8 / 10
番の幸せ(リン視点)ー罠だろうと俺は行く
しおりを挟む
俺のジョセリンが王子を好きだと聞いて、俺は番との幸せな生活が幻になったことを悟った。彼女には昔の記憶がない。一世紀も待っていても、相手が俺を好きでなければ意味がなかったな、自嘲気味に笑う俺の声はひび割れてかすれていた。
ジョセリンが笑顔を向ける相手は俺じゃない。これからの人生は、あの王子と過ごすのだろう。俺は、夜になるとあの身体を変化させて、もとの妖狐の姿に戻る。やっぱり、この姿が一番、落ち着くんだ。そして、空を飛翔する。
俺の心は複雑だ。悔しいのか、悲しいのか、よくわからない。情けないのと腹立たしい気持ちもある。この複雑に入り交じった気持ちをどこにぶつけたらいいのか‥‥
夜中に、王宮に忍び込み、何度も王子を殺そうとした。けれど、ジョセリンが悲しむと思えば、それもできなかった。ただ、夜中に空を飛翔し強大になりすぎた力を天に向かって放出した。花火のように、天空ではじける妖力は無駄になった俺の思いが砕け散っているようだ。
「ジョセリンが幸せなら、それでいいよ」
ずっと、近くで彼女の幸せな一生を見たら、その後はどうするか。永遠に近い命、一人ぼっちだな。
ジョセリンが王子と婚約した日は、さすがにきつかった。気が狂いそうだったけれど、愛してるお前が幸せになればいいよ。そう思った。
王子の婚約者になったジョセリンは王宮に王子と住むという。まだ、結婚もしていないのに‥‥でも、それももう俺が気にすることじゃないのかもしれない。
けれど、ここ数日、番の気配が王宮でない場所から感じる、場所は神殿?なぜだ?確かめに行かなければいけない。
☆
神殿を空から見下ろす。見張りは10人。屈強な男達だが、俺にはどうってことない。
「なぁ、聖女様、外にも出さないでいいのかい?朝からなにも食べていないぜ。ここで、死なれたら俺らのせいにならないか?」
宮殿を護衛している者が愚痴るのが聞こえてくる。監禁されているのか?ここに?怒りを、押し込みながら地上に降りると、ジェネシスの姿に戻った。
「「「「誰だ?ここは、立ち入り禁止だ!!」」」」」
見張りの騎士達が俺に剣を向けた。
「無礼だな。私は王子の従兄弟のジェネシス・デュランだ。デュラン侯爵の一人息子だ」
「こ、これは失礼しました。ですが、王子から『誰も通してはならぬ』と仰せつかっておりまして」
「そうか?ならば、力づくで通るまでだ。命が惜しくば引け」
俺は剣を構える。無用な殺生は避けたいが仕方があるまい。邪魔をする騎士達をかたづけてしまうと、神殿の重い扉を開く。ジョセリンは暗闇のなかで震えていた。
「ジェネシス!!来てくれたの?」
「あぁ、もちろんだ」
「私、私ね、王子がここにいなくちゃいけないって‥‥うっ、うっ、うっ、」
「帰ろう。君はこんなところにいなくてもいい」
俺はジョセリンを宮殿から連れ出そうと抱き上げた。
「それは、困るなぁー。ジェネシス!いや、お前はジェネシスじゃないな?ジェネシスのふりをした化け物か?」
神殿の奥から黒いマントをまとった女を3人従えて、王子が現れた。
ジョセリンが笑顔を向ける相手は俺じゃない。これからの人生は、あの王子と過ごすのだろう。俺は、夜になるとあの身体を変化させて、もとの妖狐の姿に戻る。やっぱり、この姿が一番、落ち着くんだ。そして、空を飛翔する。
俺の心は複雑だ。悔しいのか、悲しいのか、よくわからない。情けないのと腹立たしい気持ちもある。この複雑に入り交じった気持ちをどこにぶつけたらいいのか‥‥
夜中に、王宮に忍び込み、何度も王子を殺そうとした。けれど、ジョセリンが悲しむと思えば、それもできなかった。ただ、夜中に空を飛翔し強大になりすぎた力を天に向かって放出した。花火のように、天空ではじける妖力は無駄になった俺の思いが砕け散っているようだ。
「ジョセリンが幸せなら、それでいいよ」
ずっと、近くで彼女の幸せな一生を見たら、その後はどうするか。永遠に近い命、一人ぼっちだな。
ジョセリンが王子と婚約した日は、さすがにきつかった。気が狂いそうだったけれど、愛してるお前が幸せになればいいよ。そう思った。
王子の婚約者になったジョセリンは王宮に王子と住むという。まだ、結婚もしていないのに‥‥でも、それももう俺が気にすることじゃないのかもしれない。
けれど、ここ数日、番の気配が王宮でない場所から感じる、場所は神殿?なぜだ?確かめに行かなければいけない。
☆
神殿を空から見下ろす。見張りは10人。屈強な男達だが、俺にはどうってことない。
「なぁ、聖女様、外にも出さないでいいのかい?朝からなにも食べていないぜ。ここで、死なれたら俺らのせいにならないか?」
宮殿を護衛している者が愚痴るのが聞こえてくる。監禁されているのか?ここに?怒りを、押し込みながら地上に降りると、ジェネシスの姿に戻った。
「「「「誰だ?ここは、立ち入り禁止だ!!」」」」」
見張りの騎士達が俺に剣を向けた。
「無礼だな。私は王子の従兄弟のジェネシス・デュランだ。デュラン侯爵の一人息子だ」
「こ、これは失礼しました。ですが、王子から『誰も通してはならぬ』と仰せつかっておりまして」
「そうか?ならば、力づくで通るまでだ。命が惜しくば引け」
俺は剣を構える。無用な殺生は避けたいが仕方があるまい。邪魔をする騎士達をかたづけてしまうと、神殿の重い扉を開く。ジョセリンは暗闇のなかで震えていた。
「ジェネシス!!来てくれたの?」
「あぁ、もちろんだ」
「私、私ね、王子がここにいなくちゃいけないって‥‥うっ、うっ、うっ、」
「帰ろう。君はこんなところにいなくてもいい」
俺はジョセリンを宮殿から連れ出そうと抱き上げた。
「それは、困るなぁー。ジェネシス!いや、お前はジェネシスじゃないな?ジェネシスのふりをした化け物か?」
神殿の奥から黒いマントをまとった女を3人従えて、王子が現れた。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる