5 / 8
リリィ・チェリー公爵令嬢(リリィ視点)
しおりを挟む
私はリリィ・チェリー公爵令嬢だ。
女性にしては背が高すぎて、ブラウンの髪と瞳はありふれていて特別に美しいわけではないありふれた少女だった。
でも、本が大好きで、難しい公式を覚えるのが楽しかった。
秀才ともてはやされて、同じような少年の婚約者になった。
それが、ジョシュアで、眼鏡を外すと驚くほど整った顔立ちは派手さには欠けてはいたが充分美しかった。
話題もあったし、一緒にいてすごく寛げたから、彼が将来の夫になることになんの不満もなかった。
ところが、ジョシュアはプラム伯爵家に父親のバーレー侯爵と行ったあたりから様子がおかしい。
マディソン・プラム伯爵令嬢に彼は間違いなく恋をしている。
なんてこと!!よりによって、貴族の子女のなかでも最高に美しい少女に恋をするなんて。
艶やかな銀髪にエメラルドの大きな瞳は、大輪の薔薇か、高価な大粒の宝石だ。
嫉妬に駆られてどうにかなりそうだったが、私は利口な女だから気がつかないふりをしていた。
舞踏会や夜会の至るところで、マディソンの美しい姿を意識しているジョシュアにイライラして、マディソンを見るとなんとマディソンもジョシュアをチラチラ気にしている。
(あら、両思いなのねぇ。そういうことか‥‥相思相愛だけれどお互い告白しあえない不器用な二人。ならば、私は絶対、この二人の邪魔をしてやるわ!マディソン・プラム伯爵令嬢なんて大嫌いなのよ。あんなに綺麗なのに絵の才能があって、天才画家なんて言われてる。学問の秀才の冴えない私と、天才画家ともてはやされる美貌のマディソンでは明らかにあちらが勝っている気がするわ。そんなの、しゃくだわ。絶対、マディソンは幸せにはしてやらないわ!!)
私は、とにかく、いつもジョシュアと一緒にいるようにしたし、ジョシュアにはいつもこう言っていた。
「マディソン・プラム伯爵令嬢はものすごく綺麗ね。私達とは違う世界の子だわ!デイビッド・ストロベン伯爵と同じ、派手な華やかな美しい世界の住人よ。あの二人は絶対愛し合っているわ」
ジョシュアはなにも言わないで黙って頷いていた。
その瞳の奥が傷ついて暗くなっていくのを見て意地悪な喜びで満たされた。
☆
ある日、第二王子がなにを思ったか私にプロポーズしてきた。
年上の教養のある女性が大好きだっていうから、素直に嬉しかった。
ジョシュアは好きだけど、あの男には私に対する愛はない。
ならば、この第二王子に愛されて暮らしたほうが私のためになる。
私は利口な女だから、迷わずジョシュアに婚約破棄をしたわ。
でもね、あろうことか、ジョシュアがマディソンと結婚したときは、びっくりして癪にさわったの!!
ジョシュアは私のものだわ、これからも、ずっと。
だから、ジョシュアにはマディソンに嫌われるように酷い男のふりをさせて、マディソンの前ではジョシュアにベタベタしてやった。
最高に美しい天才画家が悲しむ姿は見ていてすかっとした。
たかが、伯爵令嬢だったくせに。もてはやされすぎで、目障りだわ!
☆
ジョシュアの寝室から出てきたときにマディソンにでくわしたのは我ながらいいタイミングだったと思った。
私はジョシュアの留守中にジョシュアの寝室にちょうどピアスをわざとベッドの横に落としたのよ。
メイドが見つけてマディソンの耳にはいれば、楽しいわって思ったから。
本人が目の前にあらわれて、思わず喜びの声をあげそうになった。
あははー。あの子の傷ついた瞳ったら。
今夜はおいしいシャンパンが飲めそうだわ!!
あの二人は離婚して、傷ついたジョシュアは私が慰めて‥‥第二王子が夫でジョシュアが愛人!悪くないわ。私はなんて利口な女なの。
私はいずれ、この国の王族の一員になる。
マディソン、あーいうタイプは大嫌いよ!
機会さえあれば、何度だって泣かせてやるわ。
女性にしては背が高すぎて、ブラウンの髪と瞳はありふれていて特別に美しいわけではないありふれた少女だった。
でも、本が大好きで、難しい公式を覚えるのが楽しかった。
秀才ともてはやされて、同じような少年の婚約者になった。
それが、ジョシュアで、眼鏡を外すと驚くほど整った顔立ちは派手さには欠けてはいたが充分美しかった。
話題もあったし、一緒にいてすごく寛げたから、彼が将来の夫になることになんの不満もなかった。
ところが、ジョシュアはプラム伯爵家に父親のバーレー侯爵と行ったあたりから様子がおかしい。
マディソン・プラム伯爵令嬢に彼は間違いなく恋をしている。
なんてこと!!よりによって、貴族の子女のなかでも最高に美しい少女に恋をするなんて。
艶やかな銀髪にエメラルドの大きな瞳は、大輪の薔薇か、高価な大粒の宝石だ。
嫉妬に駆られてどうにかなりそうだったが、私は利口な女だから気がつかないふりをしていた。
舞踏会や夜会の至るところで、マディソンの美しい姿を意識しているジョシュアにイライラして、マディソンを見るとなんとマディソンもジョシュアをチラチラ気にしている。
(あら、両思いなのねぇ。そういうことか‥‥相思相愛だけれどお互い告白しあえない不器用な二人。ならば、私は絶対、この二人の邪魔をしてやるわ!マディソン・プラム伯爵令嬢なんて大嫌いなのよ。あんなに綺麗なのに絵の才能があって、天才画家なんて言われてる。学問の秀才の冴えない私と、天才画家ともてはやされる美貌のマディソンでは明らかにあちらが勝っている気がするわ。そんなの、しゃくだわ。絶対、マディソンは幸せにはしてやらないわ!!)
私は、とにかく、いつもジョシュアと一緒にいるようにしたし、ジョシュアにはいつもこう言っていた。
「マディソン・プラム伯爵令嬢はものすごく綺麗ね。私達とは違う世界の子だわ!デイビッド・ストロベン伯爵と同じ、派手な華やかな美しい世界の住人よ。あの二人は絶対愛し合っているわ」
ジョシュアはなにも言わないで黙って頷いていた。
その瞳の奥が傷ついて暗くなっていくのを見て意地悪な喜びで満たされた。
☆
ある日、第二王子がなにを思ったか私にプロポーズしてきた。
年上の教養のある女性が大好きだっていうから、素直に嬉しかった。
ジョシュアは好きだけど、あの男には私に対する愛はない。
ならば、この第二王子に愛されて暮らしたほうが私のためになる。
私は利口な女だから、迷わずジョシュアに婚約破棄をしたわ。
でもね、あろうことか、ジョシュアがマディソンと結婚したときは、びっくりして癪にさわったの!!
ジョシュアは私のものだわ、これからも、ずっと。
だから、ジョシュアにはマディソンに嫌われるように酷い男のふりをさせて、マディソンの前ではジョシュアにベタベタしてやった。
最高に美しい天才画家が悲しむ姿は見ていてすかっとした。
たかが、伯爵令嬢だったくせに。もてはやされすぎで、目障りだわ!
☆
ジョシュアの寝室から出てきたときにマディソンにでくわしたのは我ながらいいタイミングだったと思った。
私はジョシュアの留守中にジョシュアの寝室にちょうどピアスをわざとベッドの横に落としたのよ。
メイドが見つけてマディソンの耳にはいれば、楽しいわって思ったから。
本人が目の前にあらわれて、思わず喜びの声をあげそうになった。
あははー。あの子の傷ついた瞳ったら。
今夜はおいしいシャンパンが飲めそうだわ!!
あの二人は離婚して、傷ついたジョシュアは私が慰めて‥‥第二王子が夫でジョシュアが愛人!悪くないわ。私はなんて利口な女なの。
私はいずれ、この国の王族の一員になる。
マディソン、あーいうタイプは大嫌いよ!
機会さえあれば、何度だって泣かせてやるわ。
18
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?
ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。
アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。
15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。


誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる