（本編）カトレーネ・トマス前々公爵夫人の事件簿

オレン子爵の謝罪（カトレーネ・トマス前公爵夫人）

　可哀想に、マーガレットは泣いてしまった。ジェームズは酷い夫だったようだ。子供ができないことを責めるようなことを言うなどもってのほかだ。ミランダと浮気しておきながら、厚かましい男だ。この男は特にきつく罰してやりたい。

　ミランダの弟のオレン子爵は、もう弁解の言葉も口にしない。

「これでも、ミランダが男達に脅されて仕方なくと言い張るつもりですか？」

　私が尋ねるとオレン子爵の妻が土下座をしてきた。

「申し訳ありませんでした。私達はここまでとは思わなかったのです。ミランダとは縁を切ります。もうオレン子爵家の人間ではありません！　そうですね？　貴方？」

　オレン子爵の妻のケイリーは有無を言わさぬ眼差しで夫を睨み付けている。

「この前いらっしゃった時にお金のことをおっしゃっていましたな？」

　私の顧問弁護士が尋ねるとケイリーが慌てて否定した。

「あれは、忘れてください。前回、私どもが申し上げたことは全て取り消します。ですので、どうか、オレン子爵家へのお咎めはなしに･･････お願いいたします」

「いいでしょう。私も、弱い者いじめがしたいわけではありませんからね！　それに、これから関係者全員を集めて断罪しなければなりませんからね。これだけ貴族が関わっているとすれば、王家も呼んで正式な裁判のほうがいいかもしれません。さて、明日は屋敷に戻ってミランダの顔でも見るとしましょう」