3 / 7
3 あぶなかったわ! セーフかしら?(侍女のマリ視点)
しおりを挟む
「ダニエル様は・・・・・・その・・・・・・とても大事な旦那様だったので・・・・・・ごめんなさい。この方がとても好きだったのですもの」
美しい奥方様が泣きながら両親に謝っていた。私は、貧しい農家の娘で字も読めないし書くこともできない。侍女というよりは雑用女なのだけれど、ダニエル様の目にとまり侍女の真似事をしていいと言われた。
旦那様は、とてもかっこいいし、優しい方だ。
「妻が妊娠したら君を側室にしてあげるね」
そう言われて、とても嬉しかった。雑用女が側室なれるなんて夢のようだと思った。
「マリ。お前は、いつからダニエル様とそういう仲になっていたのだ?」
奥様のお父様が睨み付けてきたので、思わず私はかっとなった。
「いつからでもいいではありませんか? この家の当主はダニエル様ですよね? 私はその側室ですよ? その私に向かってその口の聞き方は、おかしいとは思いませんか?」
「そうかい? この家の当主はダニエルだとは誰が言ったのかな?」
奥様のお父様は、愉快そうに尋ねてきた。
「もちろん、ダニエル様ですよ。だって、奥様があれだけ大事になさっていれば誰でもそう思いますよ・・・・・・・ね?」
ん? なにか、嫌な予感がするわ。冷静になるのよ。なにか、重大なことを見落としている予感が・・・・・・えぇと・・・・・・字は読めないけれど、紋章はわかるわ。この国では表札の下に紋章を記す慣習があった。・・・・・・たしかこの屋敷の表札の下の紋章はペガサスだった。ダニエル様の襟の紋章も当然ペガサスのはず・・・・・・げっ! 獅子の紋章をつけている?
ということは・・・・・・このお屋敷の持ち主は、ダニエル様ではない。
私は、途端に気がついてしまった。多分、私はとんでもない間違いをしでかした。奥様の襟には、間違いなくペガサスの紋章がある。
平民でも大金持ちは紋章を持っている。そして、その紋章はその家の正当な跡取りでなければつけられないという決まりがあった。
なのに、旦那様が全く違う紋章をつけているということは・・・・・・この屋敷の正当な当主ではないということ・・・・・・
「あ、旦那様に申し上げます。私は、この男に無理やり押し倒されただけで、被害者は私です。えっと、いまさらですが、思い出しました」
「え? なにを今更、言い出すんだい? 誘ったら、喜んですぐにこの話に乗ったよね? 側室になったら綺麗なドレスをいっぱい着れるって喜んでたじゃないか!」
うわ、やめてよ! この顔だけいい金なし男め! それ以上言ったら叩いてやるわ!
「何を、黙っているんだい? 私のことを愛しているって言っただろう?」
私は、思いっきり、この男の横っ面を張り飛ばした。
「奥様、私は奥様の雑用女です。この男の本性を見抜こうと思って、わざわざこのようなことをしたのです!」
美しい奥方様が泣きながら両親に謝っていた。私は、貧しい農家の娘で字も読めないし書くこともできない。侍女というよりは雑用女なのだけれど、ダニエル様の目にとまり侍女の真似事をしていいと言われた。
旦那様は、とてもかっこいいし、優しい方だ。
「妻が妊娠したら君を側室にしてあげるね」
そう言われて、とても嬉しかった。雑用女が側室なれるなんて夢のようだと思った。
「マリ。お前は、いつからダニエル様とそういう仲になっていたのだ?」
奥様のお父様が睨み付けてきたので、思わず私はかっとなった。
「いつからでもいいではありませんか? この家の当主はダニエル様ですよね? 私はその側室ですよ? その私に向かってその口の聞き方は、おかしいとは思いませんか?」
「そうかい? この家の当主はダニエルだとは誰が言ったのかな?」
奥様のお父様は、愉快そうに尋ねてきた。
「もちろん、ダニエル様ですよ。だって、奥様があれだけ大事になさっていれば誰でもそう思いますよ・・・・・・・ね?」
ん? なにか、嫌な予感がするわ。冷静になるのよ。なにか、重大なことを見落としている予感が・・・・・・えぇと・・・・・・字は読めないけれど、紋章はわかるわ。この国では表札の下に紋章を記す慣習があった。・・・・・・たしかこの屋敷の表札の下の紋章はペガサスだった。ダニエル様の襟の紋章も当然ペガサスのはず・・・・・・げっ! 獅子の紋章をつけている?
ということは・・・・・・このお屋敷の持ち主は、ダニエル様ではない。
私は、途端に気がついてしまった。多分、私はとんでもない間違いをしでかした。奥様の襟には、間違いなくペガサスの紋章がある。
平民でも大金持ちは紋章を持っている。そして、その紋章はその家の正当な跡取りでなければつけられないという決まりがあった。
なのに、旦那様が全く違う紋章をつけているということは・・・・・・この屋敷の正当な当主ではないということ・・・・・・
「あ、旦那様に申し上げます。私は、この男に無理やり押し倒されただけで、被害者は私です。えっと、いまさらですが、思い出しました」
「え? なにを今更、言い出すんだい? 誘ったら、喜んですぐにこの話に乗ったよね? 側室になったら綺麗なドレスをいっぱい着れるって喜んでたじゃないか!」
うわ、やめてよ! この顔だけいい金なし男め! それ以上言ったら叩いてやるわ!
「何を、黙っているんだい? 私のことを愛しているって言っただろう?」
私は、思いっきり、この男の横っ面を張り飛ばした。
「奥様、私は奥様の雑用女です。この男の本性を見抜こうと思って、わざわざこのようなことをしたのです!」
29
お気に入りに追加
617
あなたにおすすめの小説
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
婚約破棄騒動の裏で僕らはのんびりと愛を育む。ありがたいことに出世しました。
うめまつ
恋愛
婚約破棄をした一粒種の皇太子と男爵令嬢がご成婚。皇太子ご夫妻となられた。陛下の采配に下々は大人しく従うだけ。特に側近の一人とは言え、雑用係の僕なんかね。でもまさか皇太子ご夫妻を真似て婚約破棄が流行るなんて。………僕らは巻き込まれたくないなぁ。え?君も婚約破棄してみたい?ちょっと待ってよ!
※会話のみです。コメディ感やテンポの良さなど何もありません。でもこういう地味なイチャイチャを見たくなりました。
王子と王女の不倫を密告してやったら、二人に処分が下った。
ほったげな
恋愛
王子と従姉の王女は凄く仲が良く、私はよく仲間外れにされていた。そんな二人が惹かれ合っていることを知ってしまい、王に密告すると……?!
断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる