(完結)夫に浮気されたのは嫁の私が至らないせいだそうです

青空一夏

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8 パトリシア、ジェンナにちょっぴり意趣返し 

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「なんでそんな女に、ドレスやバックを買ってあげるのよっ! あなたは私の夫なのよ? この私にこそ、プレゼントするべきだわ」

「いや、これはショーンの為さ。だって、この方は王妃様のお気に入りなんだから。イボンヌさん、是非王妃殿下にショーンの出世話を持ちかけてくれんかね? ジェンナからも頼みなさい! 息子の将来がかかっているんだぞ」

「えっと、そうですねぇ。私もお力になりたいですけれど、王妃殿下は実力主義で贔屓はなさらない方なので、私が申し上げたところでご期待に添えるかはわかりませんわ」

「そう、なんだかはぐらかすのがお上手ね! ところで、そんなことよりあなた達んじゃないの? おかしいでしょう? こんなものを買ってあげるなんて・・・・・・がなければ・・・・・・。ねぇ? パトリシアもそう思うでしょう?」

「さぁ、ただだとしても、それがどうしたというのですか? 夫が浮気するのは妻が至らないせいだからですよ。反省なさってくださいな」

「なっ・・・・・・何を言うのよ、パトリシア! 生意気な! そんな理屈あるわけないでしょう」

「あら、お義母様がおっしゃったんですよ? お忘れですか? イボンヌ、時間に遅れてしまうわ。観劇に行きましょう!」

「えぇ。パトリシアお姉様。お姉様って案外、話がわかるいい人だわねぇーー。これから仲良くできそうよ」

「ちょっと待って! 私達の夕食はどうするのよ?」

「ご自分で作ってください。 イボンヌに教わってもうコツは掴めましたよね? 帰りに魚を買ってきてさしあげました。はい、どうぞ!」

 私は先日よりもさばきにくい、大きな魚をジェンナ様に手渡す。

「また魚なのぉーー? ちょっと待ちなさいよ! ちょっと!」

 不満の声をあげるジェンナ様を無視して、私達は劇場へと向かった。





 その日観た劇は『真実の愛は永遠』という題目で、愛し合う二人がいくつもの障害を乗り越えて愛を貫く、というような内容だった。

「ロマンチックねぇ。こんな恋愛憧れちゃう。障害があればあるほど燃える愛なんてわかるわぁーー。恋もインスピレーションが大事だし」

「はぁ、インスピレーションね」

「そう、私、ショーン様にビビビッとインスピレーションを感じたわ! だから彼を私にちょうだい。私ならあの障害(ギガンテッド元男爵夫妻)とうまくやっていけると思うわ」

「そんなことできるわけないでしょう? ショーンはモノじゃないのよ?」

 イボンヌがぷっと膨れる。彼女は容易に手に入らない人のモノが大好き。


「だったら力尽くで奪ってあげるわ!」

 『ふっ』と鼻で笑うと、私を横目で見ながら宣戦布告してくる。

「まぁ、そんな怖いことを言わないでちょうだい。ショーンは私が心から愛する夫なのよ」

 私は悲しく見えるように眉尻を下げて、涙を・・・・・・ダメだわ、涙をひねり出そうにも一向に出てこない。

 仕方がないので俯いて、暗い顔をしてため息をついておく。

 イボンヌは私のその様子を見て、ますます嬉しそうに笑みを深めた。

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