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ジュスタンの投げるナイフがこちらに向かって飛んでくる。
(嫌だ! まだ死にたくない。大好きなエドガールがお嫁さんにしてくれるって言ったのに)
ギュッと瞼を閉じれば固い金属がぶつかり合う音と、私の肩を抱く温かい腕を感じる。うっすら目を開けるとエドガールがにっこりと笑う。
「大丈夫だよ。ロズリーヌは俺が守る」
彼の声が好きだ。ベルベット・ボイスで私の身体を優しく包み込んでくれる。声をきくだけで安心できる存在。
ジュスタンは死刑を言い渡されて、アラベルは憎悪に燃えた目でジュスタンを睨んでいた。
「殺してやる。私がこの手で殺してやりたい・・・・・・」
物騒なつぶやきが聞こえてきて、思わずぞっとする。
裁判が終わり、シャンパトリタン辺境伯領に向かう前日、お父様が私を訪ねて来た。
「セレナとは別れたよ」
「そうですか。私にとってはどうでもいいことです」
「アラベルはわたしの子ではなかったようだ。私は逆だと思っていたのだ。お前が隣国の王太子の子で、アラベルだけが実の子供だと思っていた」
「まぁ、そんなはずがないでしょう? なぜそのように思われたのかしら? お母様はお父様を大層愛しておりましたのに」
「・・・・・・自分に自信がなかった。アマンディーヌは隣国の王太子と愛し合っていたと、あの当時はさまざまな噂があり、ついそう信じ込んでしまった」
「もし、そうならお母様がお父様と結婚するはずがないでしょう? 噂に惑わされたにしても、お父様はお母様と私をずっと裏切っていたことに変わりはありませんわ」
それがお父様との最後の会話になった。私はお父様が亡くなった時ですら、駆けつけることはなかったから。
「冬が長くて面白いことはなにもないシャンパトリタン辺境伯領だけど・・・・・・ロズリーヌは飽きないかな?」
シャンパトリタン辺境伯領に向かう馬車のなかで、不思議なことを言うエドガールに私は首を傾げた。
「なぜ私が飽きると思うの?」
「昔ね、ロズリーヌがお嫁さんになってくれるというのを、俺が渋ったのを覚えているよね? あれって姉さん達が、『ロズリーヌをこんな楽しみがなにもない田舎に住まわせるのが可哀想』と、言ったからなんだ」
シャンパトリタン辺境伯領は素晴らしいところだ、と思っていたのに意外すぎて笑った。私は暑がりでむしろ寒いあちらのほうが好きだし、雪で埋もれるあの地ならではの楽しみは、いくらでも見つけられると思う。
「ねぇ、エドガール。シャンパトリタン辺境伯領を楽しみがなにもない田舎、というお姉様達がびっくりするぐらい私達でシャンパトリタン辺境伯領を変えていきましょうよ」
「そうだね。楽しい場所をこれからたくさん作ればいい。二人で変えていこう。誰よりも最高に幸せにしてあげたいから」
エドガールはあの大好きな瞳で私を見つめる。蒼と緑がいり混じったなかに暖かなオレンジ色も垣間見える、綺麗で不思議なオパールの瞳。
この瞳を見つめるだけですでに私は楽しくて、彼の逞しい腕に手を添えるだけで、最高に幸せなことは言わないでおこう。
私達はシャンパトリタン辺境伯領の皆に祝福され結婚し、私とエドガールは冬に大量に降る雪を利用して、とても楽しいお祭りを考えだした。それは・・・・・・
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
次回が最終回となります。ロズリーヌとエドガールの子供も登場し楽しいお祭りの描写で、幸せな家族となったロズリーヌをお届けします。
(嫌だ! まだ死にたくない。大好きなエドガールがお嫁さんにしてくれるって言ったのに)
ギュッと瞼を閉じれば固い金属がぶつかり合う音と、私の肩を抱く温かい腕を感じる。うっすら目を開けるとエドガールがにっこりと笑う。
「大丈夫だよ。ロズリーヌは俺が守る」
彼の声が好きだ。ベルベット・ボイスで私の身体を優しく包み込んでくれる。声をきくだけで安心できる存在。
ジュスタンは死刑を言い渡されて、アラベルは憎悪に燃えた目でジュスタンを睨んでいた。
「殺してやる。私がこの手で殺してやりたい・・・・・・」
物騒なつぶやきが聞こえてきて、思わずぞっとする。
裁判が終わり、シャンパトリタン辺境伯領に向かう前日、お父様が私を訪ねて来た。
「セレナとは別れたよ」
「そうですか。私にとってはどうでもいいことです」
「アラベルはわたしの子ではなかったようだ。私は逆だと思っていたのだ。お前が隣国の王太子の子で、アラベルだけが実の子供だと思っていた」
「まぁ、そんなはずがないでしょう? なぜそのように思われたのかしら? お母様はお父様を大層愛しておりましたのに」
「・・・・・・自分に自信がなかった。アマンディーヌは隣国の王太子と愛し合っていたと、あの当時はさまざまな噂があり、ついそう信じ込んでしまった」
「もし、そうならお母様がお父様と結婚するはずがないでしょう? 噂に惑わされたにしても、お父様はお母様と私をずっと裏切っていたことに変わりはありませんわ」
それがお父様との最後の会話になった。私はお父様が亡くなった時ですら、駆けつけることはなかったから。
「冬が長くて面白いことはなにもないシャンパトリタン辺境伯領だけど・・・・・・ロズリーヌは飽きないかな?」
シャンパトリタン辺境伯領に向かう馬車のなかで、不思議なことを言うエドガールに私は首を傾げた。
「なぜ私が飽きると思うの?」
「昔ね、ロズリーヌがお嫁さんになってくれるというのを、俺が渋ったのを覚えているよね? あれって姉さん達が、『ロズリーヌをこんな楽しみがなにもない田舎に住まわせるのが可哀想』と、言ったからなんだ」
シャンパトリタン辺境伯領は素晴らしいところだ、と思っていたのに意外すぎて笑った。私は暑がりでむしろ寒いあちらのほうが好きだし、雪で埋もれるあの地ならではの楽しみは、いくらでも見つけられると思う。
「ねぇ、エドガール。シャンパトリタン辺境伯領を楽しみがなにもない田舎、というお姉様達がびっくりするぐらい私達でシャンパトリタン辺境伯領を変えていきましょうよ」
「そうだね。楽しい場所をこれからたくさん作ればいい。二人で変えていこう。誰よりも最高に幸せにしてあげたいから」
エドガールはあの大好きな瞳で私を見つめる。蒼と緑がいり混じったなかに暖かなオレンジ色も垣間見える、綺麗で不思議なオパールの瞳。
この瞳を見つめるだけですでに私は楽しくて、彼の逞しい腕に手を添えるだけで、最高に幸せなことは言わないでおこう。
私達はシャンパトリタン辺境伯領の皆に祝福され結婚し、私とエドガールは冬に大量に降る雪を利用して、とても楽しいお祭りを考えだした。それは・・・・・・
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次回が最終回となります。ロズリーヌとエドガールの子供も登場し楽しいお祭りの描写で、幸せな家族となったロズリーヌをお届けします。
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