上 下
1 / 13

1 壊れた結婚生活

しおりを挟む
 私とアランは結婚3年目。子供はなかなかできないが、今までの彼はそんなことは気にしないと言ってくれていた。

「僕とアナスタシアが愛し合っていれば、子供ができなくても幸せに暮らせるよ。養子をとる方法だってあるしね」

 そんなふうに気遣ってくれる夫に感謝し、私は伯爵夫人としての勤めを立派にこなそうと、社交界でのお付き合いも夫人同士のお茶会にも積極的に参加していた。

 イーサ伯爵家の領地では陶器作りが盛んで、特にその優美なティーカップ&ソーサーは、抜群の人気を誇っていた。この人気のティーカップ&ソーサーは、ここに嫁いできてから全て私がデザインしたものだった。

 王都の屋敷で暮す私のイーサ伯爵夫人としての役割はこのティーカップ&ソーサーのお披露目と売り込み。希望があれば特注でその方だけのティーカップもデザインする。それはとても高値で取引され、イーサ伯爵家の重要な収入源にもなっていた。


 ところが最近のアランは私に、
「イーサ伯爵夫人とし全く役立たずだよね? 子供ができないのはなぜなんだ! 爵位を継ぐ子供を産むことこそが女の役目なのに!」
 そんな言葉を投げつけてくるようになったのだ。

「役立たず? 私がデザインしたものがどれぐらいの収益をあげているのかわかっている?」

「あぁ、最近のそういう得意気な様子もうんざりだよ」

 王宮内での役職にも就いているアランは月の半分は王都にいるが、王宮に出仕する必要がない日は領地の屋敷にいることが多くなった。そこには前伯爵夫妻が住んでいる。つまり私の義両親のことだ。

 


 感謝祭は家族や親戚が集まってご馳走を食べて祝う日だが、今まではイーサ伯爵家の領地で義両親や夫側の親戚達が集まり祝っていた。

「今回はアナスタシアは領地に戻らなくて良いよ。僕一人でいつものように帰るから。来なくていい!」

「えっ! どうして?」

「さぁ、どうしてだろうなぁ? 自分の胸に手をあてて考えてみろよ。僕のアナスタシアに対する思いやりだよ。なかなか子供が産まれないだろう? 行けば俺の両親や親戚に孫の顔をまだ見せられない不甲斐ない嫁って責められるよね? そんなの嫌だろう?」

 なぜ最近になってやたらに子供ができないことを責めだすのか? なぜ、そんなにも領地の屋敷に行かせたがらないのか?

 私は真相が知りたくて夫には黙って感謝祭当日に、領地に戻ることにした。領地の屋敷に戻ると華やかにかざりつけられた庭園には大きなテーブルがいくつも並び、感謝祭のご馳走が所狭しと並べられていた。

 夫側の親戚一同が楽しげにおしゃべりをしている中央に、お腹の大きな妊婦がこの屋敷の女主人のように振る舞い幸せそうな微笑みを浮かべていたのだった。

ーーあれは・・・・・・だれ?

しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる

青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。 ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。 Hotランキング21位(10/28 60,362pt  12:18時点)

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです

よどら文鳥
恋愛
 貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。  どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。  ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。  旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。  現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。  貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。  それすら理解せずに堂々と……。  仕方がありません。  旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。  ただし、平和的に叶えられるかは別です。  政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?  ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。  折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

婚約者と妹に毒を盛られて殺されましたが、お忘れですか?精霊の申し子である私の身に何か起これば無事に生き残れるわけないので、ざまぁないですね。

無名 -ムメイ-
恋愛
リハビリがてら書きます。 1話で完結します。 注意:低クオリティです。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

処理中です...