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2 隠された真実ービアス侯爵家の正当な跡継ぎは・・・・・・?

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「招待客も共通だし、このままでいいわよね?」
「あぁ。姉妹だから親戚も同じだし、なんの問題もない」

 お父様とお母様は浮き浮きとした口調で相談を始めた。結婚式の準備を何事もなかったように進めようとしている。まるで私の姿が見えていないようだ。

 私の気持ちはどうでも良いの?

「ブロッサムには、私のドレスを貸してあげるわ。シルク生地で作られたラベンダー色のドレスよ。私ってなんて良い姉かしら?」

「あらぁ、それはいいわね! 結婚式にはブロッサムも必ず出席して、にこやかにしていなさいよ」

「嫌です。私は参加しません」

「ちょっと、我が儘を言わないで! 姉の結婚式に出席しない妹なんて外聞が悪いわよ! ブロッサムがいないと私がフロイドを奪ったみたいに思われるわ!」

 お姉様は私の耳に唇を近づけて、「ブロッサムはなにもしなくて良いのよ。ただ人形みたいに、そこにいるだけで良いの。簡単でしょう?」と囁いた。

「家族は仲良く協力しあって生きていかなければならん! いつも言ってきただろう」
 
 お父様は、脅すような表情で、いつもの言葉を口にした。

『家族は仲良く協力しあって』は魔法の言葉だ。幼い頃からそのように言われてきた私は、その言葉を聞くと抵抗できない気持ちになってしまう。

 けれど、お姉様に婚約者を奪われた場合にも、私は協力しなければならないの?




☆彡 ★彡(フロイドの兄クリスフォード視点)

 私はクリスフォード・ターナー。ターナー伯爵家の長男であり、来年二十歳になることで爵位を継ぐことが決まっている。この国では爵位を継ぐには二十歳になる必要があった。

 父上は2年ほど前から領地経営を私に任せ、田舎の別荘で趣味の釣りやら絵画を描いて気ままに暮らしている。母上は私が7歳の頃に流行病で亡くなっていた。
 そういうわけで、ここターナー伯爵邸には、私と弟のフロイドに使用人達だけが暮らしている。

「ブロッサム・ビアス候爵令嬢とは仲良くやっているんだろうね? お気の毒な方だから、しっかり支えてあげなさい。わかっているよな?」

「兄上、僕はもう子供じゃないんだ。いちいち指図されるのはごめんだよ」

 子供の頃は素直で私を慕っていてくれた弟のフロイドだったが、今では反抗的で私の言うことを聞こうともしない。それに最近は私を蔑むような眼差しで見てくる。

「本当にわかっているのか? お前は婿入りするだけで、なのだぞ」
「はっ。わかってるさ。コミュ障で王立貴族学園にも通わなかった出来損ないだろう? そんなのが女当主になるなんておかしいよ」

「それは噂のひとつに過ぎないだろう? 病弱だから王立貴族学園に通えなかったとも聞いている。令嬢達の社交場であるお茶会にも、一度も参加したことがないとは気の毒に」
「ふん。それは多分怠けているだけさ」

 ブロッサム侯爵令嬢のことを、ずいぶんと批判するフロイドに、首を傾げながらため息をついた。

 ビアス侯爵閣下と私の父上であるターナー伯爵は親しい友人だった。そのため同じ年に生まれた両家の子供達を結婚させようと結ばれた縁だった。良縁だと思っていたけれど、果たしてこれで二人はうまくいくのだろうか?

 不安しか感じないが、今更どうすることもできないのだった。
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