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3 あぶなかったわ! セーフかしら?(侍女のマリ視点)

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「ダニエル様は・・・・・・その・・・・・・とても大事な旦那様だったので・・・・・・ごめんなさい。この方がとても好きだったのですもの」

美しい奥方様が泣きながら両親に謝っていた。私は、貧しい農家の娘で字も読めないし書くこともできない。侍女というよりは雑用女なのだけれど、ダニエル様の目にとまり侍女の真似事をしていいと言われた。

旦那様は、とてもかっこいいし、優しい方だ。

「妻が妊娠したら君を側室にしてあげるね」

そう言われて、とても嬉しかった。雑用女が側室なれるなんて夢のようだと思った。


「マリ。お前は、いつからダニエル様とそういう仲になっていたのだ?」

奥様のお父様が睨み付けてきたので、思わず私はかっとなった。

「いつからでもいいではありませんか? この家の当主はダニエル様ですよね? 私はその側室ですよ? その私に向かってその口の聞き方は、おかしいとは思いませんか?」

「そうかい? この家の当主はダニエルだとは誰が言ったのかな?」

奥様のお父様は、愉快そうに尋ねてきた。

「もちろん、ダニエル様ですよ。だって、奥様があれだけ大事になさっていれば誰でもそう思いますよ・・・・・・・ね?」

ん? なにか、嫌な予感がするわ。冷静になるのよ。なにか、重大なことを見落としている予感が・・・・・・えぇと・・・・・・字は読めないけれど、紋章はわかるわ。この国では表札の下に紋章を記す慣習があった。・・・・・・たしかこの屋敷の表札の下の紋章はペガサスだった。ダニエル様の襟の紋章も当然ペガサスのはず・・・・・・げっ! 獅子の紋章をつけている?

ということは・・・・・・このお屋敷の持ち主は、ダニエル様ではない。

私は、途端に気がついてしまった。多分、私はとんでもない間違いをしでかした。奥様の襟には、間違いなくペガサスの紋章がある。

平民でも大金持ちは紋章を持っている。そして、その紋章はその家の正当な跡取りでなければつけられないという決まりがあった。

なのに、旦那様が全く違う紋章をつけているということは・・・・・・この屋敷の正当な当主ではないということ・・・・・・

「あ、旦那様に申し上げます。私は、この男に無理やり押し倒されただけで、被害者は私です。えっと、いまさらですが、思い出しました」

「え? なにを今更、言い出すんだい? 誘ったら、喜んですぐにこの話に乗ったよね? 側室になったら綺麗なドレスをいっぱい着れるって喜んでたじゃないか!」

うわ、やめてよ! この顔だけいい金なし男め! それ以上言ったら叩いてやるわ!

「何を、黙っているんだい? 私のことを愛しているって言っただろう?」

私は、思いっきり、この男の横っ面を張り飛ばした。

「奥様、私は奥様の雑用女です。この男の本性を見抜こうと思って、わざわざこのようなことをしたのです!」
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