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裏切り者達のスイートな一日を録画録音してみた私

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 お昼に差し掛かる少し前の日差しは、かなりきつく暑さで汗ばむ。夫を尾行しているというこの行為自体も私を緊張させているので、余計に汗が出るのだろう。

 夫は、高級な店構えのレストランの前に降り立ち、その店のなかに消えていく。私も、その後を追い入店する。天井にはシャンデリアが輝き、大理石の床には毛足の長い絨毯がアクセントになるよう、ところどころに敷かれていた。優雅なデザインのテーブルと椅子はマホガニーの猫足で、かなり値がはるものに違いない。

 私は、テーブルに案内されメニューを渡されて、一瞬、固まった。メニューに並ぶ料理の値段は、普段私がジェームズと行くレストランの値段の10倍だったからだ。このお金はジェームズが払える額とは思えない。私は、サラダとドリンクだけを頼んだ。

「いや、ダイエット中なものでね」

 少し低めの声で言えば、ウェイターも愛想良くうなずき、下がっていく。

「あぁーー、ごめんねぇーー。待ったぁーー?」

 聞き慣れたミランダの声に目をやると、薄手の体にぴったりとフィットしたワンピースを着ていた。胸の豊かな膨らみと、腰の細さが際立っていた。

 メディチ家に子供達を預けに来たときとは、まるで違うなまめかしい服装に嫌悪感と苛立ちがつのった。

「全然だよ。あぁーー、ミランダ! 今日の君も素晴らしく綺麗だ」

「うふ。ありがとう! ジェームズも素敵よ。私達は最高に美しいカップルよねぇ。覚えてる?五歳のころかしら?『お嫁さんになって』って、言ってくれたでしょう?」

「あぁ、懐かしいな。あの頃から、私はミランダに夢中だよ。振られた時は悲しかったけれどね」

「あら、振ったんじゃないのよ。私は、ほら、玉の輿に乗りたかったからぁ。私にはお金持ちの夫が必要なのよ。でも、愛してるのは貴方だけなのよぉ。わかるでしょ? 私達の愛は?」

「真実の愛さ」

「そう、真実の愛よ。うふふ♥」

「あはは。その通りだね」

 私とあいつらは、幼なじみだった。5歳の時からの真実の愛ですか・・・・・・そこに意図的に私を巻き込んだって話ですかねぇ。

「マーガレットに悪いわね。また、子供を預けちゃった」

「あぁ、あいつはその為に家にいるんだ。いつでも、預からせるさ。子供のお守りができたって、いつも喜んでいるのだから。マーガレットにはなんの趣味もないからな」

「うふふ。じゃぁ、私達ってとてもマーガレットに良いことをしてあげているのね?」

「もちろんさ。ミランダを毎日、拝めさせよう!私の女神様。君は私とマーガレットが全力で支えるよ。子育てで、ストレスが溜まったのだろう?今日は夜まで一緒にいよう」

 私は、この会話を残らず、男物の鞄に入れた記憶録音装置に録音した。最近、この世界で発売されたそれは、とても高価なものだった。私などが購入できるものではないが、ミランダの夫のベンジャミン・トマス公爵にお借りしたものだ。

 もちろん、このような浮気調査に使うなどとは一切、申し上げてはいない。私は新しい趣味を始めたので、録画録音して、それを皆様に披露したいと申し上げたのだ。

 ベンジャミン様は『楽器演奏なら目の前で奏でてくれると母上も喜ぶ』とおっしゃってくださったが、どうしても練習風景をお見せしたいと申しあげたら喜んで貸してくださった。


 披露する日は、ベンジャミン様のお母様の誕生日会が盛大に開かれる一ヶ月後だ。ベンジャミン様のお母様のカトレーネ・トマス公爵夫人は、今でも社交界に大きな影響力をもつ政財界の重鎮の一人だった。

 曲がったことが、大嫌いな清廉潔白な大貴族のゴッドマザーことカトレーネ・トマス公爵夫人。これが、私の切り札だ。

 それまでに、証拠をたくさん集めてぐうの音もでないようにしなくては・・・・・・・


「あーー、美味しかった。ところで、ここのお店のお料理はとても高いのねぇ?私、今日もお財布は持ってきていないわよ?」

「あぁ、大丈夫だ。私はこの町の整備課で、視察だけしているわけじゃないよ。経理も任されているからね。ちょっと拝借したさ。なぁに、少しぐらいはばれたりしないさ。みんな、やっていることだしね」

 夫のその言葉には、呆れるしかなかった。勤務中の浮気相手との馬鹿高い飲食代を横領したお金で支払うのか・・・・・・クズすぎて・・・・・・






 町中で堂々とデートし、湖でボートを浮かべてキスし合い、夕方になれば、高級食材の店に入り、ワインやつまみを仲良く手をつないでお買い物。

「おぉ、べっぴんな奥さんだねぇ」
 
 店の者に言われてジェームズは得意気に頷き、ミランダは頬を染めていた。さて、さて、お次は・・・・・・?

 行き着く先は、高級ホテルか・・・・・・お約束ですよね?この展開・・・・・・

 この町中でも一番のホテルに入る二人を追いかけ、同じ部屋に入るまで記憶録音装置を回しっぱなしにした。私は鞄に目立たないような穴を開け、そこから記憶録音装置を覗かせていたのだ。

 二人とも、心から愛し合っているのだろう、これが真実の愛なのね?さっきから、私が変装をした金髪男がうろうろしているのにも、まるで気がつかないのだった。

 






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