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9 掘り出し物を見つけた(カイド視点)

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 ※訂正のおしらせ

 ザヘリー公爵夫人の甥が跡継ぎになる、ということだとおかしい話になるので、女侯爵に設定変更します。カイドの母親の姉がザヘリー女公爵だったら大丈夫かな。これは昔の話のリメイク版なのですが、設定がおかしかったですよね?

 嫁に来た伯母の血筋が跡継ぎになるって変だった💦すみません。あと、たまにアイビーをアビーに間違えているかもしれません。🙇‍♀️🙇‍♀️🙇‍♀️ごめんなさい。


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 私は女性を好きという気持ちになったことがない。一方的に好きになられて交際を申し込まれるので、それに応じて付き合っているが、こちらから誘ったことは一度もないのだ。

 恋人1のキャサリンは付き合って2年だが、たまにしか会わなくなった。きっかけはこんなやり取りからだった。

「なぜ、他に女性がいるのですか? 私だけと付き合うべきでしょう? カイド様だって、私が他の男性とお付き合いしていたら嫌ですよね?」

 そう言われても、キャサリンを独占したい気持ちがない私は『うん』とは言えない。

「いや、君が付き合いたいのなら私は別段構わない」

「私のことを好きですよね? 私はカイド様に恋焦がれ、夜も眠れないほどなのですよ!」

「うん、嫌いではない(が、好きでもない)」

「・・・・・・なんて、酷い男なの! 血も涙もないですわぁあああーー」

 泣き叫ばれて、人でなし呼ばわりだ。

 もちろん()の部分は心のなかの声だが、そもそも交際を申し込んできたのはあちらで、その際に私は自分の気持ちをはっきりと伝えたつもりだ。

 そう、キャサリンとの交際の出だしはこんな感じだった。

「好きな女性はいらっしゃるのですか? いないなら、私と付き合っていただけませんか?」

 積極的に迫ってきたキャサリンは、特に今まで意識したこともない相手だった。

「特に好きな女性はいないが、デートをする女性ならいるよ」

「それならばお付き合いしましょう! 私を好きにさせてみせますわ」

 その結果、キャサリンを好きという感情は未だ湧かないが、嫌いにもならないので惰性で付き合っていた。酷いだの遊び人と言われて泣かれるのには困った。

 そんなに私が悪いのか?・・・・・・

『付き合ってください』と言ってくる女性に、嫌だなどとは言えない。きっと、勇気を出して言ってくれたはずだし拒絶するのも可哀想だ。そんなわけで、つい受け入れていたら5人になってしまった。侍従のアーマドからは『そのうち刺されますよ』とあきれ顔で言われた。

 女性の気持ちをもてあそんでいる気は毛頭なくて、むしろ私がもてあそばれているような気分なんだ。だいたい恋とか愛とかよくわからないし面倒だと思う。

 妻にするなら、冷静で浮ついていない女性が良い。恋なんて、あやふやな疲れる感情だと思うよ。そのせいで振り回されるのはごめんだし、自分もそんな深みにはまりたくはない。そう思い始めた矢先に伯母上のザヘリー女公爵から養子の話が出た。

「ザヘリー公爵家には跡継ぎがいないのでカイドを養子に迎えようと思っています。堅実なしっかりしたお嬢さんと結婚するという条件付きです。もちろん一緒にザヘリー公爵家の屋敷に同居することも条件ですよ」

 伯母上は微笑みながら私に提案してくださった。私は次男なのでギャビン伯爵家は継げない。この申し出はとてもありがたく、決して逃してはいけないチャンスだった。
 だからこそ、堅実でしっかりした地味めな女性を探していた。アーマドに聞いたら、思い当たる女性がいるが問題外です、と言った。


 エルナン男爵夫妻が破産についての相談を役所の窓口でしていたらしい。それを、アーマドの母親が見たということだった。

「大変なことになっているようです。娘さんのアビー嬢は家庭教師をして両親を助けているという噂で、堅実でとてもしっかりしているそうです。しかし、カイド様のお相手にはいくらなんでも身分も低すぎですし、容姿もボンキュッボンとはほど遠いようです」

 アーマドはウワサスーキ男爵家の三男で、その母親は他の男爵家の事情にとても詳しかった。早速アーマドにエルナン男爵家に訪問したいことを伝えさせた。ところが、会ってみたら想像以上に貧弱すぎる身体の女性だった。

 味のしない紅茶なんて初めて飲んだぞ。

 お金に困っているのなら、お金で雇えば良いと思い妻になる契約を持ちかけた。案の定、アイビーはお金に反応したが、あそこまであからさまに時給の話をする貴族の令嬢は見たことがない。

 めがねを出して書類を念入りに確認すると、私がつくった『嫁の心得』を読んであっさりと快諾した。報酬の確認も忘れないし、改めてそれを書類に追記させ控えもほしいと要求してきた。

 しっかり者を絵に描いたような女性だ!
 冷静で気持ちが良いくらいにサッパリしている。
 まさに理想的だよ。
 
 契約が済んでテントはもう必要なくなったとつぶやいたアイビーに、私はなんの為のテントかを聞いてみたら野宿用のテントだと真顔で答えた。

 こんな男爵令嬢がこの世にいるなんて信じられない! テントで路上生活を企てていたなんて笑ってしまったよ!
 これは退屈しない結婚生活になりそうだと少しだけ楽しい気分になった。
 
 それにしてもあれほど冴えなかったアイビーも、新しいドレスを着て髪型を整えればそれなりに見えた。契約妻なら私の言いなりだし、うるさく文句も言われまい。

 良い買い物ができたぞ!!

 
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