(完)愛人を作るのは当たり前でしょう?僕は家庭を壊したいわけじゃない。

青空一夏

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6 少しは成長したよ(ダニエル視点)

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私は、取引先という商家に修行に行かされた。

行く前にソフィアが僕を抱きしめて「さようなら」と言った。
その顔は、とても悲しそうだった。

やたらと若い女性ばかりが多い部署だった。綺麗な女性もいれば、かわいい女性もいる。

「ダニエルくぅーーん。この書類を午後までにチェックしてね! あ、ちょっとぐらい間違っても大丈夫よぉ」

「ダニエルくぅーーん。この箇所、間違ってたねぇーー。いいから、気にしないでぇーー」

「あぁ、そこは難しいからしないでいいよ。次の簡単な操作だけ覚えてちょうだい」

皆、優しくて、天国だった。難しいことは、ほとんど皆がしてくれて、これが修行なんてラッキーだった。

「「「ねぇ、飲みに行かなぁい?」」」

綺麗な女性達が、率先して誘ってきた。私は、やっぱり、もてるんだなと確信した。

仕事の合間に休憩していると、廊下で他の部署の男達が噂していた。

「あの国一番の豪商のローレヌ家の跡取り娘のお婿さんは、これからまた探すって話だね?」

「あぁ、あのダニエルって奴は、ハニートラップしかけられまくりだろ? どうせ、盛大にやらかして棄てられるんだろ」

「あそこの娘はさ、超美人さんだから、すごい競争率だろうな。ペットにでもなって可愛がってもらいたいよなぁーー。あっはは」

私は、その言葉を聞いて、気分が悪くなった。ソフィアは私の妻だ。
私は、・・・・・・どうすればいいのかな・・・・・・どうしたいのかな・・・・・・

「ふふふ。聞いちゃったんだ。良かったら、こっちに来たらどうだ? じじぃ集団の窓際族の部署だがな」

「え? どこですか? それって」

「一番端っこにある部署だよ。もう定年間近な使用済みじじぃの集まりさ」


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


私は、そこに移動し、じいさんが10人がいる部署に変った。いつもは、皆すごく暇そうだった。

ところが、なにかトラブルがあるとここに書類を持ってきて、役職者達が教えを請うのだった。

「どういうことなんですか?」

「ふふふ。儂らは、各部署の責任者だった者さ。お前さんは、少しでも仕事ができるようになって、奥さんとこに帰りたいかい? それとも、一生、愚か者でいて金持ちの婆さんの慰み者になるかい? 」


私は、そこでこの世界の常識を学び直した。営業の責任者だったじいさんからは、商品の売り込みの仕方と、人から好感を持たれる話し方を。営業戦力的な話もしてくれてし、最近の商品の売れ筋傾向や顧客分析も教えてくれた。


経理の責任者だったじいさんからは、帳簿の見方とつけかたを。従業員がよく誤魔化す水増し請求の見抜き方なども。

事務の責任者だったじいさんからは、備品や消耗品の管理や苦情対応や細々とした作業を。

休憩時間には、新聞や雑誌での話題や、世間話や社交界のことなども話してもらうと、いかに自分が小さな世界だけで生きてきたかがわかった。

「お前さんは、あの豪商の跡継ぎ娘に飼われていただけの、血筋がいいワンコみたいなもんさ。そろそろ、人間に成長しねぇとな!」

私は、そう言われてうなづいたのだった。そうして、1年経ったころには、このじいさん達と私は事業を興すまでになった。

飼われている犬ではない。人間になるために・・・・・・



これから、ソフィアに一年ぶりに会うんだ。胸が高鳴って、手が汗ばんだ。
もし、棄てられても、笑ってお礼を言って別れる覚悟はできていた。


一年ぶりに、ローレヌ家の大きな門をくぐり、待っていたのは・・・・・・
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