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2 不思議なレストラン? (チャーリー・シーモア視点)
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僕は居心地の悪いレッグ伯爵家を意気揚々と去っていく。
「あぁーー! 最高の気分だよ。僕はやっと解放されたんだ! あの真面目で面白みのない堅実すぎるミアからやっと別れることができた!」
料理や掃除は確かに好きだけれど、金の為だからやっていたんだ。実家のシーモア伯爵家はいつだってミアに金をねだっていたからミアに喜んでもらう必要があった。
僕には事業を運営する力はない。数字に弱いし人間関係は苦手だし、絶対うまくできない自信がある。だから自分の居場所を作る為にレッグ伯爵家で料理をしたり掃除をした。レッグ伯爵家の婿として生きていくのなら、ミアには優しくし尽くすのが当然だとも思っていた。
ーーそれほど好きでもない女の機嫌をとるのはひと苦労だったよ。でも、もうそんな生活とはおさらばだ!
私はハニーといつも待ち合わせをしているカフェに行き彼女が来るのを待った。
「お待たせぇーー。待ったぁ? それで印鑑は持ってきたかしら?」
「あぁ、もちろんだよ。レストランをプレゼントしてくれるなんて夢のようだよ」
「うふふ、そんなのお安いご用だわ」
僕はミアより若くて綺麗なハニーについて行く。ごみごみした繁華街を抜けると、お洒落だけれど真っ黒な壁の建物が現れた。その建物の地下には、薄暗い照明の広く豪華な食堂があった。
「さぁ、ここがあなたのお城、あなたのレストランよ」
びっくりするぐらい広い空間はどこか毒々しい雰囲気を漂わせていた。赤い血のような絨毯に黒い壁、天井からつり下がっているシャンデリアはかなり年代物だ。
「ありがとう」
その言葉を彼女に言おうとしたが、私がまわりを見回しているうちに彼女の姿は消えていた。
「新しいシェフか? 名前は? 印鑑はここに押して」
厨房を守るように立っていた屈強な体格の男から、一枚の書類を渡されたが字が小さくて暗いしよく見えなかった。
「チャーリーです。あぁ、この空欄の場所に印鑑ですね?」
「料理の腕は確かなんだろうね? でなきゃ、すぐにあっち行きだからな」
「あっち?」
印鑑を押しながら尋ねたが男は笑ってこう言うだけだった。
「そう、あっち」
ーーなんかよくわからない会話だな。この男ってそもそもなに?
まもなくやって来た客は剣を二本も背中に背負い、スローイングナイフを腰回りにびっしりつけていた。
「よぉ! この店が開くのって二ヶ月ぶりじゃねーーか! 前のシェフがたった3日しかいなかったもんなぁ」
「ふっ、あいつはいくのが早すぎましたね」
―ー行く? どこに行くんだ?
「ステーキとポテサラ頼む! いいか? ステーキはレア。ポテサラはマヨ多めの林檎たっぷりだぞ」
ヒゲづらで眼光鋭い男がドスがきいた声で注文してくる。ステーキとポテサラを慎重に作るが緊張して手が震えた。
この客からはさっきから微かなガーリックの香りがしていた。毎回食事で摂取しているから服に染み付いているのかも。体臭にも移るのかな?
考えながら、ガーリックライスとガーリックチップをたくさん載せたレアステーキを皿にもり、その客に出した。ポテサラは言われたとおりの林檎多めのマヨネーズ大盛りだ。
バンっと大きな音がしてガッと首根っこを掴まれて・・・・・・猛烈なキスをされた。ほっぺに。
「お前、俺がガーリックライスをすっげーー好きってよくわかったなぁーー! こいつ、結構つかえるんじゃねーーか? 初日にあっちにいかなくてすんで良かったなぁーー」
それからその客は楽しそうに鼻歌を歌いながら食べ始めた。
「レアのステーキ、殺戮の味♪ 最高、さいこーー!♫ 血湧き肉躍る、宴会だぜぃ !! ひゃっほーー」
そして、腰に下げているスローイングナイフを次々と壁に突き立てた。
すぐに奥のドアから黒服の男や女が出てきて壁に刺さったナイフを取り綺麗に磨いてその男に返した。別のドアからは壁職人らしい作業着の男達が5人ほど出てきて、あっという間に壁紙を貼り替えたのだった。
ーーなんだ、ここ? ……普通のレストランじゃない?
「あぁーー! 最高の気分だよ。僕はやっと解放されたんだ! あの真面目で面白みのない堅実すぎるミアからやっと別れることができた!」
料理や掃除は確かに好きだけれど、金の為だからやっていたんだ。実家のシーモア伯爵家はいつだってミアに金をねだっていたからミアに喜んでもらう必要があった。
僕には事業を運営する力はない。数字に弱いし人間関係は苦手だし、絶対うまくできない自信がある。だから自分の居場所を作る為にレッグ伯爵家で料理をしたり掃除をした。レッグ伯爵家の婿として生きていくのなら、ミアには優しくし尽くすのが当然だとも思っていた。
ーーそれほど好きでもない女の機嫌をとるのはひと苦労だったよ。でも、もうそんな生活とはおさらばだ!
私はハニーといつも待ち合わせをしているカフェに行き彼女が来るのを待った。
「お待たせぇーー。待ったぁ? それで印鑑は持ってきたかしら?」
「あぁ、もちろんだよ。レストランをプレゼントしてくれるなんて夢のようだよ」
「うふふ、そんなのお安いご用だわ」
僕はミアより若くて綺麗なハニーについて行く。ごみごみした繁華街を抜けると、お洒落だけれど真っ黒な壁の建物が現れた。その建物の地下には、薄暗い照明の広く豪華な食堂があった。
「さぁ、ここがあなたのお城、あなたのレストランよ」
びっくりするぐらい広い空間はどこか毒々しい雰囲気を漂わせていた。赤い血のような絨毯に黒い壁、天井からつり下がっているシャンデリアはかなり年代物だ。
「ありがとう」
その言葉を彼女に言おうとしたが、私がまわりを見回しているうちに彼女の姿は消えていた。
「新しいシェフか? 名前は? 印鑑はここに押して」
厨房を守るように立っていた屈強な体格の男から、一枚の書類を渡されたが字が小さくて暗いしよく見えなかった。
「チャーリーです。あぁ、この空欄の場所に印鑑ですね?」
「料理の腕は確かなんだろうね? でなきゃ、すぐにあっち行きだからな」
「あっち?」
印鑑を押しながら尋ねたが男は笑ってこう言うだけだった。
「そう、あっち」
ーーなんかよくわからない会話だな。この男ってそもそもなに?
まもなくやって来た客は剣を二本も背中に背負い、スローイングナイフを腰回りにびっしりつけていた。
「よぉ! この店が開くのって二ヶ月ぶりじゃねーーか! 前のシェフがたった3日しかいなかったもんなぁ」
「ふっ、あいつはいくのが早すぎましたね」
―ー行く? どこに行くんだ?
「ステーキとポテサラ頼む! いいか? ステーキはレア。ポテサラはマヨ多めの林檎たっぷりだぞ」
ヒゲづらで眼光鋭い男がドスがきいた声で注文してくる。ステーキとポテサラを慎重に作るが緊張して手が震えた。
この客からはさっきから微かなガーリックの香りがしていた。毎回食事で摂取しているから服に染み付いているのかも。体臭にも移るのかな?
考えながら、ガーリックライスとガーリックチップをたくさん載せたレアステーキを皿にもり、その客に出した。ポテサラは言われたとおりの林檎多めのマヨネーズ大盛りだ。
バンっと大きな音がしてガッと首根っこを掴まれて・・・・・・猛烈なキスをされた。ほっぺに。
「お前、俺がガーリックライスをすっげーー好きってよくわかったなぁーー! こいつ、結構つかえるんじゃねーーか? 初日にあっちにいかなくてすんで良かったなぁーー」
それからその客は楽しそうに鼻歌を歌いながら食べ始めた。
「レアのステーキ、殺戮の味♪ 最高、さいこーー!♫ 血湧き肉躍る、宴会だぜぃ !! ひゃっほーー」
そして、腰に下げているスローイングナイフを次々と壁に突き立てた。
すぐに奥のドアから黒服の男や女が出てきて壁に刺さったナイフを取り綺麗に磨いてその男に返した。別のドアからは壁職人らしい作業着の男達が5人ほど出てきて、あっという間に壁紙を貼り替えたのだった。
ーーなんだ、ここ? ……普通のレストランじゃない?
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