(完結)私は産まれてはいけなかったの?(お母様が助けるわ !)

青空一夏

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5 エドワード・エンジェル国王陛下視点 / 故イレーヌ・エンジェル王女殿下視点

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ꕤ୭*エドワード・エンジェル国王陛下視点

 私にはとても愛おしい妹がいた。恐ろしく暗記能力が高かったイレーヌ。・・・・・・気が強くてお転婆で曲がったことが大嫌いで学業成績は常にオールAだったな。

 あの怖いもの知らずなところと破天荒な性格は兄の私でさえ憧れた。父上は『この姫が男だったなら、世界は変わったかも』と笑った。

 中身に反して外見は美しく儚げで天使のようだった妹が亡くなって10年。お産ぐらいで亡くなるやわなイレーヌのはずがないのに、瓜二つな娘を産み落とすと息を引き取った。

 悲しみのあまり姪には半年ほど会う気になれなかった。どうしても最愛の妹を思い出してしまうからだ。








 


アイビー様は人見知りが激しい赤子のようです。私以外の者の顔をみると途端に泣きわめきます。もう少し落ち着いてからお越し下さいますようお願い申しあげます。

 姪が7ヶ月目に入る頃、公爵家への訪問を予定する書簡を送りつけた際の侍女長からの返事がそれだった。




1歳の誕生日にはかわいいポニー、積み木やら絵本を一緒に贈り、オスカー公爵家へ立ち寄ることも知らせたが。


 オモチャには少しも興味を示さないし、ちょうど高熱をだして会わせられないという手紙がきた。

 ただひたすら暗闇が好きで外に出たがらない、とも書いてある。



――そんなことがあるか? あのイレーヌの子供があり得ない。

医者に診せると言っても、もう診せたと言われ診断書まで送ってきた。





落ち着いた環境でしばらくアイビー様の好きに過ごされる方がよろしいでしょう。
お会いになるのはもう少し成長なされてからをお勧めします。


                  テレント・オイッケ医師





 それからというもの、誕生日ごとにプレゼントを贈ったが字が書ける年齢になっても本人からお礼の手紙すらこないのだった。




 お嬢様は男性が怖いようです。お父様であるオスカー公爵にも会いたがりません!
 私を母親のように慕っているのです。国王陛下にいくらお礼のお手紙を書くように申しあげても一向に書こうとしません。
 残念なことですが、アイビー様は少し障害をお持ちかもしれません。怠け者で、屋敷の外には一歩も出たがらないのです。

 くるのはこのようなアンナという侍女の愚痴めいた手紙ばかりだ。





 アンナには特別手当をやり、『なんでもアイビーに必要な物は買い与えよ』と記した文書を送った。



アイビー様はキラキラ光るものが好きです。宝石に囲まれていれば、いつだってご機嫌でお笑いになっています。




 そんな手紙はすぐに来るのだが、やはり姪からの手紙はない。もしかしたら、姪には迷惑がられているのかもしれない・・・・・・



 ところが7歳の頃から、急に不満の手紙だけはおくってくるようになった姪。贈ったドレスが気に入らないとか、宝石が小さすぎる等・・・・・・




国王さまへ

こんなこどもっぽいものは、きたくないです! もっとはなやかな色で、ほうせきがついていなきゃつまらないです! 国王さまのくせにケチなんですね。


 

 なんて失礼な手紙を書く子供なんだ! 字も汚いし、イレーヌに全然似ていないよ。とてもがっかりしたけれど、それでも大事な妹の娘だ。

 誕生日ごとにドレスやら子供には高価すぎる宝石なども贈ってやった。珍しい菓子があればそれも贈ったが、元気でいるのかの手紙には全く返事もなく。 






 もうアイビーも10歳。さぞかし、イレーヌに似て美しく育っていることだろうに・・・・・姪に会ったらがっかりしそうな予感がして、会いに行きたい気持ちが薄れていた。


 私と正妃の間には男の子が2人いるが姫はいない。正妃もイレーヌとは仲良しだったからアイビーにはとても会いたがっていたが・・・・・・こんな状況であれば会わない方がいいだろう。

 それでも10歳の誕生日にはなにかしら贈ろう、と考えていた矢先姪から手紙がきた。





お母様のお兄様へ

なぜ、私を思い出してくださらないのですか? 一度もお会いすることもなくお誕生日カードすらいただけず悲しかったです。

               アイビー・オスカーより




――は? なんだこれは? どういうことだ? 丁寧なとても綺麗な字で書かれたものは、今まで送られてきた手紙の筆跡と明らかに違う!


ーーしかも、この手紙の封筒の裏には私とイレーヌとの秘密の暗号が書かれているではないか!


 エドにぃに! 宝物殿のエメラルドを誰にあげたか思い出させてあげようか?





「おい、これからオスカー公爵邸へ行く。馬車の支度をしろ! 急げ!!」






ꕤ୭*イレーヌ・エンジェル王女殿下視点




エド兄様へ

あなたの親愛なる妹イヌですわ! こっ、こんの薄情者め! 私の娘は一度もお兄様に顧みられず会うこともなく、侍女達に虐められ自殺しようとしたことをお知らせしますわ。お兄様を見損ないました。

お兄様が昔、宝物殿にある大きなエメラルドを男爵令嬢にこっそりあげたのをお義姉様(正妃)に話しちゃうかも。



 私が書いたこの文面を見てまず止めたのがカイだった。
「王女殿下、これはまずい! いきなり恫喝! いけません!」

「あら? これでもずいぶん控え目よ?」

「イヌちゃん。これはまずいよ。国王陛下の言い分も聞かないと。陛下はアイビー様に会いたがっていたはずだよ」

「あぁ、犯人は想像できるわ。でもね、侍女の話を鵜呑みにするってどうなの? 自分の目でまず確かめに来るのが筋じゃなくて? 疑いなさいよ、王ならば! 人間は嘘をつく生き物なのよ?」

「あぁ、イヌちゃんだ。間違いないw。天使のような容姿で中身は超現実主義者。性悪説が持論だったもんなぁ」

「もちろんよ。でなきゃ、オスカー公爵家を立て直せてないわ。なんで、男ってこんなにチョロいのかしら? 侍女達に騙されるなんてあり得ない」


「とにかく、これはボツです。アイビー様ご本人に短い手紙だけ書いていただきましょう。国王陛下はそれだけで確かめに来るはずですよ」


 カイの言葉に従ったけれど、『エドにぃに』を少しでも虐めてやらないと気が済まない。封筒の裏にちょこっと悪戯書きして、王宮に持って行くように侍従に申しつけた。

 エドワード・エンジェル国王陛下から溺愛されていた私は、『にぃに』と呼ばされていたのよね。『エドにぃに』の文字を見れば、私だと気づくはず。

ーー早く来なさいよ! 事と次第によっては、その美麗な頬を一回は殴らせてもらうわ。
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