14 / 16
番外編
14 ウィローはどうなったの? 全年齢向け
しおりを挟む
「ウィロー! あのアイビーがあなたの地位を奪っていた悪い子なのよ。だから、思い知らせてあげていいの。だって、嘘つきの悪い子は懲らしめてわからせてあげるべきでしょう?」
お母様もアンナもそう言って私を抱きしめた。私はオスカー公爵家に来てからずっと公爵令嬢だと言われ続けていた。
だから、いつだって意地悪してアイビーが本気で死ねばいいと思った。
ところが修道院で教えられたことは全く違った。私は鍛冶屋の父と下女の母の間に生まれた公爵令嬢どころか貴族でもないという。
初めは信じられなかったけれど、シスター達が毎日私を諭して根気強く導いてくれた。しばらくすると、父だという男が月に一回訪ねてくれて話しをするようになった。
幼い頃の記憶はおぼろげではあったが、ひげのある男性のイメージは父だったのかと納得した。抱っこされて遊んでもらった記憶が蘇ると、自分が貴族でもなんでもないと理解できた。
それからは反省と後悔の日々だ。貴族でもない私が王族のアイビー様を虐めるなど、まさに万死に値する行為だと理解できた。
母親とアンナは処刑されたとも聞かされ、自分達の行いがどれだけ罪深いものであったかを改めて身に染みて恐ろしさに震えた。
毎朝早く起きて修道院の清掃をし、菜園で作物を育て牛の世話をし夕方には食事を協力しあってつくり、その後は寝る間際まで祈りを捧げる。
楽しみはない。この生活自体を楽しむ心がなければ生きてはいけない。だから祈りのなかにも楽しみを見いだそうとした。
祈れば祈るほど罪が一個一個はがれていくと思うようにしたり、祈りの言葉ひとつで地獄に墜ちたであろうお母様の苦痛が一瞬でも和らぐと想像もした。
ここの修道院は規律も厳しくなく優しい場所だ。シスター達は根気強く教えてくれるし暴力などはない。穏やかな規則正しい生活は私を生まれ変わらせてくれたと思う。
必要な学問もここで教えてもらい5年ほどが経った頃、素晴らしく美しい女の子が馬車から降り立ち私に話しかけた。
「ここでの暮らしはどうですか?」
「ここの生活は、地に足をつけて生きている喜びがあります。多くを望まず質素な当たり前の生活が私の生きる世界なのだと悟りました。」
「そう。ならば、私はあなたを許します」
それだけ言って眩しい笑顔で去っていった美少女は私と同じぐらいの年齢で・・・・・・5年前の自信のない痩せ細った身体のアイビー様と気がつくのにかなりの時間がかかった。
「アイビー王女殿下からお許しがでましたよ。ウィローは市井で生活できますよ。どうしますか?」
シスターの言葉に首を横に振った。私はお母様もアンナも処刑されたことを知っている。
「いいえ、ここで私は一生暮します。お母様とアンナの為にも安らかに眠るように祈りたいです」
身の程知らずなことを考えたお母様とアンナの愚かさが今ならわかる。そして、私の罪もきっと一生かけないと償えないと気がついたのだ。
それからたまにアイビー王女殿下がお菓子を差し入れに来てくださるようになった。感謝でいっぱいになって流す涙に甘いお菓子が、少しだけしょっぱい。
それからずっとこの修道院で暮している。今の私は神の教えを学び、アイビー王女殿下の配慮のもと、修道院の長となるべき資格をとる為に勉学に励む日々だ。
「ウィローのような過去をもった女性が修道院で更生して、立派にその長にもなれたということがとても大事なことなのよ! あなたのような立場の人間の指針になってちょうだい! 人は立ち直れるんだ、そして生まれ変われるんだということを証明してほしいの」
ありがたいお言葉に感謝しかない。今では国王陛下もすっかり許してくださった。これから、修道院もいろいろな改革をして一人でも多くの人間を救えるように頑張りたい!
ꕤ୭*国王陛下とオスカー公爵のお仕置き
「うっ、苦い!」
「げっ、まずっ」
「これさぁ、相当身体に良くないよね? 尋常じゃない苦さじゃん?」
「まぁ、そうは言ってもお母様がおっしゃったことですし・・・・・・飲むしかないのではないでしょうか?」
澄ました顔のアイビーが国王陛下とオスカー公爵に世界一苦いけれど健康にいいというお茶を飲ませていた。
「はぁーー仕方がないな。毎日、コップ1杯なら許容範囲か」
国王陛下がため息をつき、
「ですね」
と、オスカー公爵も相づちをうった。
かくして、この苦行はおよそ1年続けられた。
効能としては国王陛下は肌のキメが細かくなり、オスカー公爵は便秘が治ってよく眠れるようになったとか・・・・・・
お母様もアンナもそう言って私を抱きしめた。私はオスカー公爵家に来てからずっと公爵令嬢だと言われ続けていた。
だから、いつだって意地悪してアイビーが本気で死ねばいいと思った。
ところが修道院で教えられたことは全く違った。私は鍛冶屋の父と下女の母の間に生まれた公爵令嬢どころか貴族でもないという。
初めは信じられなかったけれど、シスター達が毎日私を諭して根気強く導いてくれた。しばらくすると、父だという男が月に一回訪ねてくれて話しをするようになった。
幼い頃の記憶はおぼろげではあったが、ひげのある男性のイメージは父だったのかと納得した。抱っこされて遊んでもらった記憶が蘇ると、自分が貴族でもなんでもないと理解できた。
それからは反省と後悔の日々だ。貴族でもない私が王族のアイビー様を虐めるなど、まさに万死に値する行為だと理解できた。
母親とアンナは処刑されたとも聞かされ、自分達の行いがどれだけ罪深いものであったかを改めて身に染みて恐ろしさに震えた。
毎朝早く起きて修道院の清掃をし、菜園で作物を育て牛の世話をし夕方には食事を協力しあってつくり、その後は寝る間際まで祈りを捧げる。
楽しみはない。この生活自体を楽しむ心がなければ生きてはいけない。だから祈りのなかにも楽しみを見いだそうとした。
祈れば祈るほど罪が一個一個はがれていくと思うようにしたり、祈りの言葉ひとつで地獄に墜ちたであろうお母様の苦痛が一瞬でも和らぐと想像もした。
ここの修道院は規律も厳しくなく優しい場所だ。シスター達は根気強く教えてくれるし暴力などはない。穏やかな規則正しい生活は私を生まれ変わらせてくれたと思う。
必要な学問もここで教えてもらい5年ほどが経った頃、素晴らしく美しい女の子が馬車から降り立ち私に話しかけた。
「ここでの暮らしはどうですか?」
「ここの生活は、地に足をつけて生きている喜びがあります。多くを望まず質素な当たり前の生活が私の生きる世界なのだと悟りました。」
「そう。ならば、私はあなたを許します」
それだけ言って眩しい笑顔で去っていった美少女は私と同じぐらいの年齢で・・・・・・5年前の自信のない痩せ細った身体のアイビー様と気がつくのにかなりの時間がかかった。
「アイビー王女殿下からお許しがでましたよ。ウィローは市井で生活できますよ。どうしますか?」
シスターの言葉に首を横に振った。私はお母様もアンナも処刑されたことを知っている。
「いいえ、ここで私は一生暮します。お母様とアンナの為にも安らかに眠るように祈りたいです」
身の程知らずなことを考えたお母様とアンナの愚かさが今ならわかる。そして、私の罪もきっと一生かけないと償えないと気がついたのだ。
それからたまにアイビー王女殿下がお菓子を差し入れに来てくださるようになった。感謝でいっぱいになって流す涙に甘いお菓子が、少しだけしょっぱい。
それからずっとこの修道院で暮している。今の私は神の教えを学び、アイビー王女殿下の配慮のもと、修道院の長となるべき資格をとる為に勉学に励む日々だ。
「ウィローのような過去をもった女性が修道院で更生して、立派にその長にもなれたということがとても大事なことなのよ! あなたのような立場の人間の指針になってちょうだい! 人は立ち直れるんだ、そして生まれ変われるんだということを証明してほしいの」
ありがたいお言葉に感謝しかない。今では国王陛下もすっかり許してくださった。これから、修道院もいろいろな改革をして一人でも多くの人間を救えるように頑張りたい!
ꕤ୭*国王陛下とオスカー公爵のお仕置き
「うっ、苦い!」
「げっ、まずっ」
「これさぁ、相当身体に良くないよね? 尋常じゃない苦さじゃん?」
「まぁ、そうは言ってもお母様がおっしゃったことですし・・・・・・飲むしかないのではないでしょうか?」
澄ました顔のアイビーが国王陛下とオスカー公爵に世界一苦いけれど健康にいいというお茶を飲ませていた。
「はぁーー仕方がないな。毎日、コップ1杯なら許容範囲か」
国王陛下がため息をつき、
「ですね」
と、オスカー公爵も相づちをうった。
かくして、この苦行はおよそ1年続けられた。
効能としては国王陛下は肌のキメが細かくなり、オスカー公爵は便秘が治ってよく眠れるようになったとか・・・・・・
8
お気に入りに追加
2,851
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
条件は飼い犬と一緒に嫁ぐこと
有木珠乃
恋愛
ダリヤ・ブベーニン伯爵令嬢は、姉のベリンダに虐げられる日々を送っていた。血の繋がらない、元平民のダリヤが父親に気に入られていたのが気に食わなかったからだ。その父親も、ベリンダによって、考えを変えてしまい、今では同じようにダリヤを虐げるように。
そんなある日、ベリンダの使いで宝石商へ荷物を受け取りに行くと、路地裏で蹲る大型犬を見つける。ダリヤは伯爵邸に連れて帰るのだが、ベリンダは大の犬嫌い。
さらに立場が悪くなるのだが、ダリヤはその犬を保護し、大事にする。けれど今度は婚姻で、犬と離れ離れにされそうになり……。
※この作品はベリーズカフェ、テラーノベルにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる