(完結)イケメン妖狐様は聖女様を溺愛するー運命の番、この女のためなら命も惜しくない

青空一夏

文字の大きさ
上 下
6 / 10

手続きに忙しい(リン視点)

しおりを挟む
俺はジョセリンから王都の学校に通うと聞いて、愕然とした。

ーー聖女様だって?あんなインチキ石に魔力測定などできるはずがない。俺の番からは魔力のようなものはなにも感じなかった。そもそも、あの鑑定人からして胡散臭い奴だった。

俺は、ジョセリンと同じ学園に行くことを決意した。そう、学園に忍び込むには貴族の屋敷と高位貴族の爵位がいる。そのためには準備期間が必要だった。

俺は、ジョセリンの周りに保護の結界を張ると、彼女の前から姿を消した。






高位貴族を調査していくと、ちょうどいい貴族が見つかった。ルイ・デュラン侯爵の一人息子が病に冒されて息を引き取ろうとしていた。このままいけば、間違いなくこの息子は死ぬ。

一人息子の名前はジェネシス・デュラン。ちょうどジョセリンと同じ歳だ。俺はこの少年の枕元に立っている。ブラウンの髪と瞳、肌の色は病弱で外に出たことがないのだろう。透き通るように白い。軟弱な身体だが、しかたあるまい。少年が当主や母親に見守られて息を引き取ったその瞬間に俺はその身体に潜り込んだ。

この少年と同化するために、半日は必要だ。ジェネシスと俺の身体の融和はゆっくりとおこなわれた。数時間後、一度死にかけて眼をあけた俺を当主と母親は歓喜して涙を流した。

「「「「奇跡だ(わ!)!あぁ、神様、感謝します」」」」」

俺は、弱々しく微笑んだ。母親のデュラン侯爵夫人は俺を抱きしめて泣いていた。





乗り移ったこの身体は俺の九つある命の一つを使って同化するように仕向けた。ジョセリンは人間だから、彼女と同じものになりたかった。もちろん、あやかしの力は残ったままだ。

鏡を見ると、ブラウンの髪と瞳の青白い少年が映っていた。少し、鍛えなければいけないな、そんなことを考えていた。

こうして、俺は、王家の血を引くルイ・デュラン侯爵の一人息子のジェネシス・デュランになったのだった。

デュラン侯爵夫人が部屋に入ってきて俺に聞いてきた。

「なにか、欲しいものはある?してほしいことはあるかしら?」
母親らしい優しい口調で愛おしそうに俺を見つめる。

「母上。私は学園に通いたいです」

俺は驚くデュラン夫人に、にっこり笑いかけながら言ったのだった。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

籠の鳥

桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
恋愛
幼い頃、とても美しい生き物に出会った。お父様のお気に入りで、でも決して懐くことはない孤高の生き物。お父様に内緒でいつも隠れて遠いところから見つめるだけだったけど、日に日に弱っていく姿を見て、逃がしてあげることにした。 籠の鳥は逃げて晴れて自由の身。 では、今籠の中には誰がいるのだろう? 2019年1月21日に完結いたしました!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...