(完結)イケメン妖狐様は聖女様を溺愛するー運命の番、この女のためなら命も惜しくない

青空一夏

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キュンキュン鳴く子犬になってみた

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アビゲイル辺境伯爵家に産声が響いた。

「おめでとうございます!女の子が誕生しました」

辺境伯家は喜びの空気に包まれた。男ばかりが誕生していたからこの度の女の子の誕生にみな浮き足だっている。

「奥様、見てください。とても美人な子です。綺麗な黒髪に肌もキメ細かくて‥‥」

「この子はジョセリンと名付けよう」
辺境伯の当主は嬉しげに顔をほころばせている。

アビゲイル辺境伯家の喜びの声が、番の息づかいとともに俺の耳にダイレクトに響いてきた。

その瞬間、俺は番の生まれ変わりが誕生したことを悟った。やっとだ!この瞬間に世界の全てが色づいて見えた。

俺は喜び勇んで飛翔した。アビゲイル辺境伯へと。幸い、辺境伯の屋敷の周りは森に囲まれていたから俺はそこに住み着いた。いや、住み着こうと思った。けれど、以前のあやまちを思い出す。常に側にいなかったから番は殺されたんだ!一緒にいて守ってやれなければ意味はない。

妖狐だから、魔法も妖術も使いこなせる。まずは、そこの森一帯に結界を引く。不審な者が少しでも近づけば俺は許さないよ。

そして、俺は、もふもふの銀色の毛をもつ子犬に化けた。妖狐が子犬なんて不本意ではあったけれど、少しずつ成長しないと怪しまれる。
 
屋敷を、キュンキュンと泣きながらよちよち歩くと、ジョセリンの母親がジョセリンを抱いて庭園で散歩をしていた。

さらに、キュンキュンと泣いてみせる。ジョセリンの母親が俺を見てにっこりした。

「まぁーーーかわいい!ジョセリンのお友達にしましょう。名前はそうねぇーー」

リンだ。俺の名前はリン。俺は念をおくる。

「あぁ、ちょうどいい名前が浮かんだわ!あなたの名前はリンよ!!」

そう、番がつけてくれた名前だ。絶対にこの名前はすてられない!!

「さぁ、リン!ジョセリンといつも一緒にいて、この子を守ってあげてね」

ジョセリンの母親がそう言って俺を撫でた。うん、こういうのもいいな。俺は妖狐のくせに愛らしい子犬になってアビゲイル家の子犬になった。でも、これで、ジョセリンの側にいられるんだ!キュンキュン鳴きなんてお安いご用だ。
 

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