(完結)「君を愛することはない」と言われました。夫に失恋した私は・・・・・・

青空一夏

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(ジュルダン視点)

 留学から戻って来たら弟の片足がなくなっていた。理由を聞けばあいつらしい愚かな理由だった。クレマンスは我が儘で傲慢なところがあったし、勉強も嫌いな怠け者だった。

「かえって片足がないことで絵画に没頭できて、あの子の為には良かったのかもしれないわ」
 母上の言葉にわたしも少なからずそう思う。もちろん足を失ったことは不幸な出来事だったけれど、真剣に絵を勉強するようになったのだから、悪いことばかりではない。

 やがて父上が離れに移り私が爵位を継ぎ、クレマンスは領地の田舎にアトリエを与えられた。そこはアトリエ兼住まいにもなっており、クレマンスが所帯をもっても充分な広さだった。

 クレマンスの描く絵は透明感があり、そこそこ絵も売れて画家として成功している。兄としては非常に嬉しくまた誇らしい思いだ。









 ある日、クレマンスが一人の女性を連れて来た。母上もマチルダも大歓迎しているから、てっきりクレマンスの恋人だと思い込んだ。

「いつもクレマンスがお世話になっていますね。弟とはいつからお付き合いをなさっているのですか?」

「違うわよ、この令嬢はジュルダンの結婚相手にと、クレマンスが連れて来たのよ。弟に心配されるなんて、早く身を固めないからよ。ラッパラン男爵家のご令嬢よ。病院にお勤めの看護婦さんですって」
 と母上。

「着飾って香水臭い女性が苦手なジュルダン様にぴったりではないでしょうか?」 
 マチルダもこれ以上ないくらいの良い笑顔で話す。

「マチルダも母上も彼女に失礼でしょう? 彼女にだって選ぶ権利がありますよ。すみませんね、正式なお見合いでもないのに」

「え? えぇ、大丈夫です。少し驚いただけです。私に来る釣書は介護が必要な老貴族しかいなかったので、結婚は諦めていたので」

 このような素敵な女性を老人と結婚させるなんて間違っている。サロンでおしゃべりして庭園を散歩し、彼女が帰る頃には次に会う日を決めていた。

 彼女の名前はアロイーズ。知れば知るほど尊敬できる好ましい女性だ。

「わたしの妻になっていただけませんか?」
 知り合って1年ほどでプロポーズした。

 クレマンスのお陰で最愛の妻を得て今はとても幸せだ。しかもクレマンスは年々有名な画家になっていく。最近では聖獣の絵描きとし注目を浴び尊敬も集めている。

 今度はわたしがあいつのパートナーを見つけてやらねばな、と思う。今のクレマンスなら片足がなくとも結婚したいと思う令嬢は多いだろう。

「マチルダ! クレマンスに良い相手を調べてくれないか? わたしのアロイーズと同じくらい素晴らしい女性でなくてはならない」

「はい、かしこまりました。庭園を坊ちゃま達の子供が走り回る姿を見たいですからね」
 マチルダが嬉しそうに笑った。




୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

次回、アロイーズ視点で最終回です。

 
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