(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・

青空一夏

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5 マージ視点

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(マージ視点)

 私はマージ・ドゥイルイット。ドゥイルイット伯爵家の次女で、お姉様はとても綺麗で優秀だ。お兄様もそうよ。私だけが平凡で両親から見向きもされない。でも、とても趣味が合うリネータと出会ってからは、毎日がちょっとだけ楽しく感じた。

 リネータは引っ込み思案で、自分に自信が持てない子だ。両親から溺愛されていて、甘い物が大好きなどこにでもいる女の子。かなりぽっちゃり体型だけれど、リネータのお母様エヴァーツ伯爵夫人は、艶やかな黒髪の可愛らしい雰囲気を持った美人だ。よく見れば、リネータはエヴァーツ伯爵夫人そっくり。痩せたらとても可愛い子になることは予想できた。

 でも、それは私の欲するところではない。リネータはオドオドしたぽっちゃりし過ぎた子で、私がその冴えない親友の面倒を見てあげている、そのような関係が私の理想なのよ。彼女がとても可愛く美人になったら、私よりもずっと男の子にモテてきっと自信をつける。その結果、私は親友から置いて行かれてしまうと思った。

(リネータには今のまま、男の子から敬遠され女の子達からは陰で笑われる子でいてほしい)








「ちょっとダイエットしたほうがいいのかしら? 私、太りすぎな気がしますわ」
 ある日、そんなことをリネータが言い出した。

(まさか、自分が本当はとても可愛い、と気づいたのかしら? やめてよ。あなたはずっと私の引き立て役でいなさいよっ)

「え? なんで? リネータは今のままが一番可愛いと思うわ」

 だから私はそう言ってとめる。

(ダイエットなんてさせるものですかっ!)

 案の定、意志の弱いリネータはすぐにダイエットをやめてしまう。

 けれど、リネータはカルヴァン・ジャルレ侯爵令息に恋をしてしまった。彼はとても綺麗な男の子で、ジャルレ侯爵家の長男だからいずれ爵位を継ぐはず。性格も良くて友人も多い、憧れる女の子もかなりいる方よ。

(ずいぶんと高嶺の花に目をつけたのね。そんな身体のままじゃ絶対相手にされないわよ。でも、ダイエットしたら話は別。きっとかなり可愛くなるから、なんとしても痩せさせたくないわ)

 私はできるだけそのダイエットを阻止するべく行動してみたけれど、リネータの恋心の方が強くて見事に標準体型よりほんの少し少なめな華奢な身体を手に入れたリネータ。

「驚いたなぁーー。リネータ様はあんなに可愛かったのだね。大きな瞳は黒曜石のようだし、あのふっくらした唇も愛らしい。ずいぶん綺麗になったなぁ」
 男の子達が学園内のあちらこちらで噂しているのを聞いた。

「リネータ様ってあんなに可愛かったのね。今度ランチをご一緒しましょう、と誘ってみようかしら?」
 綺麗な女の子達がそう言っているのを知っている。

(リネータは私だけの友人なのに・・・・・・あの子はこれから人気者になって、私から去って行ってしまうわ)

 そう思うと耐えられなかった。しかもリネータはカルヴァン様とクリスマスパーティに行けると、喜びながら私に報告してきたわ。

 今までのクリスマスは私達二人で一緒に過ごしてきたのに。

(なんで綺麗になった途端裏切るの? リネータの恋を絶対邪魔してやるわ!)
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