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4 (マカロン侯爵夫人視点)
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ーーローリーが帰還した日、マカロン侯爵家のサロンにてーー
「母上、紹介しましょう! こちらが僕の最も愛する女性アンバーです。そして、これが息子のジャックですよ」
「まぁ! なんて嬉しいこと! でも、生きていたなんてびっくりだわ。その女性とはどうやって知り合ったのかしら」
「あたしは看護の仕事をしていたアンバー。怪我人や病人の手当をしている時にローリーに見初められたわ。あなたがローリーの母親なんだぁ。 ふぅん、どこから見ても意地悪婆さんね!」
いきなりの失礼な挨拶に、私は自分の耳が信じられない。
「今、なんとおっしゃったのかしら? 私はマカロン侯爵夫人ですよ。無礼な口をきくのは許しませんよ! だいたい、あなたは貴族の娘じゃないわよね? ローリー、こんな女は嫁としては失格です! 私は認めませんよ」
「母上の許しは要りません。僕が戻って来たからには、ここの当主はこの僕だ。今までこのマカロン侯爵家を守っていただいてご苦労様でした。母上のすることはもうないです」
「えぇ? 何を言うの? ずっとローリーのお父様亡き後、あなたが継ぐまで一生懸命マカロン侯爵家の管理をしてきたのはこの私ですよ」
「えぇ、だから、もういいと言っているのです。しつこいです」
「そうよ。このマカロン侯爵家のことはあたしが仕切るわ。お婆さんは黙っててよ」
(嘘だ。こんな無礼な女が嫁になるの?)
「それで早速だけどさ、あたしの部屋はどこかな? 全部見て回っていい? 一番いい部屋があたしのものでいいでしょう? ローリー!」
「もちろんだよ。アンバーの好きな部屋を選べばいい」
「うふふ。ありがと!」
弾む足取りで私の屋敷を隅から隅まで歩き回る無神経な女。これがマカロン侯爵家の嫁なの?
「ローリー。角部屋が気に入ったわ。一番日当たりがいいし家具が豪華で素敵。ただカーテンと絨毯が地味よね。もっと明るい色に変えたいわ」
「あぁ、あそこは母上の部屋だ。でも今日からアンバーの部屋だな。いいよね? 母上! だって彼女は僕の命の恩人なんだ」
「まさか・・・・・・あそこは当主夫人の部屋ですよ! 一番良い部屋なんだ。ずっとこの私が住んでいて・・・・・・」
「そう当主夫人の部屋ですね。ということはアンバーの部屋でしょう? だって僕が当主なんだから。今この瞬間からね」
ローリーが無事、帰還したら当主代行を降りて、正式にローリーが当主になることは決まっていた。けれどこんな女の思い通りになるのは嫌だ。
「アンバーとやら! すぐに出ておいき! ここはお前のような卑しい女がいる場所じゃないよ。その孫だけ置いてさっさと消えるんだ。嫁とは絶対認めないよ」
「あっはははは。お婆さんの許可はいらないわよ。だってローリーの子供の母親はあたしで、あんたの言葉にはもうなんの強制力もないんだ。どいてよ、邪魔!」
乱暴に突き飛ばされ、私はその場に転ぶ。足首をねじったのか、起き上がることが出来ない。
「ローリー!私の可愛い息子。助けておくれ。この悪魔のような女を追い出して! なぜ私の言うことを聞かないのよ? いつもローリーは聞き分けが良かったでしょう?」
「あぁ、うざいったら!! もうローリーはあんたの言いなりにはならないわ。いい加減、息子から卒業しなよ。息子は結婚したら嫁のものなのよ。あんたがこれからはローリーの言うことを聞く番よ。あたしの言うこともね、わかった?」
その女は私を睨み付けてローリに抱きついた。息子はその女の髪を大事そうに撫でて、こちらには見向きもしない。
侍女達は見て見ぬふりをし、メイド達はそそくさと奥に引っ込む。長年仕えてきた執事だけが私にこう言った。
「あの心優しいジョージア様の代わりに、奥様に相応しい若奥様がいらっしゃってなによりですね」と。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
※ショートショートから短編に変更しました。5話ではちょっと終われないかんじに。すみません。ごめんなさい。
「母上、紹介しましょう! こちらが僕の最も愛する女性アンバーです。そして、これが息子のジャックですよ」
「まぁ! なんて嬉しいこと! でも、生きていたなんてびっくりだわ。その女性とはどうやって知り合ったのかしら」
「あたしは看護の仕事をしていたアンバー。怪我人や病人の手当をしている時にローリーに見初められたわ。あなたがローリーの母親なんだぁ。 ふぅん、どこから見ても意地悪婆さんね!」
いきなりの失礼な挨拶に、私は自分の耳が信じられない。
「今、なんとおっしゃったのかしら? 私はマカロン侯爵夫人ですよ。無礼な口をきくのは許しませんよ! だいたい、あなたは貴族の娘じゃないわよね? ローリー、こんな女は嫁としては失格です! 私は認めませんよ」
「母上の許しは要りません。僕が戻って来たからには、ここの当主はこの僕だ。今までこのマカロン侯爵家を守っていただいてご苦労様でした。母上のすることはもうないです」
「えぇ? 何を言うの? ずっとローリーのお父様亡き後、あなたが継ぐまで一生懸命マカロン侯爵家の管理をしてきたのはこの私ですよ」
「えぇ、だから、もういいと言っているのです。しつこいです」
「そうよ。このマカロン侯爵家のことはあたしが仕切るわ。お婆さんは黙っててよ」
(嘘だ。こんな無礼な女が嫁になるの?)
「それで早速だけどさ、あたしの部屋はどこかな? 全部見て回っていい? 一番いい部屋があたしのものでいいでしょう? ローリー!」
「もちろんだよ。アンバーの好きな部屋を選べばいい」
「うふふ。ありがと!」
弾む足取りで私の屋敷を隅から隅まで歩き回る無神経な女。これがマカロン侯爵家の嫁なの?
「ローリー。角部屋が気に入ったわ。一番日当たりがいいし家具が豪華で素敵。ただカーテンと絨毯が地味よね。もっと明るい色に変えたいわ」
「あぁ、あそこは母上の部屋だ。でも今日からアンバーの部屋だな。いいよね? 母上! だって彼女は僕の命の恩人なんだ」
「まさか・・・・・・あそこは当主夫人の部屋ですよ! 一番良い部屋なんだ。ずっとこの私が住んでいて・・・・・・」
「そう当主夫人の部屋ですね。ということはアンバーの部屋でしょう? だって僕が当主なんだから。今この瞬間からね」
ローリーが無事、帰還したら当主代行を降りて、正式にローリーが当主になることは決まっていた。けれどこんな女の思い通りになるのは嫌だ。
「アンバーとやら! すぐに出ておいき! ここはお前のような卑しい女がいる場所じゃないよ。その孫だけ置いてさっさと消えるんだ。嫁とは絶対認めないよ」
「あっはははは。お婆さんの許可はいらないわよ。だってローリーの子供の母親はあたしで、あんたの言葉にはもうなんの強制力もないんだ。どいてよ、邪魔!」
乱暴に突き飛ばされ、私はその場に転ぶ。足首をねじったのか、起き上がることが出来ない。
「ローリー!私の可愛い息子。助けておくれ。この悪魔のような女を追い出して! なぜ私の言うことを聞かないのよ? いつもローリーは聞き分けが良かったでしょう?」
「あぁ、うざいったら!! もうローリーはあんたの言いなりにはならないわ。いい加減、息子から卒業しなよ。息子は結婚したら嫁のものなのよ。あんたがこれからはローリーの言うことを聞く番よ。あたしの言うこともね、わかった?」
その女は私を睨み付けてローリに抱きついた。息子はその女の髪を大事そうに撫でて、こちらには見向きもしない。
侍女達は見て見ぬふりをし、メイド達はそそくさと奥に引っ込む。長年仕えてきた執事だけが私にこう言った。
「あの心優しいジョージア様の代わりに、奥様に相応しい若奥様がいらっしゃってなによりですね」と。
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