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10-2 ヤーコッピとマニュアルのR15末路(おまけ)
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※ダークな展開です。読みたい方だけどうぞ。残酷な直接的な描写はありませんが、後味は良くないです。
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鉱山での労働は過酷を極める。坑道の崩落やガスの爆発、酸素不足といった危険が常に伴うのだ。特に地下深くに掘り進むことで、崩落のリスクが高まる。
「おい、ヤーコッピ! 父上たちは酷すぎないか? 犯罪を犯したわけでもないのに、勘当して鉱山送りにするなんて」
「もちろん、僕もそう思いますよ。だって、胸のことは冗談だし、あんなの虐めでもなんでもないでしょう? ただの遊びで、ちょっとしたジョークだったのに」
「このままこの馬車に乗っていたら、鉱山に着いてしまうよ。次の休憩所で逃げるんだ。別の馬車に飛び乗って、どこか遠くに行こう」
「そうですね。賛成です。鉱山なんかで働かされたら、命がいくつあっても足りませんよ」
愚か者の意見が一致したところで、タイミングを見計らった二人は、なんとか別の馬車に乗り込んだ。そこに乗っている男たちは、上等の服に綺麗な顔だちの者ばかりだった。安心してそのまま馬車でうたた寝をしていると、目的地に着いた馬車がゆっくりと停まる。
「ここはどこですか?」
「あぁ、ここは男娼の館だよ。お前たちはそれほど綺麗じゃないねぇーー。それだとマダムのお相手は無理だから、あっちの方で頑張っておくれ」
「あっちって?」
ふたりが同時に問うと、男娼館の女将はニヤリと笑った。
「男の相手をするのに決まっているだろう? 中には暴力をふるう男もいるから、怒らせるんじゃないよ?」
女将はそこで首をひねった。数が合わないのだ。どう見ても、二人ばかり余計に男娼館にやって来ている。しかし、それは珍しいことではなかった。鉱山送りになる馬車と男娼館送りになる馬車は同じ休憩所を使う。休憩所は走り疲れた馬を交代させ、馬車の点検も行う場所だ。行く先に納得できない愚か者はもう一方の馬車に乗り込み難を逃れた気になるが、実際はどちらもおなじぐらい危険な仕事だった。異常な性志向者はその行為の際に首を絞めることもあったし、鞭やろうそくでいたぶる者もいる。
「おい、ヤーコッピ。まずいぞ。まだ鉱山のほうがましだったかもしれない」
「ですね。どうします? 逃げるにしても、ここは見張りが多すぎます」
「真夜中に逃げよう。ここは地獄だ。男の相手なんてしていられるかっ!」
真夜中、男娼館の者たちが寝静まった頃、こっそりとヤーコッピとマニュアルは男娼館を抜け出した。だが、良い具合に逃げ出せたと思ったら、外にはもっと危険な罠が待っていた。
二人は路地裏に逃げ込み、夜を明かそうとするが、満面の笑みで声をかける者がいたのだ。彼は人身売買をするお頭コワイナで、医学が高度に発達した国からやって来た。彼の目的はひとつ、新鮮な臓器だ。その国では死ぬ運命にある金持ちの患者は、特殊な方法で生きながらえることができた。それは、他人の臓器を移植すること。
「やぁ、君たち。こんなところで夜を明かすなんて、風邪をひいてしまうよ。良かったら、俺と一緒に来ないか? 寝ているだけで大金が稼げる仕事があるんだ」
「寝ているだけで? 本当に? いったい、どういう仕事なんですか?」
「医療関係かな。君たちはなんの苦労もしなくていい」
「本当に? よくわからないけど楽ならなんでも良いです。きっと、鉱山や男娼館よりマシなはずですからね」
コワイナは心の中でほくそ笑む。
(別に嘘はついていないぜ。手術室のベッドに横たわっているだけだから、なんの苦労もしなくていい。寝ているだけで、というのは永遠の眠りにつくってことだが、痛みもないだろう。麻酔薬で眠っているうちに、あの世に逝ける。大金が稼げるのも嘘じゃない。ただ、その金は俺のものだけどな。あっははは!)
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※ヤーコッピとマニュアルの末路はここまで。
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鉱山での労働は過酷を極める。坑道の崩落やガスの爆発、酸素不足といった危険が常に伴うのだ。特に地下深くに掘り進むことで、崩落のリスクが高まる。
「おい、ヤーコッピ! 父上たちは酷すぎないか? 犯罪を犯したわけでもないのに、勘当して鉱山送りにするなんて」
「もちろん、僕もそう思いますよ。だって、胸のことは冗談だし、あんなの虐めでもなんでもないでしょう? ただの遊びで、ちょっとしたジョークだったのに」
「このままこの馬車に乗っていたら、鉱山に着いてしまうよ。次の休憩所で逃げるんだ。別の馬車に飛び乗って、どこか遠くに行こう」
「そうですね。賛成です。鉱山なんかで働かされたら、命がいくつあっても足りませんよ」
愚か者の意見が一致したところで、タイミングを見計らった二人は、なんとか別の馬車に乗り込んだ。そこに乗っている男たちは、上等の服に綺麗な顔だちの者ばかりだった。安心してそのまま馬車でうたた寝をしていると、目的地に着いた馬車がゆっくりと停まる。
「ここはどこですか?」
「あぁ、ここは男娼の館だよ。お前たちはそれほど綺麗じゃないねぇーー。それだとマダムのお相手は無理だから、あっちの方で頑張っておくれ」
「あっちって?」
ふたりが同時に問うと、男娼館の女将はニヤリと笑った。
「男の相手をするのに決まっているだろう? 中には暴力をふるう男もいるから、怒らせるんじゃないよ?」
女将はそこで首をひねった。数が合わないのだ。どう見ても、二人ばかり余計に男娼館にやって来ている。しかし、それは珍しいことではなかった。鉱山送りになる馬車と男娼館送りになる馬車は同じ休憩所を使う。休憩所は走り疲れた馬を交代させ、馬車の点検も行う場所だ。行く先に納得できない愚か者はもう一方の馬車に乗り込み難を逃れた気になるが、実際はどちらもおなじぐらい危険な仕事だった。異常な性志向者はその行為の際に首を絞めることもあったし、鞭やろうそくでいたぶる者もいる。
「おい、ヤーコッピ。まずいぞ。まだ鉱山のほうがましだったかもしれない」
「ですね。どうします? 逃げるにしても、ここは見張りが多すぎます」
「真夜中に逃げよう。ここは地獄だ。男の相手なんてしていられるかっ!」
真夜中、男娼館の者たちが寝静まった頃、こっそりとヤーコッピとマニュアルは男娼館を抜け出した。だが、良い具合に逃げ出せたと思ったら、外にはもっと危険な罠が待っていた。
二人は路地裏に逃げ込み、夜を明かそうとするが、満面の笑みで声をかける者がいたのだ。彼は人身売買をするお頭コワイナで、医学が高度に発達した国からやって来た。彼の目的はひとつ、新鮮な臓器だ。その国では死ぬ運命にある金持ちの患者は、特殊な方法で生きながらえることができた。それは、他人の臓器を移植すること。
「やぁ、君たち。こんなところで夜を明かすなんて、風邪をひいてしまうよ。良かったら、俺と一緒に来ないか? 寝ているだけで大金が稼げる仕事があるんだ」
「寝ているだけで? 本当に? いったい、どういう仕事なんですか?」
「医療関係かな。君たちはなんの苦労もしなくていい」
「本当に? よくわからないけど楽ならなんでも良いです。きっと、鉱山や男娼館よりマシなはずですからね」
コワイナは心の中でほくそ笑む。
(別に嘘はついていないぜ。手術室のベッドに横たわっているだけだから、なんの苦労もしなくていい。寝ているだけで、というのは永遠の眠りにつくってことだが、痛みもないだろう。麻酔薬で眠っているうちに、あの世に逝ける。大金が稼げるのも嘘じゃない。ただ、その金は俺のものだけどな。あっははは!)
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※ヤーコッピとマニュアルの末路はここまで。
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