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10 やっぱり妊娠してなかった女(アナスタシア視点)

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「あ、そう言えばアランが、私を子供が産めないって蔑んだことを覚えているかしら? 私ね、あれから五カ所の病院に行って診察してもらったのよ。そしたらなんと私の身体は、子供が産める健康体と言われたわよ。ということは・・・・・・ねぇ、どういうことかわかるかしら?」
 ひととおり泣きわめいた哀れなアランに、私はさらに追い討ちをかけた。

「え? そんなわけはないよ。だって、僕が欠陥品なわけがないもの! げんにここに僕が妊娠させた女性もいるし」

「欠陥品なんて、そんな言葉はやめろ! お前の脳が1番欠陥品だぞぉ!」
 見物していた紳士の一人が怒声を上げた。

ーーその通り!

「あら、残念! その女のいい人ってアランだけじゃなかったみたい。ツバメになっていた男達のみぃーんなの子供って可能性があるわよ。面白いわね?」
 私の言葉に3人の男達が、王家の騎士達に引っ立てられて来た。

「ひっ! なんでとっ捕まっているのよ! このトンマ」
 アランよりずっと若くてイケメンな男達がばつの悪そうな顔をして現れると、その後ろには若くてかわいいキュートな女達がやっぱり3人いて、私はまたもや爆笑していた。

「誰よ? その女達は? あんた達は私があげたお金で暮しているんでしょう! いわば、飼い猫じゃない! なにやってんのよ!」

「ちょっと! 猫ちゃんを侮辱するのをやめてもらっていいかしら? 猫ちゃんをこんなツバメ男達と一緒にしないでっ!」

 大の猫好きなキティーナ公爵夫人が、怒りに目をつり上げた。その迫力にたじろぐ女に、その場の貴婦人達がどっと笑った。

「この男達はそれぞれ女性連れで高級ホテルで飲み食いし、『エルサのスタッフだからツケにしておいてくれ』と言いお金を払わないで帰ろうとしたので連行しました」
 騎士達が国王陛下に淡々と報告した。

「なんですってぇーー! ちょっとこの泥棒猫! なにやってくれてるのよ!」
 女はそのキュートな若い子に掴みかかって取っ組み合いを始めた。

「なによ! おばさん! 私達のほうが若さがあるもの! しようがないじゃない」

「なんですって! あんた達なんか若さだけのくせに!」


「さぁ、さぁ、もういい加減やめなさい! みっともない。そろそろこのイーサ伯爵夫妻の処分を決めようかな。まず騙された被害者とエルサブランドに損害賠償をし、詐欺罪で数年は地下牢の住人だな」

「賠償金を払うお金はないです」
 アランとその女は膝から崩れ落ちた。

ーー確かにあれだけお金をだまし取っても、男を囲いカジノで遊びまわっていればあっという間になくなるわ。

「お金がないならその身体で作るしかなかろう。と言っても妊婦が罪人だと困るなぁ。出産してから過酷な鉱山労働でもしてもらおうかのう。妊婦でなければ、もっと楽な手段でお金が稼げたのに・・・・・・」
 国王陛下が残念そうにつぶやいた。

「わ、私、妊娠していませんっ!」
 その女はドレスをはしたなくもめくりあげると、お腹に巻き付けた浮き輪から空気をプシュっと押し出し始めた。

「あら、いいわねぇ。あんなふうにお腹の脂肪も空気みたいにプシュっと一押しできればいいのにねぇ~~」

 さきほどまでぷんぷん怒っていたキティーナ公爵夫人は、目を輝かせてその空気が抜け女のお腹がペッタンコになるサマをうっとりと見つめたのだった。




❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ


次回、最終話の予定です。



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