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10 ヤーコッピとマニュアルの末路
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ミッシェルはロザンヌを侮辱したヤーコッピとマニュアルには、わざと取引停止通知も名誉毀損の訴状も送らなかった。じわじわと社交界での噂を広めて追い詰めてからと思っていたのだ。
まずは社交会の重鎮である二人の公爵夫人に話をする。
「女性の体型について失礼なことをいう男性をどう思われますか? ありがたいことに、私の娘はとてもスタイルが良くて、親バカではございますが自慢に思っておりましたの。それが、ある者の言葉で、すっかり身体の線を隠す服を着るようになりましたのよ」
「まぁ、お可哀想に。いったい、なんと言われたのですか?」
「胸が豊かなので、『パットをいれているのか?』と、からかわれたそうなのです。もちろん、そのような物はいれておりませんわ」
「なんと下品な男性でしょう。どなたがそうおっしゃったのですか?」
「ヤーコッピ卿ですわ。キケン伯爵家のご子息です。カステリ侯爵家のマニュアル卿は、ロザンヌが試験で不正をしたなどと言いがかりをつけてきたのですよ? まったく、ひどい話です」
ミッシェルは愛娘を夫の兄であるワイアット男爵家の養女にしたことと、王立貴族学園での出来事を詳細に二人の公爵夫人に話していった。
「信じられないほど愚かな方たちですわね。もう、あそこのお嬢様や奥様を夜会やお茶会には招かないことにしますわね」
その結果、キケン伯爵家とカステリ侯爵家は社交界から締め出された。夜会やお茶会からの誘いは一切なくなり、その理由を噂から聞く羽目になったのだ。
「ヤーコッピのせいで、どこからも招待状が届かなくなったわ。ワイアット男爵令嬢の胸をからかったそうね? 『キケン伯爵家の息子は色狂いで、女性の身体のことばかり見ているから、成績が悪いのだ』という噂が流れているのよ。まるで性犯罪者扱いの噂まであるわ。これでは外も歩けないわよ」
「母上、僕は冗談でロザンヌ嬢をからかっただけなのです。悪気なんてありませんでした」
「冗談で、モロー商会の後継者に、パットを胸に入れているのか聞いたのか? ヤーコッピには呆れるぞ、この愚か者が!」
「だって、父上。相手は男爵令嬢だったから、それほど大きな問題にはならないと思いました。だって、キケン伯爵家のほうが上の身分でしょう?」
「爵位だけはな。だが、そのほかは全て、あちらが上なのだ。困った。同じように非難されているカステリ侯爵家に相談しよう。なんとか打開策を考えねば」
キケン伯爵とその夫人は、キケン伯爵家の居間で、頭を抱えたのだった。
カステリ侯爵家とキケン伯爵家で、この事件について議論が行われた。キケン伯爵たちがカステリ侯爵邸を訪ねたのだ。
「モロー商会に謝りに行くとしても、息子たちの処遇を決めて報告するという形でなくてはまずいと思います。相手はあのミッシェル会長ですからね。小手先だけの言い訳では、相手にしてもらえません」
「でしたら、うちはマニュアルを勘当します。カステリ侯爵家には次男がおりますし、実のところマニュアルより優秀なのですよ」
「なるほど。だったら、キケン伯爵家もヤーコッピを勘当し、伯爵家の籍から抜きましょう。うちにも、マニュアルより出来の良い長女と次男がおりますからな。家の存続のためには、愚か者は切り捨てるしかないでしょう」
カステリ侯爵家とキケン伯爵家はそのような判断を下し、モロー商会長に会いに向かった。
その頃、ミッシェルはワイアット男爵領の大邸宅に戻っていた。カステリ侯爵とキケン伯爵が会いに来るとの知らせを受け、どのようなことを言ってくるのか楽しみにしていた。
「このたびは大変申し訳ございませんでした。私どもの息子が、とんでもないことをしてしまい、どう償ってよいのか悩みました。結論として、息子とは縁を切り勘当することにしました。どうか、それで勘弁してくださいませんか?」
「勘当ですか? そんなことをしても、ヤーコッピ卿とマニュアル卿は訴えさせてもらいますよ。あの子たちに賠償金が払えるのでしょうか? どう、思います?」
「賠償金・・・・・・それは、かなり辛い仕事をしないと無理だと思います」
「世の中には辛い仕事が山ほどあります。自分の力で賠償金を払わせるのです。そうすれば、取引停止は10年で解除します。社交界の噂も、三年もすれば薄らぐでしょう。可愛い子には旅をさせろ、といいますよね? いい旅をさせてあげてくださいね? あの者たちに援助などしてはいけません。男なのですから、自分で働いてお金を作らせてください」
ミッシェルは黒い笑みを浮かべた。そんなわけで、ヤーコッピとマニュアルは勘当され、高額な賠償金を払うために鉱山へと送られたのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※次は10-2で、鉱山送りになった二人の末路です。
まずは社交会の重鎮である二人の公爵夫人に話をする。
「女性の体型について失礼なことをいう男性をどう思われますか? ありがたいことに、私の娘はとてもスタイルが良くて、親バカではございますが自慢に思っておりましたの。それが、ある者の言葉で、すっかり身体の線を隠す服を着るようになりましたのよ」
「まぁ、お可哀想に。いったい、なんと言われたのですか?」
「胸が豊かなので、『パットをいれているのか?』と、からかわれたそうなのです。もちろん、そのような物はいれておりませんわ」
「なんと下品な男性でしょう。どなたがそうおっしゃったのですか?」
「ヤーコッピ卿ですわ。キケン伯爵家のご子息です。カステリ侯爵家のマニュアル卿は、ロザンヌが試験で不正をしたなどと言いがかりをつけてきたのですよ? まったく、ひどい話です」
ミッシェルは愛娘を夫の兄であるワイアット男爵家の養女にしたことと、王立貴族学園での出来事を詳細に二人の公爵夫人に話していった。
「信じられないほど愚かな方たちですわね。もう、あそこのお嬢様や奥様を夜会やお茶会には招かないことにしますわね」
その結果、キケン伯爵家とカステリ侯爵家は社交界から締め出された。夜会やお茶会からの誘いは一切なくなり、その理由を噂から聞く羽目になったのだ。
「ヤーコッピのせいで、どこからも招待状が届かなくなったわ。ワイアット男爵令嬢の胸をからかったそうね? 『キケン伯爵家の息子は色狂いで、女性の身体のことばかり見ているから、成績が悪いのだ』という噂が流れているのよ。まるで性犯罪者扱いの噂まであるわ。これでは外も歩けないわよ」
「母上、僕は冗談でロザンヌ嬢をからかっただけなのです。悪気なんてありませんでした」
「冗談で、モロー商会の後継者に、パットを胸に入れているのか聞いたのか? ヤーコッピには呆れるぞ、この愚か者が!」
「だって、父上。相手は男爵令嬢だったから、それほど大きな問題にはならないと思いました。だって、キケン伯爵家のほうが上の身分でしょう?」
「爵位だけはな。だが、そのほかは全て、あちらが上なのだ。困った。同じように非難されているカステリ侯爵家に相談しよう。なんとか打開策を考えねば」
キケン伯爵とその夫人は、キケン伯爵家の居間で、頭を抱えたのだった。
カステリ侯爵家とキケン伯爵家で、この事件について議論が行われた。キケン伯爵たちがカステリ侯爵邸を訪ねたのだ。
「モロー商会に謝りに行くとしても、息子たちの処遇を決めて報告するという形でなくてはまずいと思います。相手はあのミッシェル会長ですからね。小手先だけの言い訳では、相手にしてもらえません」
「でしたら、うちはマニュアルを勘当します。カステリ侯爵家には次男がおりますし、実のところマニュアルより優秀なのですよ」
「なるほど。だったら、キケン伯爵家もヤーコッピを勘当し、伯爵家の籍から抜きましょう。うちにも、マニュアルより出来の良い長女と次男がおりますからな。家の存続のためには、愚か者は切り捨てるしかないでしょう」
カステリ侯爵家とキケン伯爵家はそのような判断を下し、モロー商会長に会いに向かった。
その頃、ミッシェルはワイアット男爵領の大邸宅に戻っていた。カステリ侯爵とキケン伯爵が会いに来るとの知らせを受け、どのようなことを言ってくるのか楽しみにしていた。
「このたびは大変申し訳ございませんでした。私どもの息子が、とんでもないことをしてしまい、どう償ってよいのか悩みました。結論として、息子とは縁を切り勘当することにしました。どうか、それで勘弁してくださいませんか?」
「勘当ですか? そんなことをしても、ヤーコッピ卿とマニュアル卿は訴えさせてもらいますよ。あの子たちに賠償金が払えるのでしょうか? どう、思います?」
「賠償金・・・・・・それは、かなり辛い仕事をしないと無理だと思います」
「世の中には辛い仕事が山ほどあります。自分の力で賠償金を払わせるのです。そうすれば、取引停止は10年で解除します。社交界の噂も、三年もすれば薄らぐでしょう。可愛い子には旅をさせろ、といいますよね? いい旅をさせてあげてくださいね? あの者たちに援助などしてはいけません。男なのですから、自分で働いてお金を作らせてください」
ミッシェルは黒い笑みを浮かべた。そんなわけで、ヤーコッピとマニュアルは勘当され、高額な賠償金を払うために鉱山へと送られたのだった。
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※次は10-2で、鉱山送りになった二人の末路です。
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