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いっそ離婚したいマディソン
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「君はまたデイビッドと一緒なんだな」
冷たく私に投げかける言葉は氷のようだ。
「えぇ、いけませんか?」
私も負けずに氷点下の声をだす。
私達は、それっきり、お互い顔を背け、屋敷に戻っても口もきかないのだ。
☆
「ちょっと、チェリー公爵家に行ってくる」
今週はこれで四度目だ。
昼食をとると、夫はすぐに出かけていき、夕食前に、やっと帰ってくる。
(そんなに行きたければ行けばいいわ。そうよ、いっそ、チェリー公爵家で夕食も食べればいいわ。戻ってこなくてもいいのに‥‥)
私は涙が出そうになった。でも、ここで泣いたらあんまりみじめだから絶対、泣かないわ!
「私も明日はストロベン伯爵家に行きますわ。デイビッドの肖像画を頼まれているので‥‥しばらくは通うことになりますから」
「そうか」
たった一言、興味なさげに相槌を打つ夫。
私の結婚生活は灰色だわ。
こんなことが、ずっと続くなら離婚したい‥‥
☆
翌日、ストロベン伯爵家に行き、デイビッドを前にして、デイビッドの肖像画を描いていた。
「なぁ、マディソン、君はあいつと結婚してからずっと悲しそうだ。あいつはダメだ。離婚して僕と結婚しよう」
デイビッドは突然、私を切なそうな眼差しでそう言った。
「え?だって、私はジョシュアが好きなのよ?あなただって知っているでしょう?」
「なぜ、そんな幼い頃の思いでにしがみつくんだい?今が大事だとは思わないの?時間が経てば人間は変わる」
「だって、小さい頃から好きだったんだもの‥‥‥」
「そうか‥‥」
デイビッドは美しい顔を歪めて青空を落とし込んだようなサファイアの瞳が暗い色に染まった。
私は罪悪感でいっぱいになった。
彼が未だに婚約者がいないのは私を好きだからだと本当は気がついていた。
そして、私に好意を寄せている彼を都合良く利用して相談相手にしていた私はずるい女だ。
冷たく私に投げかける言葉は氷のようだ。
「えぇ、いけませんか?」
私も負けずに氷点下の声をだす。
私達は、それっきり、お互い顔を背け、屋敷に戻っても口もきかないのだ。
☆
「ちょっと、チェリー公爵家に行ってくる」
今週はこれで四度目だ。
昼食をとると、夫はすぐに出かけていき、夕食前に、やっと帰ってくる。
(そんなに行きたければ行けばいいわ。そうよ、いっそ、チェリー公爵家で夕食も食べればいいわ。戻ってこなくてもいいのに‥‥)
私は涙が出そうになった。でも、ここで泣いたらあんまりみじめだから絶対、泣かないわ!
「私も明日はストロベン伯爵家に行きますわ。デイビッドの肖像画を頼まれているので‥‥しばらくは通うことになりますから」
「そうか」
たった一言、興味なさげに相槌を打つ夫。
私の結婚生活は灰色だわ。
こんなことが、ずっと続くなら離婚したい‥‥
☆
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「なぁ、マディソン、君はあいつと結婚してからずっと悲しそうだ。あいつはダメだ。離婚して僕と結婚しよう」
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「え?だって、私はジョシュアが好きなのよ?あなただって知っているでしょう?」
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「だって、小さい頃から好きだったんだもの‥‥‥」
「そうか‥‥」
デイビッドは美しい顔を歪めて青空を落とし込んだようなサファイアの瞳が暗い色に染まった。
私は罪悪感でいっぱいになった。
彼が未だに婚約者がいないのは私を好きだからだと本当は気がついていた。
そして、私に好意を寄せている彼を都合良く利用して相談相手にしていた私はずるい女だ。
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