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※ざまぁ回です。
(クレマンス視点)
僕の子供が次期伯爵・・・・・・これは何かの間違いだ。そんなことがあっていいはずないんだ。
「兄上、お願いします。考え直してください。おかしいでしょう? 僕を飛ばして子供に譲るなんて、あるべき状態ではありません」
「もちろん世間的には異常事態だよ。だが、そうさせたのはお前だ。お前は除籍するので、娼婦とどこへでも行くが良い」
「ちっくしょーー。僕を追い出してそのままで済むと思ったら大間違いだぞ。五体満足で正当な権利を持つ僕こそがドビュッシー伯爵になる権利があったんだ。なのに足の不自由な兄上が爵位を継いだ。これがそもそもの間違いだよ。絶対後悔させてやるから覚えてろ!」
「ばか者め。せめて子供の心配でもするのなら勘当しないでおこうと思ったのに。そのような捨て台詞を吐くなど、もうお前の性根は直らないようだ」
「くっ・・・・・・兄上のせいだ。なんでもできて父上達の自慢だった。でも僕だって兄上ほどではないが優秀だったはずだ。なのに・・・・・・」
「残念だな。お前が優秀だったことは一度もないよ。ただの幻想さ」
あんまりな暴言を吐く兄上を呪って僕は家を出た。もちろんただでは屋敷を去らない。本邸に忍び込み、家宝の人魚の涙といわれる真珠をくすねた。ついでにいくつかの宝石も懐に入れる。亡き母上の遺品だから、僕にだってもらう権利はあるよ。
しばらくは宝石を売った金で娼館に寝泊まりし楽しく遊んだ。それから人魚の涙を持って火山の麓まで行く。ここには宝石好きの大魔女が住んでいるのだ。この魔女は邪悪な力を使うと考えられていて、人間は滅多に近寄らない。だが、僕は追い詰められていたのでここに来た。
「大魔女様。お願いがあります。僕はドビュッシー伯爵家の次男クレマンスと申します。兄に不当に勘当され爵位を継ぐこともできなくなりました。本当なら僕が次の伯爵なのです。本来あるべき正しい状態に戻してください。五体満足な僕がドビュッシー伯爵に相応しい!」
「見返りはなんだい? ほぉ、真珠かい? これは立派な真珠だねぇ。これほどのものを頂けるのなら、どれ、あるべき状態に戻してあげよう。時よ、遡れ、我が水晶に真実を映し出せ。本来あるべき正しい状態に戻すのだ」
大魔女が呪文を唱えながらそう叫ぶと、僕の足が猛烈に痛み出した。見れば片足が噛みちぎられて、鮮血がほとばしっている。
「ど、どういうことだ? 僕の足が・・・・・・足がぁぁああ」
「あぁ、本来あるべき正しい状態に戻したのだ。幼い頃の聖獣の怒りはお前に向かったものだ。代わりに受け止めたのは兄のほうだが、それは間違っている。なので、五体満足な兄が爵位を継ぐ、これが本来あるべき正しい状態だ。さてと、私はしっかり仕事をしたさね。この真珠はもらっておくぞ。ほーほっほっほっほ」
魔女は高笑いをしながら、紫煙とともに消えていった。
「待て、待ってくれ。おかしいよ・・・・・・なんでだよ・・・・・・僕がなにをしたっていうんだ。お前に人魚の涙を持って来たのは僕なのに」
足から止めどなく流れる血につられて、火山の麓にオオカミ達が集まって来る。
「ひゃぁああーー」
腹を空かせたオオカミたちに囲まれ、僕は叫んだ。
「これがあるべき状態なのかよ? 酷いよ・・・・・・聖獣を子分にしたかっただけじゃないか・・・・・・」
なぜかこの言葉を言った途端に、周りのオオカミ達が僕に噛みつくのをやめて去っていく。
(助かったのか?)
そう思ったのも束の間、わたしの目の前にはあの聖獣がいて、ゆっくりと近づいて来るのだった。私が投げた石がつけた額の傷跡で、あの時のチビだと気づく。だが、今はオオカミの5倍ほどの大きさで鋭い牙と爪が迫ってきた。
(やばい、終わった・・・・・・ぎゃぁあああーー!)
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
次回、最終回です。→すみません。少し長い文章になったので次回3話に分けます。
(クレマンス視点)
僕の子供が次期伯爵・・・・・・これは何かの間違いだ。そんなことがあっていいはずないんだ。
「兄上、お願いします。考え直してください。おかしいでしょう? 僕を飛ばして子供に譲るなんて、あるべき状態ではありません」
「もちろん世間的には異常事態だよ。だが、そうさせたのはお前だ。お前は除籍するので、娼婦とどこへでも行くが良い」
「ちっくしょーー。僕を追い出してそのままで済むと思ったら大間違いだぞ。五体満足で正当な権利を持つ僕こそがドビュッシー伯爵になる権利があったんだ。なのに足の不自由な兄上が爵位を継いだ。これがそもそもの間違いだよ。絶対後悔させてやるから覚えてろ!」
「ばか者め。せめて子供の心配でもするのなら勘当しないでおこうと思ったのに。そのような捨て台詞を吐くなど、もうお前の性根は直らないようだ」
「くっ・・・・・・兄上のせいだ。なんでもできて父上達の自慢だった。でも僕だって兄上ほどではないが優秀だったはずだ。なのに・・・・・・」
「残念だな。お前が優秀だったことは一度もないよ。ただの幻想さ」
あんまりな暴言を吐く兄上を呪って僕は家を出た。もちろんただでは屋敷を去らない。本邸に忍び込み、家宝の人魚の涙といわれる真珠をくすねた。ついでにいくつかの宝石も懐に入れる。亡き母上の遺品だから、僕にだってもらう権利はあるよ。
しばらくは宝石を売った金で娼館に寝泊まりし楽しく遊んだ。それから人魚の涙を持って火山の麓まで行く。ここには宝石好きの大魔女が住んでいるのだ。この魔女は邪悪な力を使うと考えられていて、人間は滅多に近寄らない。だが、僕は追い詰められていたのでここに来た。
「大魔女様。お願いがあります。僕はドビュッシー伯爵家の次男クレマンスと申します。兄に不当に勘当され爵位を継ぐこともできなくなりました。本当なら僕が次の伯爵なのです。本来あるべき正しい状態に戻してください。五体満足な僕がドビュッシー伯爵に相応しい!」
「見返りはなんだい? ほぉ、真珠かい? これは立派な真珠だねぇ。これほどのものを頂けるのなら、どれ、あるべき状態に戻してあげよう。時よ、遡れ、我が水晶に真実を映し出せ。本来あるべき正しい状態に戻すのだ」
大魔女が呪文を唱えながらそう叫ぶと、僕の足が猛烈に痛み出した。見れば片足が噛みちぎられて、鮮血がほとばしっている。
「ど、どういうことだ? 僕の足が・・・・・・足がぁぁああ」
「あぁ、本来あるべき正しい状態に戻したのだ。幼い頃の聖獣の怒りはお前に向かったものだ。代わりに受け止めたのは兄のほうだが、それは間違っている。なので、五体満足な兄が爵位を継ぐ、これが本来あるべき正しい状態だ。さてと、私はしっかり仕事をしたさね。この真珠はもらっておくぞ。ほーほっほっほっほ」
魔女は高笑いをしながら、紫煙とともに消えていった。
「待て、待ってくれ。おかしいよ・・・・・・なんでだよ・・・・・・僕がなにをしたっていうんだ。お前に人魚の涙を持って来たのは僕なのに」
足から止めどなく流れる血につられて、火山の麓にオオカミ達が集まって来る。
「ひゃぁああーー」
腹を空かせたオオカミたちに囲まれ、僕は叫んだ。
「これがあるべき状態なのかよ? 酷いよ・・・・・・聖獣を子分にしたかっただけじゃないか・・・・・・」
なぜかこの言葉を言った途端に、周りのオオカミ達が僕に噛みつくのをやめて去っていく。
(助かったのか?)
そう思ったのも束の間、わたしの目の前にはあの聖獣がいて、ゆっくりと近づいて来るのだった。私が投げた石がつけた額の傷跡で、あの時のチビだと気づく。だが、今はオオカミの5倍ほどの大きさで鋭い牙と爪が迫ってきた。
(やばい、終わった・・・・・・ぎゃぁあああーー!)
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次回、最終回です。→すみません。少し長い文章になったので次回3話に分けます。
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