなにもない」

「は? 私は、ソフィアとの話がまだ終わっていないのだが?」

 ロミオ様が、私を指さしておっしゃった。

「王太子とソフィアのこれは話とは言わない。これは、王太子の独り言だ。ソフィアの話もきかず、一方的にソフィアのせいにされるなら、ここにソフィアがいなければならない理由はないはずだ。貴方とそこの黒髪の女はソフィアをどうしても悪女にしたいだけでしょう? しかも、自分で振っておいて、幼馴染みの私とお昼を一緒に食べただけで『秋波を送る』などと言うとは・・・・・・ばかばかしいにも程がある」

 ハロルドの言葉に教室の空気が、微妙に変わった。

「ソフィア・ローズ公爵令嬢が書いた証拠なんてどこにあるんだ?」

「王太子とレティシア様がおっしゃっているだけよね」

 そんなことを囁く子もいて、私を同情的に見る目がほんの少しだけでてきたのだった。

 ハロルドは私を馬車まで連れて行き、一緒に付き添ってくれた。

「ソフィアにアドバイスをしてあげるね! その深紅のドレスのままでいるなら、もっとあざとく賢く狡い悪女になること。今のままのソフィアなら、淡いブルーのドレスがいいよ」

 私は、屋敷に帰ってクローゼットを開けた。深紅のドレスばかりが、ひしめいている。

「ソフィアは赤い薔薇のようだから、深紅のドレスはぴったりだ」

 そうおっしゃったのはロミオ様だったわ。もう、こんなドレスはいらない。

 私はこれ以降、原色のドレスを着るのはやめた。鮮やかな色に負けないほどの強さを身につけるまでは、淡い色のドレスで充分だ。そうすると、メイクも自然と薄くなる。もう、真っ赤なリップはつけない。淡いピンクのリップで、おしろいもほんの少し。髪型は、縦巻きロールをやめた。自然なウェーブの金髪をハーフアップにして、結び目には白い花を挿してもらうと全く違う自分が鏡の中でにっこりした。

「あら、お嬢様! こうすると雰囲気がまるで違いますね? とても、可愛いですよ」

 エリーが、楽しげに笑った。

 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。  この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

この恋を忘れたとしても

喜楽直人
恋愛
卒業式の前日。寮の部屋を片付けていた私は、作り付けの机の引き出しの奥に見覚えのない小箱を見つける。 ベルベットのその小箱の中には綺麗な紅玉石のペンダントが入っていた。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

婚約破棄がお望みならどうぞ。

和泉 凪紗
恋愛
 公爵令嬢のエステラは産まれた時から王太子の婚約者。貴族令嬢の義務として婚約と結婚を受け入れてはいるが、婚約者に対して特別な想いはない。  エステラの婚約者であるレオンには最近お気に入りの女生徒がいるらしい。エステラは結婚するまではご自由に、と思い放置していた。そんなある日、レオンは婚約破棄と学園の追放をエステラに命じる。  婚約破棄がお望みならどうぞ。わたくしは大歓迎です。

処理中です...