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6 サトボネラ伯爵やってくる
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こちらはサトボネラ伯爵家のマナーハウスである。サトボネラ伯爵はコリーヌの父親だ。コリーヌはロザンヌに嫌がらせを仕掛けた主犯格であり、『身の程知らず』『学園は貴族の子息をたぶらかしに通うところではない』『あなたなんか本気で相手にされるわけないわ。遊ばれるだけの立場だと、ちゃんと自覚なさいませ』などの暴言を吐いた令嬢でもある。
「なんてことだ・・・・・・モロー商会から取引停止の通知がきている。急いでモロー商会に手紙を・・・・・・いや、直接モロー商会に出向き、理由を聞かなくては・・・・・・いったい、なぜ、急にこのようなことを言いだしてきたのだろう?」
マナーハウスにいたサトボネラ伯爵は娘のコリーヌが何をしでかしたのか、まだなにも知らなかった。急いで王都にいるサトボネラ伯爵夫人にも知らせる。サトボネラ伯爵夫人はコリーヌから、目障りな男爵令嬢がおり毎日注意しているとは聞いていたが、まさかモロー商会の愛娘とは気づかない。
モロー商会の本店はワイアット男爵領にあり、会長はその本店か、向かいの敷地に構えた大邸宅にいることが多い。サトボネラ伯爵夫妻は本店まで出向き説明を求めたが、窓口の従業員に冷たくあしらわれた。
「サトボネラ伯爵家に対する融資は全額回収させていただきます。もちろん、新たな融資も行わないません。これは会長の決定です。理由ですか? そこまでは、私どもではわかりかねます」
「会長に会わせてください。どこの貴族だってモロー商会から融資を受けている。うちは大口の保険にも入っているのに。モロー商会のサポートがなければ、サトボネラ伯爵家の事業はお手上げです」
「会長がお会いになるかは保証しませんが、ワイアット男爵家のタウンハウスに滞在しています」
「ワイアット男爵家のタウンハウス? あぁ、そう言えば、会長の夫君の副会長は、ワイアット男爵の実弟でしたね。しかし、会長がそこにいらっしゃるとは珍しい。いつもは本店に出勤されているか、ご自宅にいらっしゃるでしょう? なんだって、そんなところに・・・・・・」
「ロザンヌお嬢様に会うためです。優秀なロザンヌお嬢様はモロー商会の後継者ですが、ワイアット男爵家の養女にもなりましたので」
「・・・・・・旦那様、大変ですわ。コリーヌは男爵令嬢に注意していたと聞いたことがあります。もしや・・・・・・」
「どういうことだ? 注意? 意味がわからない・・・・・・」
サトボネラ伯爵夫妻は大汗をかきながら、ワイアット男爵領から王都にまた移動した。普通であれば三日かかるところを、休む間もなく馬車を乗り継いだので、わずか一日で到着した。ずっと馬車に揺られていたせいで、肩も腰もお尻も痛い。滝のような汗で衣服はびちょびちょ、髪を振り乱している姿は、貴族というより浮浪者に近かった。
☆彡 ★彡
やっとの思いで、王都のタウンハウスに着いたサトボネラ伯爵は、早速コリーヌに問いただす。
「コリーヌ。注意していた男爵令嬢とは、いったい誰なのか言いなさい」
「私が注意していたのは、ロザンヌ・ワイアット男爵令嬢ですが、それがどうしたというのですか?」
「なんてことだ・・・・・・なにを言ったのだね?」
「ローマン殿下と肩を並べて親しげに講堂に入ってきたので、高位貴族の息子を狙うために学園に来たのかと思い、『ここは学問を学びに来るところです』と、注意しただけです。だいたい、男爵令嬢がローマン殿下に話しかけるなんて身のほど知らずでしょう?」
「男爵家とはいってもワイアット男爵家は別格だ。モロー商会との結びつきが強く、商会の貿易ネットワークを利用して製品の製造や販売を行う大金持ちだぞ。そのモロー商会が提供する金融サービスは、国家の経済基盤を支えている。つまりだ、国王陛下といえども、モロー商会には気を遣い、顔色を伺うほどなのだ。そのモロー商会の会長がロザンヌ嬢の実母だ。ロザンヌ嬢はモロー商会の跡継ぎ娘なのだぞ」
「ということは、モロー家はワイアット男爵家よりも、さらに大金持ちなのね? そして、そのふたつの家を継ぐのがロザンヌ様ってことかしら? すごい! ロザンヌ様が、初めからそうと言ってくれれば、注意なんかしませんでした。ロザンヌ様が普通の平民から養女に迎えられた男爵令嬢というありふれた立場を装っていたため、私はその真実に気づかず騙されてしまったのです。私こそが被害者ですわ」
「とにかく、コリーヌも一緒にワイアット男爵家のタウンハウスに行くぞ。誠心誠意、謝れば許してもらえるかもしれん」
「謝るのは嫌です。私はなにも悪いことはしていません」
「このままだと、コリーヌのドレスも宝石も処分することになる。学園には通えないし、屋敷も別荘も手放すことになり、狭い部屋に家族全員で過ごすことになるんだぞ! わかっているのか? コリーヌは決して怒らせてはいけない方を怒らせた」
「だって、私の伯母様はメルヴァ・ウォールデン侯爵夫人ですわ。王妃殿下の妹でしょう? サトボネラ伯爵家のほうが、ずっと家柄が良いでしょう?」
「王妃殿下でさえ、浪費癖が祟って、モロー商会から多額の融資を受けているのだ。ウォールデン侯爵家も例外ではないだろう。貴族であれば、なにかしらモロー商会とは取引しているのだ。爵位だけでは通用しない世界があるのだよ」
「・・・・・・そんなすごいところの令嬢だなんて知らなかったです。平民から男爵家の養女になったなら、普通は貧しい家の子だったと思うでしょう?」
「貧しい家の子だと? ロザンヌ嬢はコリーヌの1,000倍以上もお金持ちだ」
「そんなに? だったら、謝って親友になります」
「それがいい。モロー商会の後継者と仲良くなれるのは、光栄なことなのだぞ」
☆彡 ★彡
こちらは王都のワイアット男爵邸である。ロザンヌは実の両親とワイアット男爵夫妻に囲まれ、楽しい時間を過ごしていた。ロザンヌに対する嫌がらせ事件を知ったミッシェルは、夫のランドールを呼び寄せ、ランドールはワイアット男爵を連れて王都にやってきたのだ。ランドールとワイアット男爵も猛烈に怒っていたが、ロザンヌの前では穏やかに微笑んでいた。
「旦那様、サトボネラ伯爵が夫人と令嬢を連れてお越しでございます。モロー商会の会長とお話がしたいそうです」
侍女の報告に、ワイアット男爵は声を荒げた。
「ここまで来るとは、なんと図々しい。ミッシェル会長、会ってやりますか?」
「娘まで連れてきたのでしょう? 私たちみんなで、どのようなお話しが聞けるのか確かめてみましょう」
そんなわけで、ワイアット男爵はサトボネラ伯爵たちを、来客用サロンに案内させたのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
次回、コリーヌの末路です。
更新は一日二回。朝8:00と夜20:00ですよーー(^^)
ざまぁは二段階。
一段階目(7話)は普通、二段階目(7-2話)はちょっぴりお下品💦
「なんてことだ・・・・・・モロー商会から取引停止の通知がきている。急いでモロー商会に手紙を・・・・・・いや、直接モロー商会に出向き、理由を聞かなくては・・・・・・いったい、なぜ、急にこのようなことを言いだしてきたのだろう?」
マナーハウスにいたサトボネラ伯爵は娘のコリーヌが何をしでかしたのか、まだなにも知らなかった。急いで王都にいるサトボネラ伯爵夫人にも知らせる。サトボネラ伯爵夫人はコリーヌから、目障りな男爵令嬢がおり毎日注意しているとは聞いていたが、まさかモロー商会の愛娘とは気づかない。
モロー商会の本店はワイアット男爵領にあり、会長はその本店か、向かいの敷地に構えた大邸宅にいることが多い。サトボネラ伯爵夫妻は本店まで出向き説明を求めたが、窓口の従業員に冷たくあしらわれた。
「サトボネラ伯爵家に対する融資は全額回収させていただきます。もちろん、新たな融資も行わないません。これは会長の決定です。理由ですか? そこまでは、私どもではわかりかねます」
「会長に会わせてください。どこの貴族だってモロー商会から融資を受けている。うちは大口の保険にも入っているのに。モロー商会のサポートがなければ、サトボネラ伯爵家の事業はお手上げです」
「会長がお会いになるかは保証しませんが、ワイアット男爵家のタウンハウスに滞在しています」
「ワイアット男爵家のタウンハウス? あぁ、そう言えば、会長の夫君の副会長は、ワイアット男爵の実弟でしたね。しかし、会長がそこにいらっしゃるとは珍しい。いつもは本店に出勤されているか、ご自宅にいらっしゃるでしょう? なんだって、そんなところに・・・・・・」
「ロザンヌお嬢様に会うためです。優秀なロザンヌお嬢様はモロー商会の後継者ですが、ワイアット男爵家の養女にもなりましたので」
「・・・・・・旦那様、大変ですわ。コリーヌは男爵令嬢に注意していたと聞いたことがあります。もしや・・・・・・」
「どういうことだ? 注意? 意味がわからない・・・・・・」
サトボネラ伯爵夫妻は大汗をかきながら、ワイアット男爵領から王都にまた移動した。普通であれば三日かかるところを、休む間もなく馬車を乗り継いだので、わずか一日で到着した。ずっと馬車に揺られていたせいで、肩も腰もお尻も痛い。滝のような汗で衣服はびちょびちょ、髪を振り乱している姿は、貴族というより浮浪者に近かった。
☆彡 ★彡
やっとの思いで、王都のタウンハウスに着いたサトボネラ伯爵は、早速コリーヌに問いただす。
「コリーヌ。注意していた男爵令嬢とは、いったい誰なのか言いなさい」
「私が注意していたのは、ロザンヌ・ワイアット男爵令嬢ですが、それがどうしたというのですか?」
「なんてことだ・・・・・・なにを言ったのだね?」
「ローマン殿下と肩を並べて親しげに講堂に入ってきたので、高位貴族の息子を狙うために学園に来たのかと思い、『ここは学問を学びに来るところです』と、注意しただけです。だいたい、男爵令嬢がローマン殿下に話しかけるなんて身のほど知らずでしょう?」
「男爵家とはいってもワイアット男爵家は別格だ。モロー商会との結びつきが強く、商会の貿易ネットワークを利用して製品の製造や販売を行う大金持ちだぞ。そのモロー商会が提供する金融サービスは、国家の経済基盤を支えている。つまりだ、国王陛下といえども、モロー商会には気を遣い、顔色を伺うほどなのだ。そのモロー商会の会長がロザンヌ嬢の実母だ。ロザンヌ嬢はモロー商会の跡継ぎ娘なのだぞ」
「ということは、モロー家はワイアット男爵家よりも、さらに大金持ちなのね? そして、そのふたつの家を継ぐのがロザンヌ様ってことかしら? すごい! ロザンヌ様が、初めからそうと言ってくれれば、注意なんかしませんでした。ロザンヌ様が普通の平民から養女に迎えられた男爵令嬢というありふれた立場を装っていたため、私はその真実に気づかず騙されてしまったのです。私こそが被害者ですわ」
「とにかく、コリーヌも一緒にワイアット男爵家のタウンハウスに行くぞ。誠心誠意、謝れば許してもらえるかもしれん」
「謝るのは嫌です。私はなにも悪いことはしていません」
「このままだと、コリーヌのドレスも宝石も処分することになる。学園には通えないし、屋敷も別荘も手放すことになり、狭い部屋に家族全員で過ごすことになるんだぞ! わかっているのか? コリーヌは決して怒らせてはいけない方を怒らせた」
「だって、私の伯母様はメルヴァ・ウォールデン侯爵夫人ですわ。王妃殿下の妹でしょう? サトボネラ伯爵家のほうが、ずっと家柄が良いでしょう?」
「王妃殿下でさえ、浪費癖が祟って、モロー商会から多額の融資を受けているのだ。ウォールデン侯爵家も例外ではないだろう。貴族であれば、なにかしらモロー商会とは取引しているのだ。爵位だけでは通用しない世界があるのだよ」
「・・・・・・そんなすごいところの令嬢だなんて知らなかったです。平民から男爵家の養女になったなら、普通は貧しい家の子だったと思うでしょう?」
「貧しい家の子だと? ロザンヌ嬢はコリーヌの1,000倍以上もお金持ちだ」
「そんなに? だったら、謝って親友になります」
「それがいい。モロー商会の後継者と仲良くなれるのは、光栄なことなのだぞ」
☆彡 ★彡
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「旦那様、サトボネラ伯爵が夫人と令嬢を連れてお越しでございます。モロー商会の会長とお話がしたいそうです」
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そんなわけで、ワイアット男爵はサトボネラ伯爵たちを、来客用サロンに案内させたのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
次回、コリーヌの末路です。
更新は一日二回。朝8:00と夜20:00ですよーー(^^)
ざまぁは二段階。
一段階目(7話)は普通、二段階目(7-2話)はちょっぴりお下品💦
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