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7 イナゴを料理するブロッサム / ブロッサムの部屋に侵入するメイド達
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「すみません。フライパンを使わせていただいて良いですか?」
コック長に声をかけると快く了承してくださった。なので、私はイナゴの脚と羽を取り除いた後、それらを手際よく洗い、水分を丁寧に拭き取り調理に取りかかった。虫を調理することは慣れていた。ビアス侯爵領では当たり前にイナゴやコオロギを食べるから。
フライパンにたっぷりめのオリーブオイルを注ぎ加熱する。オイルがほんのり香り始め、厨房に心地よい香りが広がる。そこにみじん切りにしたニンニクと赤唐辛子を加えた。炒める音と香りに心が躍るし、イナゴもフライパンの上で踊っているみたい。ここで塩を少量パラパラとふりかける。
「うわっ! 虫を調理してどうしようというのですか?」
「え? もちろん食べるのですわ。だって、もうすぐ夕食のお時間ですよね? メインディッシュの付け合わせに、イナゴのパスタを作るのですよ」
お次は、アルデンテに茹で上げたパスタを、さきほどのイナゴソースにからめた。横で顔をしかめているコック長に、味見をお願いする。
「嫌ですよ。そんな虫なんて食べませんよ」
「美味しいのですよ? どうぞ、一口だけでも召し上がれ?」
にっこり微笑むと、渋々とイナゴを口にした。
「え? 旨い・・・・・・こっ、これは、思ったよりもずっと美味しいです!」
私もひと口食べてみる。ニンニクと唐辛子で炒めたせいか、イナゴ自体の風味はしっかり残しつつ、ほんのりスパイシーな味わいが口内に広がる。ニンニクの香りと唐辛子の辛さが、イナゴの風味と絶妙に調和していた。
イナゴの表面はカリッとした食感で、少しナッツのような香ばしさも感じられた。唐辛子のピリッとした刺激も、料理にアクセントを与えて絶妙な美味しさになっている。
「夕食の際に、皆様のお皿に少しずつ盛るのが良いと思います。栄養価も豊富ですし、何よりも自然から採れたものなので、お金がかかっていません。これは裏庭で、メイドさんたちが私にくださったものです」
「え? イナゴをもらった?」
「はい。メイドさんたちの協力があったおかげで、このお料理を作ることができました。だから、これを彼女たちにもたっぷりと召し上がっていただきたいです。あ、それから、ケイティさんもお手伝いしてくれました」
「あーー、なんとなく状況を把握しましたよ。了解です。あいつらには大盛りにしてあげますよ。新人虐めなんて最低ですからね。良い罰になりますよ」
「罰? いいえ、むしろご褒美ですわ。イナゴはとっても美味しいし、栄養価も高いのです。それに、イナゴを投げつけられましたけれど、虐められたわけではありません。だって、私はイナゴを食べることができて嬉しいのですから」
コック長は呆れたような顔で笑っていた。さきほどまでの私との会話で、おもしろい要素なんてなかったはずだけど?
私はイナゴの脚と羽を除いたものを、少しばかり残しておいた。それを持って先ほどの池に戻り、怪我をしていた小さなガマガエルを探した。
「小さなガマちゃーーん。出てきてちょうだい。美味しい物をあげるわよーーっ」
ゲコ?
ハンカチの包帯を巻いた小さなガマちゃんが、私に恐る恐る近づいてきた。小さなガマちゃんは、つぶらな瞳を持っており、その丸く大きな瞳はまるで小さな宝石のようだった。
「ふふっ。可愛い子ね。あなたに名前をつけてあげるわ。そうねぇーー、今日からあなたはランドアイズ(round eyes)よ。意味はね、つぶらな瞳よ。愛称はランちゃん。わかった?」
ゲコ、ゲコ。
まるで私の言葉がわかるみたい。綺麗に洗って脚と羽を取ったイナゴの身体を三等分に切ったものを、ティースプーンで掬い上げて小さなガマちゃんのお口の前に差し出す。小さなガマちゃんは、ちょっとぎこちない動作だったけれど、興味津々に餌を観察し始めた。
ゆっくりとティースプーンに近づき、その舌をペロンと伸ばす。餌の匂いに誘われ、舌は素早くティースプーンの上をなぞり、小さな一口を摘み、飲み込んだ。その瞬間、私はカエルのかわいらしさに、笑みがこぼれた。
「たくさん食べて早く脚を治してね」
大きなガマガエル達も集まってきて、嬉しそうにゲコゲコ鳴いた。ウサギもこちらに寄って来て、ガマガエルの近くで寝そべっている。
「あなたはバニラよ。可愛いお名前でしょう」
ウサギに向かって声をかけると、ウサギはおおはしゃぎで、小さく飛び跳ねた。そのふわふわの耳がはばたき、その目はキラキラと輝いている。
私は生き物が大好きだ。王立貴族学園には通えなかったけれど、ビアス侯爵家の図書室にはたくさんの本があった。私はそこにある本をほとんど読み尽くした。私にとって図書室は新たな世界を開く場所だったから。
本を開くたびに、そのページから知識や冒険が広がるような気持ちでわくわくした。難しい学問の本から小説まで、さまざまなジャンルの本に触れた。特にお気に入りは生物図鑑と植物図鑑だった。
お父様が動物嫌いだったので、ビアス侯爵家ではなにも飼えなかった。今はバニラもランちゃんもいて、池の周りで一緒に寛ぐことができる。嬉しいなぁ。
私は空を見上げ夕焼けの美しさに見とれた。空に鮮やかなオレンジ色がゆっくりと広がっていく。太陽は西の地平線に沈みながら、その最後の光線が空を照らした。夕焼けの色彩がまるでキャンバスに描かれたかのように鮮やかで美しい。
この夕焼けを背景に、ランちゃん達とバニラを静かに見つめていると、幸せな気分になってくる。夕日の光が彼らの姿をさらに可愛く際立たせ、動物たちが穏やかに共存している様子が、まるで童話のなかの優しい世界にいるようで、ターナー伯爵家にこうしていられることに感謝したのだった。
※メイド視点
ここは、ターナー伯爵家の使用人用の大食堂だ。テーブルの上に並んだイナゴのパスタを見た瞬間、あたいたちは「うわっ!」と一斉に声を上げ、不快な表情を浮かべた。虫だらけのパスタが山盛りになったお皿が、目の前に置かれたからだ。
仲間のひとりが「えぇぇ、こんなの食べなきゃいけないの?」と不満げにつぶやいた。他のメイドたちも、「なんでこんなものを?」や「気持ち悪い!」といった言葉とともに、吐きそうだというジェスチャーまで見せた。
「ビアス侯爵領では、イナゴはお肉や魚と同じく、皆さん普通に食べます。食べず嫌いは良くありませんわ。慣れれば美味しいですから、どうぞ召し上がってください。遠慮しないで大丈夫です。元はと言えば、あなた方が私に提供してくれたものなのですからね」
ブロッサムは、にこにこと微笑みながら、あたい達に食べるように勧めた。
くっ・・・・・・報復ってわけね? 可愛い顔をして、なかなかやるわね!
「さぁ、君たちがブロッサムさんにあげたイナゴなのだろう? 全部綺麗に食べなさい。お残しは許さないよ」
コック長はイナゴがトッピングされたパスタを平気で食べていた。あたいは勇気を振り絞ってパスタと一緒にイナゴを口に運び、初めての一口を噛んでみた。表面はぱりっとした食感で、その部分は美味しく感じられた。
やがて、イナゴの体液や柔らかい部分の味が口内に広がっていく。イナゴ特有の風味が口に残り、正直に言って、これに慣れるのは難しいと思った。
しかし、ブロッサムはにこにことしながらも、もうひと口食べるように勧め、コック長は「これを全部食べ終わるまでは食堂から出てはいけない」と言った。
あたい達は涙を流しながら、イナゴパスタを食べ続けた。カリッとした後のグッチャリ感・・・・・ダメだ・・・・・・吐きそう。
「うふふ。そんなに美味しいですか? 良かったです。泣くほど喜んでいただけるなんて、お料理をした甲斐があったし、イナゴさんもきっと美味しく食べられて喜んでいますよ」
屈託なく笑うこの女は天然だわ! だって、食べられるイナゴが喜んでいるわけないじゃない? フライパンで油にまみれて焼き殺されて、嬉しいなんて思うもんかい!
「どうしたのですか?」
キョトンとした顔は愛らしく、綺麗な顔立ちだったから余計に癪に障った。
この仕返しは絶対、夜中にしてやるからね! 覚えときなさいよっ!
☆彡 ★彡
夜、池にいるガマガエルをこっそり捕まえ、布袋に入れた。静かにブロッサムの寝室に忍び込み、布袋をブロッサムのベッドの方に向けて一斉に開けた。
ブロッサムは突然の出来事に驚いて跳ね起き、目をこすっている。おかしなことに放ったガマガエル達は、一匹もブロッサムの身体の上には乗っていない。ブロッサムを守るように、周りを囲んでいたんだよ。
ブロッサムもガマガエル達を全く怖がらなくて、ほっとしたように微笑み、ガマガエルたちに「こんばんは」と挨拶さえしたのよ。蛙たちも嬉しそうに応え、和やかな雰囲気が広がった。
なによ、これ。ちゃんと、怖がれぇーー!
あたい達はブロッサムの美しい茶色の髪に、グルー(接着剤)を付ける計画も立てていた。彼女の髪がその不快な物質で汚れ、髪を切るしかなくなるように願ったのさ。
でも、その陰謀が実行に移される前に、ガマガエルたちがその気配を察知した。あいつらは一斉に身をかがめ、あたい達にむかって飛びかかってきたのさ。
ゲコゲコゲコーー!!
たっ、助けてーー!! 生暖かい液体がガマガエル達から放出された。
・・・・・・もしかして、これって・・・・・・カエル達のおしっこぉおおおーー!?
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
※骨膠(けっこう、またはグルー):動物の骨や皮などから作られる接着剤で、中世ヨーロッパでは広く使用された。主に木工や家具の接着に利用されたらしい。なお、ここは作者独自の異世界です。
※ 次回はガマちゃん視点ですよ🐸
コック長に声をかけると快く了承してくださった。なので、私はイナゴの脚と羽を取り除いた後、それらを手際よく洗い、水分を丁寧に拭き取り調理に取りかかった。虫を調理することは慣れていた。ビアス侯爵領では当たり前にイナゴやコオロギを食べるから。
フライパンにたっぷりめのオリーブオイルを注ぎ加熱する。オイルがほんのり香り始め、厨房に心地よい香りが広がる。そこにみじん切りにしたニンニクと赤唐辛子を加えた。炒める音と香りに心が躍るし、イナゴもフライパンの上で踊っているみたい。ここで塩を少量パラパラとふりかける。
「うわっ! 虫を調理してどうしようというのですか?」
「え? もちろん食べるのですわ。だって、もうすぐ夕食のお時間ですよね? メインディッシュの付け合わせに、イナゴのパスタを作るのですよ」
お次は、アルデンテに茹で上げたパスタを、さきほどのイナゴソースにからめた。横で顔をしかめているコック長に、味見をお願いする。
「嫌ですよ。そんな虫なんて食べませんよ」
「美味しいのですよ? どうぞ、一口だけでも召し上がれ?」
にっこり微笑むと、渋々とイナゴを口にした。
「え? 旨い・・・・・・こっ、これは、思ったよりもずっと美味しいです!」
私もひと口食べてみる。ニンニクと唐辛子で炒めたせいか、イナゴ自体の風味はしっかり残しつつ、ほんのりスパイシーな味わいが口内に広がる。ニンニクの香りと唐辛子の辛さが、イナゴの風味と絶妙に調和していた。
イナゴの表面はカリッとした食感で、少しナッツのような香ばしさも感じられた。唐辛子のピリッとした刺激も、料理にアクセントを与えて絶妙な美味しさになっている。
「夕食の際に、皆様のお皿に少しずつ盛るのが良いと思います。栄養価も豊富ですし、何よりも自然から採れたものなので、お金がかかっていません。これは裏庭で、メイドさんたちが私にくださったものです」
「え? イナゴをもらった?」
「はい。メイドさんたちの協力があったおかげで、このお料理を作ることができました。だから、これを彼女たちにもたっぷりと召し上がっていただきたいです。あ、それから、ケイティさんもお手伝いしてくれました」
「あーー、なんとなく状況を把握しましたよ。了解です。あいつらには大盛りにしてあげますよ。新人虐めなんて最低ですからね。良い罰になりますよ」
「罰? いいえ、むしろご褒美ですわ。イナゴはとっても美味しいし、栄養価も高いのです。それに、イナゴを投げつけられましたけれど、虐められたわけではありません。だって、私はイナゴを食べることができて嬉しいのですから」
コック長は呆れたような顔で笑っていた。さきほどまでの私との会話で、おもしろい要素なんてなかったはずだけど?
私はイナゴの脚と羽を除いたものを、少しばかり残しておいた。それを持って先ほどの池に戻り、怪我をしていた小さなガマガエルを探した。
「小さなガマちゃーーん。出てきてちょうだい。美味しい物をあげるわよーーっ」
ゲコ?
ハンカチの包帯を巻いた小さなガマちゃんが、私に恐る恐る近づいてきた。小さなガマちゃんは、つぶらな瞳を持っており、その丸く大きな瞳はまるで小さな宝石のようだった。
「ふふっ。可愛い子ね。あなたに名前をつけてあげるわ。そうねぇーー、今日からあなたはランドアイズ(round eyes)よ。意味はね、つぶらな瞳よ。愛称はランちゃん。わかった?」
ゲコ、ゲコ。
まるで私の言葉がわかるみたい。綺麗に洗って脚と羽を取ったイナゴの身体を三等分に切ったものを、ティースプーンで掬い上げて小さなガマちゃんのお口の前に差し出す。小さなガマちゃんは、ちょっとぎこちない動作だったけれど、興味津々に餌を観察し始めた。
ゆっくりとティースプーンに近づき、その舌をペロンと伸ばす。餌の匂いに誘われ、舌は素早くティースプーンの上をなぞり、小さな一口を摘み、飲み込んだ。その瞬間、私はカエルのかわいらしさに、笑みがこぼれた。
「たくさん食べて早く脚を治してね」
大きなガマガエル達も集まってきて、嬉しそうにゲコゲコ鳴いた。ウサギもこちらに寄って来て、ガマガエルの近くで寝そべっている。
「あなたはバニラよ。可愛いお名前でしょう」
ウサギに向かって声をかけると、ウサギはおおはしゃぎで、小さく飛び跳ねた。そのふわふわの耳がはばたき、その目はキラキラと輝いている。
私は生き物が大好きだ。王立貴族学園には通えなかったけれど、ビアス侯爵家の図書室にはたくさんの本があった。私はそこにある本をほとんど読み尽くした。私にとって図書室は新たな世界を開く場所だったから。
本を開くたびに、そのページから知識や冒険が広がるような気持ちでわくわくした。難しい学問の本から小説まで、さまざまなジャンルの本に触れた。特にお気に入りは生物図鑑と植物図鑑だった。
お父様が動物嫌いだったので、ビアス侯爵家ではなにも飼えなかった。今はバニラもランちゃんもいて、池の周りで一緒に寛ぐことができる。嬉しいなぁ。
私は空を見上げ夕焼けの美しさに見とれた。空に鮮やかなオレンジ色がゆっくりと広がっていく。太陽は西の地平線に沈みながら、その最後の光線が空を照らした。夕焼けの色彩がまるでキャンバスに描かれたかのように鮮やかで美しい。
この夕焼けを背景に、ランちゃん達とバニラを静かに見つめていると、幸せな気分になってくる。夕日の光が彼らの姿をさらに可愛く際立たせ、動物たちが穏やかに共存している様子が、まるで童話のなかの優しい世界にいるようで、ターナー伯爵家にこうしていられることに感謝したのだった。
※メイド視点
ここは、ターナー伯爵家の使用人用の大食堂だ。テーブルの上に並んだイナゴのパスタを見た瞬間、あたいたちは「うわっ!」と一斉に声を上げ、不快な表情を浮かべた。虫だらけのパスタが山盛りになったお皿が、目の前に置かれたからだ。
仲間のひとりが「えぇぇ、こんなの食べなきゃいけないの?」と不満げにつぶやいた。他のメイドたちも、「なんでこんなものを?」や「気持ち悪い!」といった言葉とともに、吐きそうだというジェスチャーまで見せた。
「ビアス侯爵領では、イナゴはお肉や魚と同じく、皆さん普通に食べます。食べず嫌いは良くありませんわ。慣れれば美味しいですから、どうぞ召し上がってください。遠慮しないで大丈夫です。元はと言えば、あなた方が私に提供してくれたものなのですからね」
ブロッサムは、にこにこと微笑みながら、あたい達に食べるように勧めた。
くっ・・・・・・報復ってわけね? 可愛い顔をして、なかなかやるわね!
「さぁ、君たちがブロッサムさんにあげたイナゴなのだろう? 全部綺麗に食べなさい。お残しは許さないよ」
コック長はイナゴがトッピングされたパスタを平気で食べていた。あたいは勇気を振り絞ってパスタと一緒にイナゴを口に運び、初めての一口を噛んでみた。表面はぱりっとした食感で、その部分は美味しく感じられた。
やがて、イナゴの体液や柔らかい部分の味が口内に広がっていく。イナゴ特有の風味が口に残り、正直に言って、これに慣れるのは難しいと思った。
しかし、ブロッサムはにこにことしながらも、もうひと口食べるように勧め、コック長は「これを全部食べ終わるまでは食堂から出てはいけない」と言った。
あたい達は涙を流しながら、イナゴパスタを食べ続けた。カリッとした後のグッチャリ感・・・・・ダメだ・・・・・・吐きそう。
「うふふ。そんなに美味しいですか? 良かったです。泣くほど喜んでいただけるなんて、お料理をした甲斐があったし、イナゴさんもきっと美味しく食べられて喜んでいますよ」
屈託なく笑うこの女は天然だわ! だって、食べられるイナゴが喜んでいるわけないじゃない? フライパンで油にまみれて焼き殺されて、嬉しいなんて思うもんかい!
「どうしたのですか?」
キョトンとした顔は愛らしく、綺麗な顔立ちだったから余計に癪に障った。
この仕返しは絶対、夜中にしてやるからね! 覚えときなさいよっ!
☆彡 ★彡
夜、池にいるガマガエルをこっそり捕まえ、布袋に入れた。静かにブロッサムの寝室に忍び込み、布袋をブロッサムのベッドの方に向けて一斉に開けた。
ブロッサムは突然の出来事に驚いて跳ね起き、目をこすっている。おかしなことに放ったガマガエル達は、一匹もブロッサムの身体の上には乗っていない。ブロッサムを守るように、周りを囲んでいたんだよ。
ブロッサムもガマガエル達を全く怖がらなくて、ほっとしたように微笑み、ガマガエルたちに「こんばんは」と挨拶さえしたのよ。蛙たちも嬉しそうに応え、和やかな雰囲気が広がった。
なによ、これ。ちゃんと、怖がれぇーー!
あたい達はブロッサムの美しい茶色の髪に、グルー(接着剤)を付ける計画も立てていた。彼女の髪がその不快な物質で汚れ、髪を切るしかなくなるように願ったのさ。
でも、その陰謀が実行に移される前に、ガマガエルたちがその気配を察知した。あいつらは一斉に身をかがめ、あたい達にむかって飛びかかってきたのさ。
ゲコゲコゲコーー!!
たっ、助けてーー!! 生暖かい液体がガマガエル達から放出された。
・・・・・・もしかして、これって・・・・・・カエル達のおしっこぉおおおーー!?
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
※骨膠(けっこう、またはグルー):動物の骨や皮などから作られる接着剤で、中世ヨーロッパでは広く使用された。主に木工や家具の接着に利用されたらしい。なお、ここは作者独自の異世界です。
※ 次回はガマちゃん視点ですよ🐸
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