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5 (アナスタシア視点)/ (偽エルサ視点)/ (第三者視点)
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ꕤ୭*アナスタシア視点
キュルス侯爵夫妻は三男のウリエルに幼い頃から関心がなく、前キュルス侯爵夫妻に離れで育てられた彼は祖父母が亡くなった今もそこで暮していた。祖父母からその離れの屋敷を相続していたからだ。
前キュルス侯爵夫妻が住んでいたので、離れとは言っても本邸に引けを取らないくらい立派なお屋敷だった。
門番が私の顔を確認して通してくれたが、本邸の脇を通り過ぎる時に庭園で会いたくない男達に会った。
「やぁ。アナスタシア! またウリエルのところに行くのかい? 冴えないアナスタシアとオカマのウリエルが親友なんて傑作だよな。あいつ、まだドレスをミシンで縫ってるんだろう? 祖父母が甘やかし過ぎたんだ! 金にもならない趣味だけに没頭して一族の恥さらしだ」
嫡男のオリバーが私に向かって尊大に言い、次男のカーティスは薄ら笑いを浮かべていた。ウリエルは男色なんかじゃない。私と一緒にいても変な噂にならないように、わざとそんな振りをしているだけなのだ。ウリエルは私を守るためなら自分の評判が落ちることも厭わない。
ウリエルは長身ですらりとした女性のような優美な顔立ちをしている。綺麗なドレスや可愛いものが大好きで、花と動物を愛する心優しい男性なんだから! もちろん、女装趣味もないし男性が好きなわけではない。
エルサの正体を知らないこのムカつく兄弟にも、そろそろ本当のことを言ってやりたい気分だわ!
ꕤ୭*(偽エルサ視点)
「アラン。この前の1000万ルピアの利息の500万ルピアを今、渡すわね。ところで、私の新しく始める事業に投資しない? 5倍になるとは言わないけれど1億預けてくれれば倍にして返してあげるわ」
「えぇ? たった数日で500万ルピアの利息をくれるのかい? すごいなぁ。ありがとう! 父も母も親戚も参加させてもらっていいかな? エルサがやる投資話なら儲かることは間違いないもんね? 1億と言わず3億ぐらい投資するよぉ」
ふっ。単純な男で笑っちゃう。500万ルピアを利息で受け取ったつもりで喜んでいるけれど、トータルで自分が今いくら私にお金を取られているのかわかっていない。木だけを見て森を見ない。こういうおバカさんは大好きよ!
ꕤ୭*(第三者視点)
その10日後、国王陛下立ち会いの離婚の申し立ての日。この世界では貴族同士の離婚は国王陛下の立ち会いのもと、厳格に行われる
「さて、アラン・イーサ伯爵の言い分を述べよ」
「はい、アナスタシアは3年も経つのに子供も産めず、家のことは放りっぱなしでティーカップのデザインばかりしています。お茶会や夜会三昧で夫の私は放りっぱなしです! もう我慢の限界です! 慰謝料も払いますから離婚させてください。そしてこのエルサと結婚します」
「おかしいなぁ。むちゃくちゃな言い分な気がするぞ! アナスタシアのデザインするティーカップの収益のお陰でイーサ伯爵家が潤っているはず。お茶会や夜会はその販路を広げる為だろう? ・・・・・・新しい女ができたから今まで尽くしてきた夫人を捨てたいだけに聞こえる。アナスタシア、反論はあるかな?」
「異議はありません。こどもの産めぬ身ですから、喜んでその女性に妻の座を譲りますわ。慰謝料はきっちり請求しますけれど、お二人の幸せを心から願っていますわ」
「やった! ありがとう。慰謝料は一括で払うよ。もうすぐ大金が入ってくる予定もあるし」
アランは満面の笑みで微笑んだのだったが、それ以上に嬉しそうな顔をアナスタシアがしていたことには少しも気がつかなかった。
キュルス侯爵夫妻は三男のウリエルに幼い頃から関心がなく、前キュルス侯爵夫妻に離れで育てられた彼は祖父母が亡くなった今もそこで暮していた。祖父母からその離れの屋敷を相続していたからだ。
前キュルス侯爵夫妻が住んでいたので、離れとは言っても本邸に引けを取らないくらい立派なお屋敷だった。
門番が私の顔を確認して通してくれたが、本邸の脇を通り過ぎる時に庭園で会いたくない男達に会った。
「やぁ。アナスタシア! またウリエルのところに行くのかい? 冴えないアナスタシアとオカマのウリエルが親友なんて傑作だよな。あいつ、まだドレスをミシンで縫ってるんだろう? 祖父母が甘やかし過ぎたんだ! 金にもならない趣味だけに没頭して一族の恥さらしだ」
嫡男のオリバーが私に向かって尊大に言い、次男のカーティスは薄ら笑いを浮かべていた。ウリエルは男色なんかじゃない。私と一緒にいても変な噂にならないように、わざとそんな振りをしているだけなのだ。ウリエルは私を守るためなら自分の評判が落ちることも厭わない。
ウリエルは長身ですらりとした女性のような優美な顔立ちをしている。綺麗なドレスや可愛いものが大好きで、花と動物を愛する心優しい男性なんだから! もちろん、女装趣味もないし男性が好きなわけではない。
エルサの正体を知らないこのムカつく兄弟にも、そろそろ本当のことを言ってやりたい気分だわ!
ꕤ୭*(偽エルサ視点)
「アラン。この前の1000万ルピアの利息の500万ルピアを今、渡すわね。ところで、私の新しく始める事業に投資しない? 5倍になるとは言わないけれど1億預けてくれれば倍にして返してあげるわ」
「えぇ? たった数日で500万ルピアの利息をくれるのかい? すごいなぁ。ありがとう! 父も母も親戚も参加させてもらっていいかな? エルサがやる投資話なら儲かることは間違いないもんね? 1億と言わず3億ぐらい投資するよぉ」
ふっ。単純な男で笑っちゃう。500万ルピアを利息で受け取ったつもりで喜んでいるけれど、トータルで自分が今いくら私にお金を取られているのかわかっていない。木だけを見て森を見ない。こういうおバカさんは大好きよ!
ꕤ୭*(第三者視点)
その10日後、国王陛下立ち会いの離婚の申し立ての日。この世界では貴族同士の離婚は国王陛下の立ち会いのもと、厳格に行われる
「さて、アラン・イーサ伯爵の言い分を述べよ」
「はい、アナスタシアは3年も経つのに子供も産めず、家のことは放りっぱなしでティーカップのデザインばかりしています。お茶会や夜会三昧で夫の私は放りっぱなしです! もう我慢の限界です! 慰謝料も払いますから離婚させてください。そしてこのエルサと結婚します」
「おかしいなぁ。むちゃくちゃな言い分な気がするぞ! アナスタシアのデザインするティーカップの収益のお陰でイーサ伯爵家が潤っているはず。お茶会や夜会はその販路を広げる為だろう? ・・・・・・新しい女ができたから今まで尽くしてきた夫人を捨てたいだけに聞こえる。アナスタシア、反論はあるかな?」
「異議はありません。こどもの産めぬ身ですから、喜んでその女性に妻の座を譲りますわ。慰謝料はきっちり請求しますけれど、お二人の幸せを心から願っていますわ」
「やった! ありがとう。慰謝料は一括で払うよ。もうすぐ大金が入ってくる予定もあるし」
アランは満面の笑みで微笑んだのだったが、それ以上に嬉しそうな顔をアナスタシアがしていたことには少しも気がつかなかった。
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