(完結)イケメン妖狐様は聖女様を溺愛するー運命の番、この女のためなら命も惜しくない

青空一夏

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番の幸せ(リン視点)ー罠だろうと俺は行く

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俺のジョセリンが王子を好きだと聞いて、俺は番との幸せな生活が幻になったことを悟った。彼女には昔の記憶がない。一世紀も待っていても、相手が俺を好きでなければ意味がなかったな、自嘲気味に笑う俺の声はひび割れてかすれていた。

ジョセリンが笑顔を向ける相手は俺じゃない。これからの人生は、あの王子と過ごすのだろう。俺は、夜になるとあの身体を変化させて、もとの妖狐の姿に戻る。やっぱり、この姿が一番、落ち着くんだ。そして、空を飛翔する。


俺の心は複雑だ。悔しいのか、悲しいのか、よくわからない。情けないのと腹立たしい気持ちもある。この複雑に入り交じった気持ちをどこにぶつけたらいいのか‥‥


夜中に、王宮に忍び込み、何度も王子を殺そうとした。けれど、ジョセリンが悲しむと思えば、それもできなかった。ただ、夜中に空を飛翔し強大になりすぎた力を天に向かって放出した。花火のように、天空ではじける妖力は無駄になった俺の思いが砕け散っているようだ。

「ジョセリンが幸せなら、それでいいよ」
ずっと、近くで彼女の幸せな一生を見たら、その後はどうするか。永遠に近い命、一人ぼっちだな。


ジョセリンが王子と婚約した日は、さすがにきつかった。気が狂いそうだったけれど、愛してるお前が幸せになればいいよ。そう思った。

王子の婚約者になったジョセリンは王宮に王子と住むという。まだ、結婚もしていないのに‥‥でも、それももう俺が気にすることじゃないのかもしれない。

けれど、ここ数日、番の気配が王宮でない場所から感じる、場所は神殿?なぜだ?確かめに行かなければいけない。





神殿を空から見下ろす。見張りは10人。屈強な男達だが、俺にはどうってことない。

「なぁ、聖女様、外にも出さないでいいのかい?朝からなにも食べていないぜ。ここで、死なれたら俺らのせいにならないか?」

宮殿を護衛している者が愚痴るのが聞こえてくる。監禁されているのか?ここに?怒りを、押し込みながら地上に降りると、ジェネシスの姿に戻った。

「「「「誰だ?ここは、立ち入り禁止だ!!」」」」」

見張りの騎士達が俺に剣を向けた。

「無礼だな。私は王子の従兄弟のジェネシス・デュランだ。デュラン侯爵の一人息子だ」

「こ、これは失礼しました。ですが、王子から『誰も通してはならぬ』と仰せつかっておりまして」

「そうか?ならば、力づくで通るまでだ。命が惜しくば引け」

俺は剣を構える。無用な殺生は避けたいが仕方があるまい。邪魔をする騎士達をかたづけてしまうと、神殿の重い扉を開く。ジョセリンは暗闇のなかで震えていた。

「ジェネシス!!来てくれたの?」

「あぁ、もちろんだ」

「私、私ね、王子がここにいなくちゃいけないって‥‥うっ、うっ、うっ、」

「帰ろう。君はこんなところにいなくてもいい」

俺はジョセリンを宮殿から連れ出そうと抱き上げた。

「それは、困るなぁー。ジェネシス!いや、お前はジェネシスじゃないな?ジェネシスのふりをした化け物か?」

神殿の奥から黒いマントをまとった女を3人従えて、王子が現れた。


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