(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏

文字の大きさ
上 下
32 / 34

バイオレット女王様 ご懐妊(バイオレット視点)

しおりを挟む
 私は王宮の裏の雄鶏の鳴き声で一度、目が覚める。そうして隣に寝ているノーラン様に頭を撫でられる。

「バイオレット。まだ、寝ていなさい。いい子だから。さぁ、おいで」

 ノーラン様がよく引き締まって逞しい腕を広げて、心地の良い声で誘う。私は、ノーラン様の腕のなかにパフンと身を預けた。ノーラン様は上機嫌で私の頬にキスをして、ぴったり体を寄り添わせて二人でまどろむ。

 寝室の窓から差し込む優しい朝の日差しは、柔らかで私の幸せな気分をさらに高めてくれた。いつも、激しく愛しあうけれど、その後におとずれる今のような優しく暖かい時間が私はとても好きだ。

 確かに愛されていると感じられるのは、こんなまどろみのなかでも、私の髪を優しく撫でてくれること。私を気遣い、甘やかすのが得意なノーラン様は、いつだって優しい。


 私は、ノーラン様の腕枕で寝て、食事は膝の上でする。最初は恥ずかしかったが、今では当たり前になってしまった。大好きなノーラン様の顔が近くにあることが嬉しいし、この腕や胸も愛おしくてたまらない。

 つい、ノーラン様の腕や胸を指で撫でると、ノーラン様が小さく笑う。

「我が妃は、昨夜のアレでは物足りなかったようだ」

「ち、違います。そんなことじゃなくて、ただ貴方の腕や胸が大好きなんです」

「はははは。光栄だな。私を気に入って貰えて良かった」

 ノーラン様の悪戯っぽい口調も全部好きだ。こんなにも、好きな方の妻になれて幸福だと思う。




*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*


 

 執務室は隣り合わせで、お互いが行き来できるように扉が設けられている。そこは、通常は開け放しで仕事をしている。ノーラン様が部下に向かって怒鳴っている様子も、笑っている声も全て手に取るようにわかる。

 ということは、私の様子もノーラン様にはまるわかりなわけだ。今日は2回ほど食事の後に吐いたのもバレていた。

「医者を呼べ! 早くしろ! なんでバイオレットはすぐ言わないんだ? なにかあってからでは遅いんだぞ!」


 バタバタと5人もの医師が順番に私を診察した。

「それで、私の大事な妃の病気はなんだ?」

「「「「「ご懐妊でございます」」」」」

 5人の医師が、一斉に見解を述べるとノーラン様は叫んだ。

「カルロス王国とブロンディ王国の星が産まれる! 今日は国民の祝日にしなければ! 父上に報告してくる」

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...