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1 貴族令嬢たちの戦いの始まり
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「はぁ……やはりアグネスがいない皇宮は広すぎる。あの麗しくも可憐な笑顔がもう身近で見られないなんて……私はなんて不幸なんだ」
輝く美貌の持ち主、ローマムア帝国の若き皇帝アレクサンダーが、しきりにため息をつき嘆いていた。
「まったく、アレクサンダーったら妹バカもいいところね。寂しいなら、さっさと妃を迎えたらどうです? この際、身分だって問いませんわよ。いつまでも独身で困らせて……あなたはローマムア帝国の皇帝なのですよ?」
「母上こそずるいじゃありませんか! 先月もアグネスに会いにスペイニ国へ行かれたでしょう? 毎月のように会えるから、アグネスロスにならないんですよ。羨ましい……」
「母親ですもの、娘に会いに行くのは当然でしょう? それに私は重責を担う皇帝ではありませんからね。妹が大好きなのは結構だけど、いい加減妃を迎えなさいな。アグネスだって、いつもあなたのことを気にしているのよ。『お兄様も素敵な妃を迎えて、私のように幸せになってほしいわ』と、すっかり口癖になってしまったわ」
「はぁ……私は香水をぷんぷんさせた、おしゃべりな令嬢たちがどうにも苦手でして。結婚なんてしなくても、いずれアグネスのところに子どもがたくさん生まれるでしょう? そのうちの一人でも養子に迎えれば済む話です。アグネスにそっくりな姪が生まれたら、私がわが子として育てて、次の女帝にするのも一興ではありませんか。どうです、母上?」
「……却下ですわね。その案が通るのは、あなたが妃を迎えたのに子どもに恵まれなかった場合だけ。妃も迎えずに妹の子を皇位につけるなんて、ありえません。却下です! こうなったら強硬手段を取らせてもらいますわ。ローマムア帝国の貴族令嬢を、全員皇宮に招待しましょう。一人くらいは気に入る令嬢がいるはずです」
「無茶苦茶です……私は今のままで満足しているのに」
どれほどアレクサンダーが拒んでも、皇后の意志は揺るがなかった。そして、数日後――ローマムア帝国中の貴族令嬢が順番に皇宮へと招かれることとなった。一日三名ずつ、見合いの名目で。
輝く美貌の持ち主、ローマムア帝国の若き皇帝アレクサンダーが、しきりにため息をつき嘆いていた。
「まったく、アレクサンダーったら妹バカもいいところね。寂しいなら、さっさと妃を迎えたらどうです? この際、身分だって問いませんわよ。いつまでも独身で困らせて……あなたはローマムア帝国の皇帝なのですよ?」
「母上こそずるいじゃありませんか! 先月もアグネスに会いにスペイニ国へ行かれたでしょう? 毎月のように会えるから、アグネスロスにならないんですよ。羨ましい……」
「母親ですもの、娘に会いに行くのは当然でしょう? それに私は重責を担う皇帝ではありませんからね。妹が大好きなのは結構だけど、いい加減妃を迎えなさいな。アグネスだって、いつもあなたのことを気にしているのよ。『お兄様も素敵な妃を迎えて、私のように幸せになってほしいわ』と、すっかり口癖になってしまったわ」
「はぁ……私は香水をぷんぷんさせた、おしゃべりな令嬢たちがどうにも苦手でして。結婚なんてしなくても、いずれアグネスのところに子どもがたくさん生まれるでしょう? そのうちの一人でも養子に迎えれば済む話です。アグネスにそっくりな姪が生まれたら、私がわが子として育てて、次の女帝にするのも一興ではありませんか。どうです、母上?」
「……却下ですわね。その案が通るのは、あなたが妃を迎えたのに子どもに恵まれなかった場合だけ。妃も迎えずに妹の子を皇位につけるなんて、ありえません。却下です! こうなったら強硬手段を取らせてもらいますわ。ローマムア帝国の貴族令嬢を、全員皇宮に招待しましょう。一人くらいは気に入る令嬢がいるはずです」
「無茶苦茶です……私は今のままで満足しているのに」
どれほどアレクサンダーが拒んでも、皇后の意志は揺るがなかった。そして、数日後――ローマムア帝国中の貴族令嬢が順番に皇宮へと招かれることとなった。一日三名ずつ、見合いの名目で。
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