上 下
4 / 7

4 私はこの旦那様をどうすればよかったのだろう?(ソフィア視点)

しおりを挟む
ダニエル様が我が家にいらした時には、まだ8歳ぐらいだったかしら?
王家の血筋の公爵家の次男だった彼は、綺麗な子供だった。

私は、国一番の豪商ローレヌ家の跡取り娘だった。このダニエル様を一目で気に入り、私が所有する屋敷に連れ帰った。

ダニエルの公爵家は、当主夫妻と嫡男が不幸な事故でなくなりローレヌ家に対する借金だけが残った。贅沢で知られる公爵夫人は、お金を使うことしかしなかったらしい。莫大な借金に、王家は知らんぷりを決め込んだ。

「王族だからと言って、もう臣下にくだった者達の借金までは責任は持てない」

これが、ダニエル様に対するこの国の王と隣国の王の反応だった。

「この幼いダニエル様を、奴隷として売り飛ばすのもかわいそうだし。どうしたものかな・・・・・・お金を回収するにはお金持ちに売り飛ばす事だが・・・・・・そうすると・・・・・・」

私は、その先の想像を子供ながらにして、吐き気がした。

当時、5歳上の13歳だった私は両親にお願いした。

「この方は、私の屋敷に連れて行きます。夫にしたいと思います。悪い話ではないでしょう? いくら、没落したとはいえ、血筋は確かです。私が身ごもれば、その子が公爵の名を名乗れるようにお家を復興させればよろしいのでは?」

「え? まだ、ダニエル様は8才ですよ? 教育はどうするのです? 貴族学校に行かせるには公爵家を先に立て直さないと・・・・・・」

「私が教えますわ。家庭教師から学んだことを教えます。立派にお婿さんになるように私が教育します!」

新聞や雑誌は、ダニエル様が傷つく記事は切りとってお渡していた。
新聞には公爵家の一覧があったり、ローレヌ家跡取りの私の話題も書いてあることが多かったから。

この屋敷の主はダニエル様だと教えて、とても甘やかした結果が・・・・・・これだった。
私は、この綺麗な子供、そして今では素晴らしく麗しい貴公子が大好きだったから・・・・・・

「ダニエル様、貴方はこのローレヌ家への借金しかない公爵家も没落した立場です。この世界で、没落したとは、貴族としての税金を王家に収められず公爵の地位を一時的にとりあげられた立場をいいます。貴方の両親もお兄様もすでに、この世にはいらっしゃいません」

私は、なるべく、穏やかな声で事実を教えてさしあげた。
ところが、ダニエル様は蕩けるような笑顔を見せた。

「嘘だ! そんなはずはない! あぁ、・・・・・・もしも、そうだとしてもだ・・・・・・この血筋がほしくて婿にしたのなら私を当主にするべきだ! 即刻、当主の変更をお願いしたい! もし、ダメだとしてもだ、ソフィアが当主だろうと結果は変らない。 だって、私こそは、ソフィアが最も愛する大事な男なのだから! 当主が尊敬して愛する夫が実権を握るのが道理だ! 我ながら、なんて完璧な結論だ」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側室を用意したら離縁して下さいますか?

ヘロディア
恋愛
育ちがよく、幸せな将来を予想していた主人公。彼女の結婚相手は望んでいた結婚とは大違いであった。 夜中になると貪るように彼女を求めてくる彼と、早く離婚したいと願うようになり…

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

国外追放なんて簡単にはできません

章槻雅希
ファンタジー
とある王国での、卒業パーティでの婚約破棄騒動後、国外追放になった令嬢を国境まで送り届ける兵士たちの話。 ほぼ1場面の小話です。 婚約破棄の場面は出てきません。 『小説家になろう』に重複投稿しています。

聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」 「歌の下手なロレーナ!」 「怠け者ロレーナ!」 教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。

王太子妃の仕事って何ですか?

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約を破棄するが、妾にしてやるから王太子妃としての仕事をしろと言われたのですが、王太子妃の仕事って?

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~

秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」  妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。  ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。  どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

処理中です...