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11 (ローリー視点)R15 ※

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※R15  残酷かもしれない描写あり。 閲覧注意。 





(ローリー視点)

 


「アンバーは全ての罪状を認め、刑はすでに執行された。戦場稼ぎは死刑。平民が貴族へ危害を加えた(硫酸をかけた)こと等も併合罪とされ八つ裂きの刑となった。さて、お前は兵站部隊を脱走した覚えはないと言ったな? ならば、今ここにいる人間は、ローリー・マカロン侯爵を騙る平民ということでよろしいか?」
 裁判に携わる文官の一人が僕に質問する。

 すでにアンバーは八つ裂きの刑に処されたと聞き、足の震えが止まらない。

「えっと・・・・・・そうだとすればどうなりますかね?」

「平民が貴族のふりをしてマカロン侯爵家を乗っ取ろうとしたのなら、貴族社会を揺るがす大悪党だ。国王である余への大きな挑戦になろう。見せしめでやはり八つ裂きか、生きながら釜ゆでか」
 一段高い正面に座った国王陛下は、鋭い眼差しで僕を睨んだ。

「八つ裂きか釜ゆで・・・・・・あり得ない。・・・・・・あ、えっと・・・・・・僕は間違いなくローリー・マカロンです。たった今はっきりと思い出しました! 兵站部隊を脱走しました。死人が大量に出る野戦病院の隣で、吐き気がするくらい精神を病んでいたのです。そうだ、僕は精神疾患を抱えてやむなく脱走したんです・・・・・・決して職務を放棄するつもりではありませんでした」

「くだらんな。あのような戦場では皆が同じようにストレスを抱えて、それでも祖国や愛する者の為に必死で戦っていたのだ。お前だけが辛かったわけではない!」
 ベンジャミンが国王陛下の隣に立ち、僕に軽蔑の眼差しを注ぐ。

「くっ・・・・・・アンバーに僕は騙されたんです。いや、脅されていたのです! ジャックも僕の子供じゃないし、全ては戦場稼ぎのアンバーのせいです! あいつは毒婦で魔女なんだ!」

「はぁーー、女に全ての罪をなすりつけ逃げようとするとは! こんな男がマカロン侯爵家の人間とはな。恥ずかしい奴め! 脱走兵としての罪、デルーカ男爵家次男ロマーノへの傷害罪、余罪も含めての判決は死罪しかないだろう。だが高位貴族ということもあり、温情で斬首刑としてやろう。前マカロン侯爵(ローリーの父親)は余に仕えてくれた実直な男だった故、その息子へのささやかな情けだ」

「お待ちください。僕にチャンスをください。なんでもしますから首を切られるなんて嫌です!」

「なんでもするだと? 懲罰部隊を望むとは勇気があるな。余は見直したぞ! しっかり励むように。もう一度聞くが、斬首刑でなくてもいいのか?」

「はい! 首を切られるなんて絶対に嫌です!」

(え? 見直した? どういう意味だろう? 死ななくて済んだのだからまぁいいか)





★*☆*★*






 ここは戦の最前線だった地を取り囲む村。こんな荒れた地にも多くの平民と驚くほどの数の子供達が住んでいた。

 敵国はこの地に人間用ベアートラップを多数仕掛けた。ベアートラップとは狩猟で大型動物を仕留める罠で、罠の中央に足を乗せるとバネ仕掛けにより二つの鋸歯のある門形の金属版が合わさり、足を強く挟み込む仕組みのものだ。それが人間用に改造され小型になり、土に埋め込んでも作動するようになったものが人間用ベアートラップだ。

 人間の足の骨も粉砕させるような威力があるそれが無数に置かれている村々。それを除去するのが懲罰部隊の仕事だ。除去するには実際にその地を歩くということだ。つまり巧妙に土に埋もれた人間用ベアートラップは、僕たちが足を挟まれて初めて除去できるというわけだ。

(ちょっと待て。それって、毎日が勝負ってことか? いつ死ぬかわからない罰ゲーム? そんなぁ・・・・・・酷すぎる・・・・・・)





 僕は今日も歩く。敵国はかなり無差別にいろいろな場所に人間用ベアートラップを埋め込んだ。50人いた懲罰部隊は毎日確実に怪我をしていき、死んでいく。片足を失っても杖をついて歩けるのなら、さらに進まなければならない。両足を失っても、杖で身体を支えて動けるのならまだ進む。

 もうどうにも前に進めなくなった場所が死に場所だ。ここで死んでも、埋葬されることもなく墓もない。野ざらしの死体が広がった光景。ここは地獄だ。

 恐怖に震えながら一歩足を踏み出す。

ーーガッシャン!!ーー


 金属の擦り合わさる音とともに右足に激痛が走り一瞬で骨が砕ける。右足からは血が流れ出し、止血のために包帯をきつく巻かれて、それでも片足で杖をついて歩かされた。

 這ってでも死の行進は続く。気の遠くなる痛さは長時間続き、願うことはただひとつ。ひと思いに殺してくれ!!






 この時やっと、国王陛下の言葉がわかる。「斬首刑でなくてもいいのか?」との言葉。一瞬で首を刎ねられた方がきっと楽な死に方だったのだろう。




 死の瞬間が近づいた時に思い浮かんだ顔は、なぜかベンジャミン・ジュードの顔だった。

 生まれつきの才能を持ち、国王陛下の甥に生まれるという強運の持ち主。神様は不公平だ。なんの努力もしないのに幸せになれるベンジャミンみたいな奴がいる! 

 ちっくしょう! あぁ、でもあいつはジョージアを妻にするんだって言っていたっけ。僕が捨てた女を大事にするって・・・・・・あっははは・・・・・・お笑いだよ。あぁ、そこだけは愉快さ。


 僕のお古の女で満足するベンジャミンに勝てた・・・・・・あっは・・・・・・は・・・・・・はは・・・・・・

 最期まで激痛に長時間晒されながら僕は息絶えた。


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