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裁判 その2 (マーガレット視点)

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 ジェームズの言葉にナサニエル様が反応した。

「そんな・・・・・・まさか。私だけの女神様じゃなかったのか・・・・・・」

 虚ろな目でミランダを見ていた。ミランダはジェームズの呼びかけに、図々しくも乗っかろうとしていた。

「そうです! 私とジェームズは「真実の愛」で結ばれています。ですから、ここは二人で話し合って責任をとりますから。裁判は終わりでいいんじゃないかしらぁ? 子供はジェームズには申し訳ないけれど、間違いなくベンジャミン・トマス公爵の子供ですよ。だからぁ、私は次期公爵の母君ということですよねぇ? 公爵家の者は、どんな罪を犯しても実刑にはならないはずでしょう? 自宅謹慎ぐらいよね?」

 ミランダは、言葉遣いも始めは丁寧だったけれど終いしまには、お友達口調になっており、この場には到底そぐわないことも気にもとめない。

「やれやれ。裁判長、発言の許可をお願いします。さてと、まずですね。ジェームズ・メディチ伯爵には残念ながら生殖機能に難ありでして、子をすことはできません!」


「はぁーー? なにをバカなことを言っているんだ! そんなはずがないだろう? ミランダと私は幼なじみで、昔から思い合っていた運命の恋人同士なのだ。ミランダは私としか、そういった行為はしていない。そうだろう? ミランダ?」

 ジェームズは、怒りで顔を赤くしてカトレーネ・トマス前公爵夫人の顧問弁護士を睨み付けた。すっかり、メイソンとクリストファーが自分の子供だと思い込んでいるようだ。

「メイソンとクリストファーは、私の子供だ! 間違いない! そうだろう? ミランダ? 貴女はそう私に何度も言ったじゃないか? だからこそ、マーガレットに面倒を見させたんだぞ! マーガレットは私の妻だから、私の子供を育てる義務がある。」

「も、もちろん、ジェームズの・・・・・・あぁ、メイソンはジェームズの子で、クリストファーはベンジャミン・トマス公爵の子供です。ごめんなさい、ジェームズ。私は公爵夫人なのよ? トマス公爵家の跡継ぎを産むのは私の務めなのよ。そうよ。私は、ちゃんと嫁としての務めを果たしたじゃない? なんの文句があるのよ?」

 ミランダは、薄笑いを浮かべてカトレーネ・トマス前公爵夫人の顧問弁護士を睨み付けている。

「文句? おおありですな。正式な鑑定書がここにあります。ベンジャミン・トマス公爵とあなたの二人のお子さんには血の繋がりは全くない。こちらは、メディチ伯爵の鑑定書で、メディチ伯爵はどんな女性も100パーセント妊娠させることは不可能だと記されています。最近は便利ですな? 唾液で簡単に調べられる。」


「ふふっ。はははぁーー。そんなのは嘘っぱちだぁーー。まさか、この私が種なしだと? そんなバカな! マーガレットが不妊症なだけで、私は正常なはずなんだ。この私に問題があるなんてあり得ないじゃないかぁーー」

 ジェームズは泣き笑いになり、鼻水を垂らしながら膝から崩れた。

「あぁ、因みに奥様のマーガレット様はお子様を産むことは可能です。おっと、間違えましたな。元、奥様ですね。メディチ伯爵とマーガレット様の離婚届は正式に受理されていますから」

「え? マーガレット? そうなのか? お前、私を裏切ったのか? お前みたいな冴えない女と私のような麗しい男が結婚してやったんだぞ? なんで、離婚するんだよ? お前は私を支えるためにいる女だ!」

「ばかばかしい戯言はいい加減にしろ! お前ごときを支えるだと? お前はミランダと一緒に地獄に落ちろ! ジェームズ、お前には横領の罪も加重されるからな! ろくでなしとは、お前のことだな」

ベンジャミン・トマス公爵がジェームズに吐き捨てるように言った。

「ちくしょうーー!! なんでだぁーー。なんでなんだよぉーー。あ、だったら、メイソンとクリストファーは誰の子なんだ? おい、ミランダ。お前、私を裏切っていたのかぁ? お前の為にマーガレットと結婚し、お前の為に横領までして贅沢な思いを散々させてやった私を、よくも・・・・・・よくも・・・・・・相手は誰なんだ? 酷い話だ・・・・・・酷い女だ」

 ジェームズが子供のように泣きじゃくりながら、恨み言を呟いていた。

「酷いのは貴方も同じよ。それと、ミランダの相手はあそこいる全員よ」

 私はジェームズに、被告席にいる4人の男性を見るように言った。ジェームズは、驚きに顔の表情が固まったがまだ信じられない様子でいた。



*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*


録画の浮気シーンの濡れ場が、次々と映し出され,誰もが驚嘆の声をあげた。


 キンバリー・タタラン女伯爵は夫のベントレー様を毛虫でも見るような眼差しで睨み付け、

「この恥知らずな夫との離婚申し立てをこの場で申請しますわ! 厳重な処罰を希望します」

と、怒りに声を震わせた。


「待ってくれ! ほんの出来心なのだ。愛しているのはキンバリーだけだよ。心は妻に、下半身はたまに色っぽい女に向くこともある。そんなの男のさがじゃないか! 皆、男ならやっていることだ」

 傍聴席の紳士達はその言葉にヤジを飛ばした。

「「「お前と一緒にするな!」」」   「「「男にたいする冒涜だ!」」」


「「「撤回しろ!」」」


 ロンドン・ムッシュ女子爵はさらに憤っていた。

「このナサニエルに慰謝料を請求します! さらに離婚申し立ても! 子供には一切会わせないわ! 一生、強制労働でもさせて、私への慰謝料を払わせてください。あぁー、顔も見たくないわ! 汚らわしい! 性病にでもかかればいいのに」

 傍聴席の貴婦人方は賛同の声をあげて拍手する方までいた。ミランダの顔は怒りで顔が歪んでいる。何に対する怒りなのかはわからない。彼女は押し黙っていたから。

 

若い騎士達との場面では、特に非難が集まった。

「「「こんな若い騎士まで、毒牙にかけるなんて・・・・・・まるで娼婦じゃない!」」」

「「「希代の悪女よ! 恥知らず! 淫売!」」」

 その最後の言葉を放った5人の貴婦人をミランダは睨み付け、その女性達を上から下まで無遠慮に品定めするように見つめた。


「ふん! あんた達みたいに不細工な女にはわからないわぁ! もともと、モテない浮気する機会にも恵まれない冴えない女達じゃないの? 私は、こんなに美しいのよぉ? 私が言い寄れば断る男なんていないのよ? 私のように女神のような美貌に産まれた者にしかわからないのよっ! この美貌を維持するには若くて綺麗な男が絶対必要なんだからぁ! もともと、ブスなあんた達には永遠にわからないのよ! モテない女達がほざくんじゃないわよぉ!」

 ミランダは、その貴婦人達に怒鳴った。貴婦人達は、顔を青ざめさせている。さらに、ミランダは私に顔を向けながら言い募る。

「マーガレットにもわからないのでしょう? あんたも地味で男にモテないものねぇ?」

 私はその言葉に何も言えない。確かに、私はミランダのように美人ではない。美人の気持ちはわからない。

「下らない戯言を! 私の若い頃の映像を誰か持っておいで!」

 今まで静観していらした王妃様が、侍従に向かって声をあげた。録画装置などは王家では貴族達に出回る前から使用されていたようだ。ほどなくして、映像が届き、スクリーンに映し出された女性はミランダの数百倍も美しい。

「これは、私の若い頃のものだ。おまえごときのレベルで女神だと? しかも、美しい女が全て不倫するかのような発言は全女性に対する冒涜だ! 私は、王子達を育て、国の為に働きお前のような悪行は一度もしたことはないぞ! この女に情けは無用だ。さぁ、判決をするとしよう! 私が直々に下す判決は、死刑だ!」

 「お待ちください!! 」 

その判決に異を唱えたのはカトレーネ・トマス前公爵夫人だった。
   
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