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8 幻惑の術が効かない?(クロエ視点)
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ハミルトン様と婚約解消をしてからの私は、もちろん素敵な男性を探していたわ。顔が綺麗で見栄えが良いだけの男性はいる。爵位が高いだけの男性もいるし、お金があるだけの男性もいるわ。けれど、この三つが全て揃っている男性は滅多にいない。
私はこれを男性の黄金三条件とよんでいるわ。どんな女性だってそれを望んでいるはずでしょう? だって、女性は結婚する男性によって、生活水準が決まるのよ?
お金は絶対必要だし、見栄えがいい方が一緒にいて楽しいわ。ほら、ライバルの女たちに勝ったって気になるでしょ? 爵位も当然いるわよね。だって、平民になるなんて嫌だもの。
私はなにもかも揃った最高の男性と、優雅に結婚生活をしたいのよ。多くの侍女達に傅かれて、女王様のように暮らしたい。
ランドン家は公爵の爵位はあっても、経済状況はあまり良くなかった。もう少し、お父様に商才のようなものがあれば良かったのに、ただ愚直に領地を治めるだけでは莫大なお金は入ってこないわ。
私はお父様とお兄様に幻惑の術をかけている。なぜなら、お父様は堅実すぎて思うようにお金を使わせてくれないし、お兄様のダニエルは真面目すぎた。幻惑の術をかけたら私の言うことをなんでも聞くようになって、とても生活しやすくなったわ。
素敵な男性を見つけたのは、ハミルトン様に婚約破棄をした直後だった。王家主催の夜会に着飾って出席したら、精悍な黒豹のような容姿を持つ男性を見つけたのよ。遠い異国の伯爵だというけれど、王族までその男性に気を遣っていたのが印象的だった。
多分、大富豪の伯爵様なのでしょうね。名前はアレクサンダー・マジーク様。私はアレクサンダー様の容姿も気に入ったわ。ハミルトン様は麗しいという言葉がぴったりだけれどこの男性は違う。威圧感をまとう一方で、その黒い瞳には知的で冷静な輝きが宿っていた。背もかなり高くて、引き締まった身体は日々鍛えていることを物語っていた。
「あの、あなたはマーク様じゃないかしら?ほら、この前の夜会で踊ったでしょう?」
私はさりげなくアレクサンダー様に近づいた。話しかけるきっかけがほしかっただけで、マークという知り合いなどいない。でも、私には幻惑の術という武器があるから、この先は簡単に事を運べるわ。
「我が願いを聞き届け、夢幻の力よ。アレクサンダー様に深い好意を抱かせん。」
言葉を慎重に選び、私は彼に向けて心の中でつぶやいた。
「俺にそんな子供だましは効かないぞ」
アレクサンダー様は苦笑いをしながら去って行った。今までこんなことはなかったのに不思議だった。上等な男性を逃したことがとても悔しい。それから、アレクサンダー様に会うことはなくて、仕方なくアンドリュー・プレイデン侯爵とつきあいはじめた。アンドリューは平凡な容姿だったけれど、プレイデン侯爵領にはダイヤモンド鉱山があった。
(でも、ありきたりの男性といても私の心は満足しない。他の女が嫉妬するぐらいの美貌の男性がほしい)
そう思いながら過ごしていたら、吉報が舞い込んできた。パリノ侯爵家の経済状況が好転したという噂を聞いたのよ。私はハミルトン様に、早速お手紙を書いた。
後から日にちを書くのを忘れたことに気づいたけれど、ハミルトン様が毎日その場所に来て、ずっと私を待っているのも悪くない。
私に恋い焦がれながらひたすら待っている美貌の男性がいるって最高だわ! ふっ、あーはっはっは!
私はこれを男性の黄金三条件とよんでいるわ。どんな女性だってそれを望んでいるはずでしょう? だって、女性は結婚する男性によって、生活水準が決まるのよ?
お金は絶対必要だし、見栄えがいい方が一緒にいて楽しいわ。ほら、ライバルの女たちに勝ったって気になるでしょ? 爵位も当然いるわよね。だって、平民になるなんて嫌だもの。
私はなにもかも揃った最高の男性と、優雅に結婚生活をしたいのよ。多くの侍女達に傅かれて、女王様のように暮らしたい。
ランドン家は公爵の爵位はあっても、経済状況はあまり良くなかった。もう少し、お父様に商才のようなものがあれば良かったのに、ただ愚直に領地を治めるだけでは莫大なお金は入ってこないわ。
私はお父様とお兄様に幻惑の術をかけている。なぜなら、お父様は堅実すぎて思うようにお金を使わせてくれないし、お兄様のダニエルは真面目すぎた。幻惑の術をかけたら私の言うことをなんでも聞くようになって、とても生活しやすくなったわ。
素敵な男性を見つけたのは、ハミルトン様に婚約破棄をした直後だった。王家主催の夜会に着飾って出席したら、精悍な黒豹のような容姿を持つ男性を見つけたのよ。遠い異国の伯爵だというけれど、王族までその男性に気を遣っていたのが印象的だった。
多分、大富豪の伯爵様なのでしょうね。名前はアレクサンダー・マジーク様。私はアレクサンダー様の容姿も気に入ったわ。ハミルトン様は麗しいという言葉がぴったりだけれどこの男性は違う。威圧感をまとう一方で、その黒い瞳には知的で冷静な輝きが宿っていた。背もかなり高くて、引き締まった身体は日々鍛えていることを物語っていた。
「あの、あなたはマーク様じゃないかしら?ほら、この前の夜会で踊ったでしょう?」
私はさりげなくアレクサンダー様に近づいた。話しかけるきっかけがほしかっただけで、マークという知り合いなどいない。でも、私には幻惑の術という武器があるから、この先は簡単に事を運べるわ。
「我が願いを聞き届け、夢幻の力よ。アレクサンダー様に深い好意を抱かせん。」
言葉を慎重に選び、私は彼に向けて心の中でつぶやいた。
「俺にそんな子供だましは効かないぞ」
アレクサンダー様は苦笑いをしながら去って行った。今までこんなことはなかったのに不思議だった。上等な男性を逃したことがとても悔しい。それから、アレクサンダー様に会うことはなくて、仕方なくアンドリュー・プレイデン侯爵とつきあいはじめた。アンドリューは平凡な容姿だったけれど、プレイデン侯爵領にはダイヤモンド鉱山があった。
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そう思いながら過ごしていたら、吉報が舞い込んできた。パリノ侯爵家の経済状況が好転したという噂を聞いたのよ。私はハミルトン様に、早速お手紙を書いた。
後から日にちを書くのを忘れたことに気づいたけれど、ハミルトン様が毎日その場所に来て、ずっと私を待っているのも悪くない。
私に恋い焦がれながらひたすら待っている美貌の男性がいるって最高だわ! ふっ、あーはっはっは!
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