1 / 10
プロローグー美貌の妖狐は今日も山賊を切り裂く
しおりを挟む
白く透き通った艶めかしいまでに美しい顔をした若い男が、雪のなかで衣を紅に染めながらたたずんでいる。
手の爪は異様に長く鋭利で、ぬらぬらした血がしたたる。傍らには、切り裂かれた山賊達の亡骸。さらわれた娘達は無事だ。
「ここで見たことを話してはいけない。あの道をまっすぐ行けば村に出られる。二度とこの森には近づくな」
さらわれてきた娘は3人で、みな若く器量の良い娘だった。娘達は、その若い男に見とれてその場を動こうとしないが妖狐は娘達には全く興味がなかった。素早くその場を立ち去ると、羽もないのに空を飛翔していく。
雪のなかを、長い銀髪を煌めかせながら空を飛ぶリンの心にはいつも一人の娘がいた。
艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、大きな潤んだ瞳の陶器のように白くすべすべな肌をもつ娘。
(彼女は俺の番。唯一無二の存在‥‥あいつのためなら妖狐にでも鬼でもなんにでもなってやる。今度こそは守る‥‥あの無垢な美しい魂を)
リンはただ、ひたすら待っていた番の生まれ変わりを。あれから一世紀ほど経っただろうか‥‥まだ、彼女の気配は感じない‥‥いくらでもお前を待つよ‥‥俺は妖狐だ。時間は永遠にある‥‥
リンは山の奥深く、誰も立ち入ることなどできない古城に一人だけで住んでいる。ただ一人の番が、生まれ変わるのを待って‥‥
人々は噂する。森には研ぎ澄まされた強靱な身体と、ぞっとするほど美しい顔をもつ男が住んでいる。森を守るあやかし。それは妖狐。よこしまな輩を引き裂き善人には手を出さない守り神がいると‥‥
手の爪は異様に長く鋭利で、ぬらぬらした血がしたたる。傍らには、切り裂かれた山賊達の亡骸。さらわれた娘達は無事だ。
「ここで見たことを話してはいけない。あの道をまっすぐ行けば村に出られる。二度とこの森には近づくな」
さらわれてきた娘は3人で、みな若く器量の良い娘だった。娘達は、その若い男に見とれてその場を動こうとしないが妖狐は娘達には全く興味がなかった。素早くその場を立ち去ると、羽もないのに空を飛翔していく。
雪のなかを、長い銀髪を煌めかせながら空を飛ぶリンの心にはいつも一人の娘がいた。
艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、大きな潤んだ瞳の陶器のように白くすべすべな肌をもつ娘。
(彼女は俺の番。唯一無二の存在‥‥あいつのためなら妖狐にでも鬼でもなんにでもなってやる。今度こそは守る‥‥あの無垢な美しい魂を)
リンはただ、ひたすら待っていた番の生まれ変わりを。あれから一世紀ほど経っただろうか‥‥まだ、彼女の気配は感じない‥‥いくらでもお前を待つよ‥‥俺は妖狐だ。時間は永遠にある‥‥
リンは山の奥深く、誰も立ち入ることなどできない古城に一人だけで住んでいる。ただ一人の番が、生まれ変わるのを待って‥‥
人々は噂する。森には研ぎ澄まされた強靱な身体と、ぞっとするほど美しい顔をもつ男が住んでいる。森を守るあやかし。それは妖狐。よこしまな輩を引き裂き善人には手を出さない守り神がいると‥‥
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる